心強い変神(へんじん)
龍白の話をまとめるとこうだ。
災禍忌剛から受け取った巻物には、災禍家が独自に調査した霊生の森という場所の情報が記載されていた。
霊生の森は沖合にある小さな島にある森で、現在どこの神の領土にも属していない場所故に、島に近い神々の間で揉めているそうだ。
勝手に調査などしたら他の神々に喧嘩を売っているのと同じなのだが、災禍家含む荒闇家系列の分家は最近になって強行に出ることが多く、頭を抱えている神々が後を絶たないと龍白がイライラしながら話していた。
その調査書によると、数日前に霊生の森で異変が起きたらしく、秘密裏に拠点を作っていた災禍家の調査隊が何者かに襲撃を受けた為、忌剛へ救援要請を送ってきた。
すぐに戦闘部隊と調査部隊を増員したところ、呼魂の祠がある可能性が高いという情報が来たところまでが巻物の内容らしい。
「その、呼魂の祠ってなんなんですか?」
「呼魂の祠っていうのはね、神が道界から神従者候補を呼びだしたり、祠特有の創造界に行って自眷属を増やすことができる場所よ。」
「ちなみに、大助が目覚めた場所も呼魂の祠ですよ。」
「あの真っ暗な場所?」
「あれは結界のせいで暗かっただけで、本当は景色の綺麗な場所なんですよ。」
そう言われても、起きた瞬間襲われたせいで景色を楽しんでる暇なんかなかった。
「なら、そんな遠いところじゃなくて、またあの場所に行くのは駄目なのか?」
「あそこは天翔家の所有地ですから、本来なら破門された私は使ってはいけないんですよ。」
「そうなのか。」
カンナの話だと、天翔家の人々は龍白をはじめ好意的な人が多いと聞いていたが、いろいろと複雑なようだ。
「あの祠は私が管理を任されているから、昨日はこっそり類ちゃんを祠に入れて神従者との契約が終わり次第、すぐに逃がす予定で私も近くに待機していたんだけど……。」
龍白が機嫌の悪そうな顔をしている。
「何かあったんですか?」
「首都近くで神狩りが五十人も現れたのよ、それも急に。部下だけじゃ対応できない状況になって、仕方なく私も対処に向かったの。」
「その隙を狙われて、カンナは災禍忌悪に襲われた。」
「本人は否定していたけどね。ほぼ間違いないと思うわ。」
状況から考えると、カンナが襲撃されたのは計画的犯行だったのかもしれない。
しかし、わからないことがある。
「どうしてカンナが狙われたんですかね?」
「正確なことはわからないけど、類ちゃんを狙ったってよりかは祠に来た神を倒すことを目的にしていたんじゃないかしら。あの変態も、実験がどうこう言っていたんでしょ?」
確かに、あいつは最適な神従者を探して実験をしているって言っていた。
それに、龍白と戦うことにも躊躇がなかった。むしろ、父親のほうが避けていたくらいだ。
「まあ、何にせよあなたたちは避けては通れない相手だから、また戦う準備や覚悟はしておくことね。」
「霊生の森にもあいつは来ますかね?」
「可能性は無いわけじゃないけど低いと思うわ。私にやられたダメージもあるし、災禍家や荒闇家には、天翔家みたいに所有してる祠がいくつかあるからね。わざわざ遠出せずに、引き篭もって安全策を取ると思うわ。」
「それでも、災禍家から派遣されている兵隊が島を占拠しているんですよね?加えて、その災禍家を襲撃した謎の存在もいる。ほぼ間違いなく罠な上に、不確定要素がある状態で大丈夫でしょうか。」
カンナが強張った顔をしている。
千載一遇のチャンスとはいえ、危険が多いのも事実。
龍白がいるとはいえ、うまくいくのだろうか。
「それについては、対策を講じてきたわ。」
龍白が少しだけ嫌そうな顔をしている。
「いるんでしょ、入ってきなさい。」
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《少し遡り、天翔家首都・建翔》
「以上が、今回の報告になるわ。」
首都近くに五十人の神狩りが出たこと。
呼魂の祠近くで、神狩り二人と災禍忌悪が戦闘になっていて様子を見に行ったところ、災禍忌悪の襲撃に遭い撃退し、父親の災禍忌剛が仲裁に入り情報と交換に和解したこと。
その後、五十二人の神狩りを収監したこと。
ほんのちょっと隠しはしているものの、大方の内容は伝え終えた。
「やるじゃん!大忙しだったね!白姉!」
一番年下の虎紅が、楽しそうにこちらを見ている。
私が言えたことではないかもしれないが、もう少し四天翔としての自覚を持ったほうがいいと思う。
「霊生の森か!災禍家め、抜け駆けしおって。あそこは、私の研究対象の中でも屈指の優先度を誇る場所だというのに!」
この研究馬鹿は亀蒼。
神界と道界の翻訳を可能にする加護を開発した、歴史に名を残す研究者で強さも申し分ないが、研究熱心過ぎて周りが見えなくなることが多々ある変神だ。
「虎紅、亀蒼、殿の御前だぞ。少しは弁えろ。」
この大人ぶっているのは鳳翠。
私たち四天翔をまとめている気になっている、生真面目優等生だ。
しかし、内政や外交、はたまた首都の警備など常に天翔大御神様を支えている頼もしいやつでもある。
「よいよい、久々に集まったのだ。堅苦しいのは抜きにしよう。」
そして、この一見穏やかだが凄まじい力を秘めているのが、我らが殿こと天翔大御神様だ。
「して、龍白。今後の対策はどのように考えている?」
「時期が時期ですので、首都近辺を中心に警備を増員。祠周りは私の部下で固めます。霊生の森については、各神に通達をした後に調査隊兼討伐隊を派遣するべきだと思います。」
殿は軽く頷いている。
「そうか。鳳翠、すぐにでも通達を出すことは可能か?」
「可能ですが、災禍家と争い事になれば荒闇家も黙ってはいないでしょう。一戦交えるのも念頭に置くべきかと思います。」
「それはそうだろうな。しかし、指を咥えたまま霊生の森を奪われるよりかは幾分マシだろう。たとえ、敵が罠を仕掛けていようともな。」
どうやら、殿も私と同じ考えのようだ。
災禍忌剛が、これだけ重要な情報を簡単に渡すわけがない。
息子を助けたいという気持ちに嘘はないのだろうが、謎の存在の対処もしくは討伐か相討ち、祠を発見した瞬間の横取りなど考えているはずだ。
あちらも、せっかく見つけた戦力増強の機会をみすみす逃すほど馬鹿ではないだろう。
十中八九、罠がある。
「よし、すぐにでも霊生の森に向かう必要があるな。龍白、誰を向かわせる予定だ?」
「はい。敵の戦力や未知の戦力を考えると……。」
本当は嫌なのだが、この状況では致し方ない。
「亀蒼を同行させていただければと思います。そうすれば、星も輝くことでしょう。」
亀蒼以外の全員が少しだけ微笑む。
当の本人は……。
「霊生の森!合同調査依頼の本格的な調査だ。さて、どこから調べてやるとするか……。」
「……本人もやる気のようですし。」
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《現在、首都近く刑務所》
「いるんでしょ?入ってきなさい」
龍白の言葉と共に、廊下からピンポン玉くらいの大きさの球体が浮きながら入ってきた。
そして、突然青く光ると肩にかかるくらいの長さの黒髪の二十代くらいの男が現れた。
「初めまして、皆の衆。四天翔が一人、亀蒼と申す。」
十話ご愛読ありがとうございます!
ついに新章に入りました!これからも頑張ります!
次回投稿は10月26日(月)のお昼頃に、今回登場した亀蒼の外伝、22時頃に十一話投稿予定です!




