ウルトラ・スペシャル・マイティ・ストロング・スーパー密室の解決
私が探偵事務所に帰って来た時、時計の針は七時を指していた。
「完全な密室ですね」櫻葉はテレビの電源を入れ、呟いた。
「ウルトラ・スペシャル・マイティ・ストロング・スーパーよろい、と言うドラえもんのひみつ道具を知っているか?」私は言う。
「初めて聞きました」
「二十二世紀最強の鎧、ただし馬鹿には見えず、効果は無い、とドラえもんは説明をするんだが、実際はそんな道具は存在しない。ドラえもんは、のび太を騙し、ジャイアンと戦わせようとするんだな」
「それが、どうかしたんですか?」
「私達は、のび太の様に何か大切な物を見落としているんじゃないか?」
「真実さん」
「何だ」
「例えが、分かりづらいです」
それに関しては、本当に済まないと思っている。
ふと、テレビを見ると今日の夜の天気がテロップに流れていた。どうやら夜には、雨が降るらしい。
「じゃあ、私もそろそろ帰りますね」櫻葉が立ち上がった。
「待て」
「何ですか?」
「もう一度、犯行現場に行くぞ。今から犯人が来る」
「え?」櫻葉は、まだこの事件のトリックに気付いて無いようだ。
「さっき言っただろ、私達は、とても単純な物を見落としていたんだよ」全く、こんな簡単な事に気付かないなんて、私もまだまだのようだ。
犯行現場に戻って来た。私達が、そして犯人が。
雨が降っている。先程の天気予報のテロップ通りだ。
「犯人は、クロは貴方だったんですね。田中太郎さん」目の前には、傘とブルーシートを持った田中がいた。
「な、何のことですかいな」田中、お前どんなキャラだ。
「田中さん!貴方のやった事は、全部分かってるんですよ!」櫻葉がドヤ顔で、親指を田中に向ける。こいつ、これをずっとやりたかったんだな。可愛いヤツめ。
「いやぁ、全く気づきませんでしたよ。貴方の仕組んだ、この大胆なトリックに」私も親指を田中に向ける。「田中、犯人はお前だ」
そう言うと、田中は私達の方を向いた。
「何が気に食わん!私は、悪を成敗しただけだ!」田中が叫んだ。田中、お前どんなキャラだ。
「アイツは、私の彼女を殺した」田中は言った。何だって、そいつは初耳だ。
まぁ、初耳なのは当たり前だけど。
「アイツが」
「あ、もういいですよ」私は失笑した。
「え?」
「犯人の語りっていうのは、床屋の店員との会話位、どうでもいいんで」
「えぇー… ?」田中は困惑しているようだ。まぁ、どうでもいい。
「探偵さん。ところでそのトリックってなんなんですか?」櫻葉が田中に向けている親指を、私の方に移動させた。
「何だ、まだ分からないのか。犯行現場のこの家の上を見てみな」
櫻葉は、あ、と声を出し、言った。「屋根が無い…」
「そうです、扉にも鍵にも、全て鍵が掛かっていた。つまり犯人、田中は上から入ったんです。屋根が無いから、田中は簡単に家に侵入する事が出来た。そして、私達は、屋根がない事に気付かなかったんです」
「いつ、気づいたんだ」田中が私を睨む。怖い。
「テレビのテロップに、夜から雨だという予報が出た時、気づいたんです。」私は続ける「そして、雨で床が濡れている事が分かると、警察がこの家に屋根が無い事に気づいてしまう。だから貴方は、そのブルーシートで、雨を防ごうとしたんですよね?」私は田中の持っているブルーシートに親指を向けた。
「完敗だよ。でも、これと言うのもアイツが…
」田中が真相を告白しようとする。だが、
「興味無いです。櫻葉、早くから帰りたいから、警察に電話」
「はーい」
こうして、事件は解決した。田中が何故、須玖新怒男さんを殺したのかは、分からなかったが、まぁどうでもいい。




