いざ!
「蒼様!お久しぶりです!」
「おぉ!類姫!やはりここにいたか!」
カンナが楽しそうにしている。
きっとこの人も、カンナをここまで支えてくれた一人なのだろう。
「白姉さん、この人は?」
「亀蒼、私と同じ四天翔の一人よ。」
「四天翔?」
「まあ、同僚だと思っておきなさい。」
亀蒼と名乗る男が現れてから、龍白が少しだけイライラしている。
なんだろう、仲が悪いのか?
「君が!廻神大助か!?」
亀蒼が、一瞬にして俺との距離を詰めてくる。
何故かとても興奮していて、その目はどこか狂気に満ちていた。
「うわぁ!は、はい!そうですけど。」
なんか、最近こんなのばっかりだな。
「君は!美味な筒てりやき味を知っているか!?」
「え!?美味な筒!?てりやき!?」
俺の知る限り、美味な筒とは俺の世界にある安価で買えるお菓子だ。
「はい、知ってますけど……。」
「あれは!本当に!美味なのか!?」
「え?俺は好きですけど。」
亀蒼がとても嬉しそうに笑っている。
いや、なんでこの人美味な筒を知ってるんだ?
「いやぁ、そうかそうか!いきなりすまない、龍白からの文で大体のことは聞いていたが、まさかこんな奇妙な縁があるとはなぁ!」
「奇妙な縁?何のことですか?」
「なんだ?龍白や類姫から何も聞いていないのか?」
カンナと龍白を見る。
二人とも、何やらよそよそしくしていた。
「私から話しますね。あまり、重圧を背負わせたくなかったですし、言わなくてもいいかなと思ったのですが……。」
神妙に話すカンナや黙って聞いている龍白に対して、亀蒼はずっと鼻息を荒くしていた。
「大助、あなたの御先祖様は、天翔大御神様の神従者だったんですよ。」
「え?」
何の話をされるかと思えば、いきなり御先祖様の話をされて何と言っていいかわからなかった。
「隠していたわけではないのですが、こんな形で伝えることになってしまいごめんなさい。」
「いや、別にいいんだけど、なんかびっくりした。」
「そうだろうとも!かつて天翔家に栄華を齎した英雄の子孫と、分家とはいえ天翔家の血を引く女神の邂逅!これを運命と言わず、何と言……。」
「やかましい!!」
龍白が亀蒼の頭を叩く。
俺からしたら相当な威力に見えたのだが、亀蒼にはダメージは無さそうだった。
しかし、空気を読んだのか黙ってしゅんとしてしまった。
なんとなく、龍白がイライラしていた理由がわかった気がする。
「話が逸れたわね、亀蒼には霊生の森へ同行してもらうことになっているの。ご覧の通り、研究や興味あることがあると暴走する癖があるけど、知識や実力は確かだから安心していいわよ。」
「……もう喋っていいか?」
どうやら、やかましいと言われたことを割と引きずっているようだ。
「……程々にね。」
龍白が少しだけ亀蒼を睨む。
亀蒼は軽く頷くと、喋っていい許可をもらったことが嬉しかったのか目がキラキラしていた。
「先程は失礼、亀蒼だ。類姫と大助の為、ひいては霊生の森の調査の為にこの度尽力することになった。よろしく頼む。」
なんとなく調査のほうに重きを置いている気がしなくもないが、まあそれは今はいいだろう。
「蒼様はとっても凄いんですよ!神々と道界の人間が話すことができる加護を開発したんです!」
「え!めっちゃ凄いじゃん!その加護が無いと、俺たち話せないのか?」
「もう契約しているから大体の意味は伝わると思うが、試してみるのもいいだろう。類姫、加護を切って何か話してみなさい。」
「え?はい、わかりました。」
カンナは目を瞑ると、深呼吸をしてから目を開き話しかけてきた。
すると、カンナが話し始めると同時に、神社でよく聞く音楽が頭に流れてきた。
え?なんで?
「我、空前絶後空腹。否、先程食事済。」
え?なんて?
「類姫、加護を戻していいぞ。」
「了。」
カンナはまた目を瞑り、そして開いた。
「大助!伝わりました?」
「いや、全然。」
カンナが残念そうな顔をしている。
一方で、亀蒼はとても楽しそうな顔をしていた。
「あの、亀蒼さん。」
「ん?なんだ?」
「さっきカンナが喋っているとき、頭に音楽が流れてきたんですけど、これは普通ですか?」
「何!?そんな事例は初めて聞いたぞ!これは研究せねば!」
あ、余計なことしたかも。
亀蒼は何やらぶつぶつ言いながらあちらこちらを歩き回っていて、止まる気配がない。
「はあ、もう放っておきましょう。それより、これからのことね。」
龍白がため息をついた。
きっと、普段からこんな感じで振りまわされているんだろう。
他人事だからかもしれないが、なんだか微笑ましく思えた。
カンナもなんだか楽しそうに笑っている。
「大勢で行ったら気づかれるし、戦争しに行くわけじゃないからこの四人で乗り込むわよ。最大の目的は、類ちゃん達の自眷属を見つけること。戦闘になった場合は、私が囮になって引きつけるから、二人は亀蒼に従って先に進みなさい。」
亀蒼が知らない場所で暴走しないか心配だが、信じるしかないだろう。
「わかりました。島まではどうやって行くんですか?龍郎に乗って行くんですか?」
俺が聞くと、龍白が首を横に振った。
「龍郎は速いけど、とんでもなく目立つから今回は途中までね。じゃないと、島から集中砲火を受けちゃうわ。」
確かに、なるべく戦闘を避けるなら目立たないほうがいいだろう。
「亀蒼!亀吉はもう準備できてるの?」
龍白が振り返って声をかけると、亀蒼は我に返ったのかトコトコ小走りでこちらに来た。
「うむ、指示した場所で待っているはずだ。我々も、もう向かうのだろう?」
「そうね、鳳翠からの連絡は海の上で待てばいいでしょ。」
「いよいよか、ワクワクするな!」
「そうね!なるべく戦闘は避けるけど、避けられない場合は全力で蹴散らすわ!」
なんでこの二人はこんなに楽しそうなんだ?
龍白に関しては、戦いたいと思ってることを隠そうとしていない。
本当に大丈夫か?
そんなことを考えていると、龍白の美しい白いオーラが部屋一帯を包み込んだ。
「じゃあ、行くわよ!【白龍誘】!!」
え?もう行くの?準備とかは?
オーラが強く光り輝くと、部屋の景色が一瞬にして青空の景色に変わり、足元には龍郎の背中が伸びていた。
「龍郎!目指すは亀吉の待つ中継地点!出発!」
「るおーーーーーーーーーーーー。」
龍白の声を聞くと、龍郎は元気よく鳴きながら雲を掻き分け進み始めた。
さっきまで隣にあった大きな雲が、もう遥か後方にあった。
「我らを待つ心踊る未知へ!いざ!」
「いざ!」
「いざ!」
三人が、お前は言わないのか?と俺のほうを見る。
ピクニック気分なのが不安だが、まあ龍白もいるしなんとかなるだろう。
「い、いざ!」
俺が声を上げると、何故か三人がとても嬉しそうにしていた。
こうして、期待と不安の入り混じる新たな旅が始まった。
十一話ご愛読ありがとうございます!
亀蒼の外伝短編作品も投稿していますので、よければそちらもお楽しみください!
次回更新は、10月28日(水)22時頃予定です!




