決意
「流星類無女神?」
「はい、そうです。」
それからカンナはいろいろなことを話してくれた。
世界は、上位存在が住む神界、それ以外が住む道界、神界と道界の何らかの影響で発生する創造界の三つがあること。
流星家は天翔家の分家で、千年くらい前に父親が神々の戯れ(ゴッドゲーム)を勝ち抜き上位神になったこと。
その後、父親と龍白の姉の龍桃が恋仲になり、カンナが生まれたこと。
カンナが生まれて間もない頃、道界にいる父親の神従者の子孫の家の近くで川の氾濫があり、掟を破り助けたこと。
上位神は力を使って道界や創造界に影響を及ぼすことはできるが、力の行使には制限があり、それを利己的な理由で超えたとみなされれば罰を与えられること。
カンナの父親の処遇をめぐって、各家の代表の上位神が集まり会議をした結果、カンナの父親は上位神から下位の神に降格させられ、流星家は没落してしまったこと。
カンナの両親は部下や使用人のフォローが終わると、天翔家に迷惑がかからないように、カンナを連れてひっそりと暮らしていたこと。
ある日、没落神の噂を嗅ぎつけた大量の神狩りの襲撃に遭い、両親が自分を守り行方不明になり、カンナはすんでのところで龍白に助けられたこと。
龍白が両親を探すも一向に手掛かりは見つからず、今日まで龍白含めた天翔家の人たちに助けられて生きてきたこと。
カンナは涙ぐみながら話してくれた。
特に、両親がいなくなったときの話は涙が止まらなくなっていて、辛いことは話さなくていいと伝えたものの、自分の覚悟を知ってほしいからと全て教えてくれた。
「両親を探すため、流星家を復興するため、支えてくれている人たちに恩を返すため、私は……。私は神々の戯れ(ゴッドゲーム)に勝ちたいのです。」
溜め込んでいたものを全て吐き出すように、カンナは涙を流していた。
こんなとき、気の利いた言葉がパッと浮かんでくればいいのだが、何も思いつかなかった。
何を言っても、粗末なものにしかならない気がしてしまった。
もちろん、十年以上続けた野球を軽んじているわけじゃない。
重い、あまりにもカンナの背負っているものが重すぎる。
でも、たとえお粗末だったとしても、うまく言葉にできなくてもこの気持ちは伝えるべきだと思った。
俺は泣いているカンナの前に行き、カンナの両肩を掴んだ。
「取り戻そう。失ったものが違いすぎて、言葉に重みがないかもしれないけど、一緒に大事なものを取り戻そう。」
カンナは俺の言葉を聞くと、泣きじゃくりながら抱きついてきた。
背中をポンポン叩いて落ち着かせる。
カンナの泣き声が落ち着き、俺から離れる。
「…大助、ありがとうございます。おかげで、心の中の不安が無くなりました。」
目が腫れていたが、カンナはいつもの笑顔を俺に見せてくれた。
「おう、絶対勝とうな!」
「はい!それと……。」
今度は、カンナが俺の両肩を掴んできた。
「大切なものに大小なんてありません。だから、言葉に重みがないなんて言わないでください。あなたの願いはもう、私の願いなんですから。」
いつものように、カンナがまっすぐな瞳で俺を見る。
その瞳や言葉に嘘がないことは、誰よりも俺がわかっていた。
俺よりずっと過酷で辛い時間を過ごしてきたはずなのに、それを感じさせない振る舞いや言葉。
ここに来てからずっと、自分の願いを叶えることだけを考えてきたけど、勝つ理由がもう一つ増えた。
「ありがとう。」
「ふふ、改めて宜しくお願いします。」
決意は固まった。
自分のため、カンナのため、神々の戯れ(ゴッドゲーム)に必ず勝つ。
「ところで、呼び方はどうすればいい?」
「カンナでいいですよ。本当の名は、流星家を復興したときに堂々と名乗ると決めてるんで。」
「わかった。俺もそのときは類ちゃんって呼ぶよ。」
カンナが少し膨れた顔になる。
「その呼び方やめてくださいよ。子供の頃の呼び方で、白姉様しか呼んでないんですから。」
「そうよ!類ちゃんは私だけが呼んでいい名前よ!」
突然、襖が開き龍白が入ってきた。
「は、白姉様!?いつの間に帰ってきていたんですか!?」
「今さっきよ。」
確証はなかったが、なんとなく嘘のような気がした。
「それより、二人の話は大体終わったのかしら?」
「はい、大助には私のこと含めて話しました。」
「ふーん?」
龍白がこちらをじーっと見てくる。
「大助、ちょっと。」
「は、はい。」
龍白が手招きしてきたので、一緒に廊下に出る。
「まずは、いろいろとありがとう。いきなりこんなことに巻き込まれて大変でしょうけど、類ちゃんのことよろしくね。」
「いえ、カンナにも龍白さんにも助けてもらってばっかりですし、俺たちの願いを叶える為にも全力を尽くします。」
「俺たち……のか。」
龍白が嬉しそうに笑う。
「頼もしいわね。それと、白姉様でいいわよ。」
「いや、それは恐れ多いという……か……。」
龍白が無言の圧力をかけてくる。
これは、拒否権はなさそうだ。
「わかりました。白姉……さん。」
「ふふ、よくできました。」
様はなんか気恥ずかしいのでさん呼びにしたが、ほんの少しの抵抗は成功したようだ。
「それと……。」
龍白の雰囲気が変わる。
何故だろう、嫌なプレッシャーを感じる。
「類ちゃんに手を出したら……わかってるわね?」
「はい!わかってます!!!」
龍白が優しい表情に戻り、ニコっと笑顔を向けてきた。
気づいてはいたが、カンナに対してそうとう過保護なようだ。
そりゃ、行方不明の姉の一人娘をずっと手塩にかけて育ててきたのだから気持ちはわかるのだが、それにしても怖かった。
「二人共、何を話しているんですか?」
カンナが様子を見に来た。
「何でもないわよ。さあ、私からも話があるから部屋に入りましょ!」
いろんな意味で心強い味方がいて、カンナは幸せ者だなと思った。
「まず、神々の戯れ(ゴッドゲーム)が開催されるまで、まだ時間はあると思うわ。」
「そもそもなんですけど、開催日とかは誰が発表するんですか?」
龍白が俺のほうを向いて難しい顔をした。
「ちょぉぉぉぉぉっとややこしいんだけど、今回の神々の戯れ(ゴッドゲーム)の開催日は荒闇家が決めるのよ。」
「荒闇家っていうと……。」
「あなたたちが戦った、災禍家の大元ね。」
「えぇ!?じゃあ、あいつらに主導権を握られているってことですか!?」
「厳密には違うんですけど、その認識でいいと思います。ですが、災禍忌悪は神従者が定まっていない状況です。つまり、自眷属もまだいない為、このままでは参加することすらままならない。そうですよね、白姉様。」
「そう。昨日の戦闘で神従者候補が消え、加えてあれだけ痛手を負えば準備に時間がかかるはず。荒闇家も、自分の身内が参加できないなんてことはしないでしょう。」
「なるほど。神々の戯れ(ゴッドゲーム)に参加するには神と神従者と自眷属が必要だから、災禍忌悪の準備ができてから神々の戯れ(ゴッドゲーム)は開催される。それじゃあ、俺たちも早く自眷属を見つけないといけないですね。」
「それについては当てができたわ。」
龍白が巻物を広げる。
俺とカンナが覗くと巻物には地図が書いてあり、その中に赤丸が付いている部分があった。
「霊生の森?」
俺がそう読むと、龍白がいつもの笑顔を見せる。
「そうよ、私たちは霊生の森へ向かうわ!」
第九話読んでいただきありがとうございます。
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次回投稿は10月24日(土)22時頃を予定してます。




