犬井彩夏vs御堂谷エル 2
会場のムードはさほど高くはない。むしろ犬井に哀れんでいるようにも感じられる。勝敗は決した。そんな感じだ。
「ハァ……ハァ」
犬井は完全に息が上がっている。フォース量も体力も多い方ではない。むしろ少ないといった方が的確だ。大技を一回繰り出すだけでバテるほどだ。犬井もそれを自覚しているはずだ。だが、犬井の目にはまだ光が残っている。まだ、諦めていない。
「そろそろ、僕も反撃と行こうかな。痛いけど我慢してね」
地面を蹴りだし、犬井の方へ駆け寄る。犬井は戸惑うように一歩引き、とどまる。そして御堂谷の拳が横腹に炸裂した。
「かはっ…」
軽いせいか犬井の体は10数メートル地面に擦りながら吹き飛ぶ。
「あぁ~。女の子を殴っちゃった。でも仕方ないよ、ね!」
立ち上がろうとする、犬井にもう一撃拳をかました。さっきと同じようにして犬井は殴り飛ばされる。それでも、体が震えてガクガクなのに犬井は起き上がる。
「へぇ。頑張るね。レベル1なのに。よく立ち上がれるね」
「へへ、ハァ……いつまでも馬鹿にされていられるほど…1組は…弱虫じゃないんだ…よん…」
「ふん。1組は馬鹿にされるのがお似合いだよ!」
ドガっ!
鈍い音が会場に響く。犬井の右頬に拳がぶつかる。だが、犬井はその拳に絶え、その場にとどまる。
堪えているせいか犬井の目からは涙が浮き上がる。それをみて御堂谷は一旦拳を引いた。
「ははっ。涙が出るほど痛かったの!?弱虫じゃん!うける~」
御堂谷は腹を抱えて、盛大に笑う。
「弱虫じゃない!1組は弱虫なんかじゃないんだよん!!!!」
犬井は御堂谷の顔の前に手をつきだす。
「バニッシュメント・アポロ!」
不規則な回転で炎が放たれる。真正面からの攻撃で、御堂谷は一瞬避けるタイミングがずれ、直撃する。
その直撃した炎の周辺一体に火柱がたつ。
「1組は弱虫じゃないよん……だから絶対に諦めない!」
火柱が消えると、無傷の御堂谷が姿を表す。
「ふ~ん。じゃあ証明してよ、弱虫じゃないんでしょ?特別に僕が本気を出してあげるよ」
「ハァ……ハァ……。」
「僕の能力は、主能力は猛毒。知ってるよね?二度と戦えないように精神まで痛め付けてあげるよ」
「の…臨むところだよん…」
「まずは、とっておきから見せてあげよう」
ーポイズンテリトリーー
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「カカッ。あいつ、いきなり使いやがったな。ポイズンテリトリー。何?本気だすのか?」
「ああ。あの1組。何か気の障ることでも言ったみたいだな。」
「カカッ。違いない。もう勝負はついたな。おい、坂東、そろそろ準備しろよ」
凶司郎が話を振った男。坂東朱牙。長身で、平然として集中している。
「ああ、だが最後まで何が起こるか分からないのが戦いというもの。1組の者も気の毒だが、しかと見届けてやろう」
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「9組、やっと技を出して来たな。みる限り毒だな」
俺が言うと鷹が付け足す。
「そうだ。しかもいきなり全開モードみたいだ。ポイズンテリトリー。あれをやられて勝ったのは、神無月と如月、それに五十土さんしか見たことがないな。」
「マジか…」
「レベル8の人でもポイズンテリトリーをされるとあっけなく負けているほどだ。遂に絶望的だ…犬井じゃ到底叶わない」
「そうか…」
それでも、犬井ならやってくれると信じてる。練習も誰よりも多く励んできた。体力作りも必死に誰よりもやって来た。それなのに、報われないのは間違ってる。天才の前では凡人は霞んでしまう。それでも、誰よりも努力した人間なら、犬井になら天才という枠を一時的にでもいいから越えて勝てるはずなんだ。
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「いくよ?」
ー毒素流爆破ー
第15話 犬井彩夏vs御堂谷エル 2




