ウルトラ・スペシャル・マイティ・ストロング・スーパー密室
「白と黒という警察用語があるじゃないか」私は黒のスカイラインGT-Rを運転しながら助手席に座っている、助手の櫻葉華奈子に話しかけた。
「そうなんですか?」櫻葉はそう言い、可愛らしい表情で私の方を向いた。
「なんだ知らないのか。シロが無実、潔白で、クロが犯人、という意味なんだが…」そう言ったところで私は刹那、櫻葉の方を向く。
「シロが潔白なら、クロは潔黒なのか?」
「どうでもいいですね…」
どうでもよかった。
そんな下らない会話をしてると、いつの間にか目的地にたどり着いていた。
目的地というのは、殺人現場である。しかし私達は、野次馬という訳ではない。
「よぉ、久しぶりだな。探偵」話しかけて来たのは、刑事の之葉罠拿だった。そう、彼の言う通り、私は探偵なのだ。
「久しぶりですね、之葉さん。六年ぶり位ですか?」
「いや、二、三週間ぶり位だな」
そうか。どうでもいいよ。と言いたくなったが、抑えた。
「久しぶりです。真実常一さん」長い黒髪をなびかせながら、女刑事の鳥間詩音さんは、私に話しかけて来た。
「十七日ぶりですね。詩音さん」私は、脳の引き出しから、瞬時に詩音さんに関する記憶を取り出し、口に出した。この時、之葉から覚えてんじゃねーか、と言うツッコミがあったがスルーした。
「で、今回はどんな事件があったんですか?」櫻葉が之葉に尋ねる。
「あぁ、それがな、とても不可思議な殺人事件が起きたんだよ。だからお前に来てもらったんだ、真実」名前を呼ばれた。詩音さんの胸を見ているところだったというのに。
「それで、不可思議というのは?」私は探偵モードに入る。
「被害者の名前は、須玖新怒男」
「直ぐ死にそうな名前だな」
「死亡時刻は昨日の十一時、ナイフで心臓を一突きだ」
「うぇ」櫻葉が声を出す。
「殺害現場は、この家のリビングだ」そう言い之葉は、目の前の家を指さした。こぢんまりしているが、住みやすそうな家だ。
「死体の発見者は、近所の住人、田中太朗さん」之葉は続ける。田中太郎とは、随分適当な名前だ。と思ったが口には出さなかった。
「田中太郎って、随分適当ななまえですね」変わりに櫻葉が代弁してくれたようだ。
「そして不可思議なのは、ここから何だよ!」之葉は声を荒らげた。
「実は、鍵が掛かっていたんです。この家の扉、窓全て。」詩音さんの、透き通るような声が響く。
「それって密室殺人って事ですか?」櫻葉が食いついたようだ。「何処かに、抜け穴か何か、無いんですか?」
「何処にも、何も無かったよ。」之葉が言う。どうやら捜査は、難航しているようだ。
私達は、取り敢えず家に入らせて貰った。玄関に靴を並べ、直ぐ前にある階段の横を通ると、そこはリビングだった。窓ガラスが一枚、割れている。警察が割り、そこから入ったのだろう。
「二階の窓にも、鍵は掛かってましたか?」私は詩音さんに尋ねた。
「全部、掛かってたよ。調べたに決まってるだろ。」質問に答えたのは之葉だった。違う。お前には聞いていない。
すると、カラスの鳴き声が聞こえた。もう夕方だ。
「しょうがない。今日は取り敢えず、私達は、帰ります。」私は、詩音さんに言った。
「そうか。明日も来てくれよ。」そう言ったのは之葉だった。違う。お前には言ってない。




