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神々の戯れ~ゴッドゲーム~   作者: 歌ポケ
第一章〜邂逅編〜

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契約

「【天翔風(あまかけるかぜ)】!!」


放り出されて地面に激突しそうになったが、カンナが助けてくれたらしい。


風が俺たちを包み込み、無事着地することができた。


「【災禍(さいか)・礫(つぶて)】!!」


前からまたどす黒い塊が飛んできている。


さっきのよりはだいぶ小さいが、速度は段違いだ。


「【天翔光(あまかけるひかり)】!!」


俺を庇うようにカンナが数メートル前に出て技を放った。


光線が塊を相殺し、大きな土煙が辺りを包み込んだ。


何も見えなかったが、攻撃が飛んできた方向からおぞましい何かを感じ、背筋が冷えるような感覚に襲われた。


「あぁ?雑魚神かと思ったが、思ったよりやるじゃねえか。」


土煙の中から、先程の追っ手に格好が似ている男が現れた。


格好こそ似ているが、追っ手とは比べ物にならないほどのプレッシャーを放っており、自分の体の細胞全部がこの男に危険信号を出していた。


「てめえかぁ?俺の雑魚共に手ぇ出した奴は?」


男はニヤニヤしつつも声を荒げており、楽しんでいるのか怒っているのかわからなかった。


そのせいで、より一層不気味さが増していた。


「無礼な御仁ですね。あなたが先ほどの神狩りの長ですか?」


カンナは俺よりも落ち着いてはいるが、背中越しにも緊張が伝わってきた。


一瞬の隙も見せてはならない、そういう思考にならざるを得ないほどの異質さがそこにはあった。


「だったらなんだ?お前みたいなひょろっちいのが戦うってのか?退屈しのぎにもなりゃしないかもだが…、まあ、お試しにはちょうどいいだろう。」


大声で話してるかと思えば、いきなりぶつぶつと小声で話し始めたりして俺はこの男が恐ろしくて仕方なかった。


この場から一秒でも早く逃げ去りたかったが、下手に足を引っ張れば俺もカンナも命を落としかねないので、俺はその場で静観することにした。


そのとき、男から黒いオーラのようなものが溢れだした。


「がっかりさせるなよぉ!!【災禍(さいか)・暴風(ぼうふう)】」


一瞬にして男は、カンナのすぐ目の前に現れた。


オーラは右の拳に集まっており、男はそれを振りおろした。


台風のような轟音が鳴り響く。


「カンナ!!」


俺がそう叫んだ直後、男は弾き飛ばされちょうど最初に現れたくらいの場所に着地した。


「風は殴るために使うものではないって習いませんでした?」


俺は風が攻撃を防ぐためのものと習った覚えはなかったが、それはとりあえず置いといて一安心した。


男とは違う、優しくも力強い風がカンナを守るように渦巻いていた。


「ほぉ、術の複数同時発動に自動防御、それに加えこの威力か。おめえ、ただの野良神じゃないなぁ?」


先ほどとは一転、男はカンナのことを認めたのか警戒を強めたようだ。


同様にカンナも警戒を緩めない。


数秒間もの膠着状態が続き、男がニヤつきながら口を開いた。


「まさか、てめえ例の没落神かぁ?」


「【天翔光(あまかけるひかり)】!!!」


男の言葉を聞いた途端、カンナから量も威力も凄まじい光線が男に放たれた。


俺ですら分かるほどの怒りを、カンナから感じた。


「【災禍(さいか)・乱気流(らんきりゅう)】!!」


男は黒いオーラを足に集中し、素早く不規則に動いて光線を回避した。


光線は男を追尾しているが捉えることができない。


「いやぁ、いいとこのお嬢さんだったとはなぁ。あ、いっけねぇ、元・いいとこのお嬢さんだったか。」


男は素早く動きながらも余裕があるようで、ずっとカンナに話しかけていた。


「黙れぇぇぇぇ!!!!!」


カンナは叫びながらも光線で男を追い続けた。


戦いのせいで俺には男が何を言ってるのかよく聞こえなかったが、カンナが取り乱した原因があの男にあるのは一目瞭然だった。


「カンナ!落ち着け!」

「そうだぞぅ?ほらよ!【災禍(さいか)・暴風(ぼうふう)】」


男がまた一瞬にしてカンナの前に現れた。


さっきよりもややカンナの左側面から同じように、オーラを纏った右拳を振りおろす。


先程と同じような轟音が鳴り響いた。


そして、男の拳は風の壁を突き破りカンナの腹部を捉え、そのままカンナを地面に叩きつけた。


「カンナぁ!!」


地面が揺れ土煙が舞った。少し凹んだ地面の真ん中にはカンナが倒れていた。


「う、ぐ……」


仰向けになったカンナは、意識はあるようだが起き上がることができないようだった。


そして男はカンナの腹部を踏みつけ、高笑いをした。


「やめろぉぉ!!」


俺は無我夢中で男に向かっていった。次の瞬間、男は高笑いを続けながら掌だけを俺に向けた。


「【災禍(さいか)・礫(つぶて)】」


小さな黒い塊が猛スピードでこちらに飛んでくる。


この至近距離じゃ避けられない。


咄嗟に両腕で体を防ごうとしたが、俺に直撃する寸前に優しくも凄まじい風が巻き起こった。


カンナが着地のときの風を消さずに、俺に纏わせて守ってくれたようだ。


黒い塊は砕け、俺の足元に野球のボールくらいの塊がいくつか散らばった。


「はぁん、キレててめえの防御はお粗末になったが、神従者(パートナー)の防御だけは抜け目がないとはな。外付けハードとはいえここまで重宝するなんて、名家の誇り高き慈しみか?それとも、まさかあいつに惚れたか?」


男はニヤニヤしながらカンナに話しかけていた。


勝利を確信しているのか、俺のことは眼中に無いようだ。


「だ…まれ…。」


微かにカンナの声が聞こえたが、声色からしても喋るだけで辛そうなのが伝わってきた。


「ははぁ、負けが確定しても衰えないその闘志は褒めてやるよぉ!!とどめは俺の全力だぁ!!」


男は笑いながらまた拳にオーラを集中させていた。


「さぁい…」


そのとき、男は顔に飛んできた黒い塊を間一髪のところで避けた。


「誰が負け確だって?」


俺は拾った黒い塊を再度男に投げつけた。男は飛んできた塊をキャッチしたが、手から血が流れていた。


「どうだ、強豪野球部の球の威力は?」


体は震えていたが、精いっぱいの勇気を振り絞った。


できることがこれしか思いつかなかったが、男の注意をカンナから逸らすことには成功した。


「この程度の攻撃しかできないってことは、てめえまだこいつの神従者(パートナー)じゃねえのか?」


男は手から流れた自分の血を舐めながら、俺を睨めつけていた。


どうやら、とんでもなくお怒りのようだ。


「どうだろうな。」


震えは止まらなかったが、逃げたいとは思わなかった。


どうすれば二人共助かる?俺にできることはなんだ?


そんなことを考えつつ、男の一挙手一投足を見逃さないよう集中した。


「ゴミ虫なんかどうでもいいが、死にたいなら先にあの世に送って…」

「【天翔風(あまかけるかぜ)】!!!」


話を遮るように暴風が巻き起こり、男は弾き飛ばされ宙に舞った。


それと同時にカンナは風に乗って俺に向かって飛んできた。


「【天翔星守(あまかけるほしのまもり)】」


カンナから眩い光が放たれ、目を瞑ってしまった。


目を開けると周囲が真っ暗になっていた。


すると突然、目の前が光り輝きそこからカンナが現れた。


カンナは立っていたが急に膝から崩れ落ち、俺にもたれかかった。


「カンナ!大丈夫か!?」


俺はカンナを受け止め、地面と呼べるのかもわからない暗闇に寝かせた。


「なん…とか、大助の…おかげで。」


血は出ていないが、巫女装束はひどく汚れていて呼吸は辛そうだった。


「大…助、結界を…張りましたが…長くは…もたないでしょう。」

「いいから!休めって!」


カンナは首を振り、俺の服を掴んだ。


「結界が…壊される前に、あなたを元の世界に…帰します。」

「な、何言ってるんだよ!」

「あの者は…おそらく神々の戯れ(ゴッドゲーム)参加者です。侮っていた…わけではありませんが、このまま戦えば…あの者は私とあなたを跡形もなく消しにかかるでしょう。」

「そうしたら、お前はどうなるんだよ。」

「私は…最後まで全力で戦いますよ。先程の…あなたのように。」


カンナは弱々しく笑って見せたが、その表情には覚悟や不安が感じ取れた。


命に代えても俺を守る、その約束を守るためにカンナは死ぬつもりなんだ。


もしここで元の世界に戻ったとしても、願いは叶わない。


それどころか、自分の為に戦っているこの子を見捨てることになる。


それでいいのか?


「こんなに巻き込んでおいて…、ふざけんなよ。」


拳を強く握りしめる。


俺の心は決まっていた。


「契約するぞ。カンナ。」

「だ、大助…駄目です。」


カンナが、俺の服を強く引っ張ってきた。


こんな状態になってもなお、俺の心配ばかりしている。


お人好し過ぎて呆れてしまいそうになるが、そんなカンナだからこそ俺の決意は固まったんだ。


「こんなところで終わらせたりなんかしない。まだやれることがあるなら、俺は全力でやるだけだ。

それに…命に代えても守ってくれるんだろ?」


柄にもないことを言ったせいで少し恥ずかしさはあったが、俺はカンナに最大限の笑顔を見せた。


カンナは不安そうな顔をしていたが、決心がついたのかすぐにニコッと笑い掌を俺に向けてきた。


「爆発しても…知りませんよ?」

「この状況でそういうこと言うか?」


俺も掌をカンナに向ける。


そのとき、結界が破られたようで暗闇が消えて夜空が広がった。


数十メートル先に男の姿があり、俺たちを見つけるとすぐさま攻撃態勢に入った。


「これで終わりだぁ!【災禍(さいか)・炎上(えんじょう)】!!」


男の場所から広範囲に広がる黒い炎が、俺達に迫ってくる。


けれど、俺達には全く焦りも不安も無かった。


互いの掌を合わせて、俺は流れてくる力や思いを全て受け入れた。


黒い炎が周りのすべてを包んだ。


その様子を見た男はニヤッと笑った。


しかし次の瞬間、俺たちを包んでいた黒い炎は吹き飛び眩い光が溢れた。


男は突然の光に驚き目を閉じた。


「ぐぅ、一体なんだぁ?」


男が目を開けると、目の前にはカンナが立っていた。


「【流星光(ながるるほしのひかり)】!!」


零距離から、今までの比ではないカンナの一撃が男を襲う。


「ぐががああああああ!!!」


光線は男を巻き込みどんどん遠ざかり、大きな岩にぶつかると爆発した。


爆風が土煙を起こし、周りが見えなくなった。


土煙が晴れると、男がボロボロの姿で立っていた。


「くそぉ、どこ行った…。」

「【天翔疾風(あまかけるしっぷう)】!!」


カンナは俺の足に風を集中させた。


カンナの風を受けた俺は、男の目の前まで一瞬で移動し、全力で男の顔面を殴り飛ばした。


「ぐほぉっ!」


男は二メートル程飛ばされ、地面に転がった。


契約のおかげで俺の身体能力は上がっているらしく、体には力が湧いてくる。


調子が良過ぎて、自分の体じゃない気さえした。


「立てよ、カンナが受けた痛みはこんなもんじゃないぞ。」


男は不気味にも無言で蹲っていたが、急に顔を上げると俺を睨みつけた。


「楽に死ねると思うなぁぁ!【災禍(さいか)・蔓延(まんえん)】!!」


男からどす黒いオーラが巻き起こると、オーラは形を成して最初に襲撃してきた鳥と追っ手の姿になり、三組程が男の上空数メートル上で浮いていた。


「あらら?また呼ばれたぞ?」

「本体様!ボロボロ!ボロボロ!」

「あれ?本体様、こいつさっき追ってたやつでは?」


分身達は現れるや否や、雑談を始めた。


男の怒りは俺に殴られた時点で頂点に達していたようだが、分身達の様子を見て限界突破したようだった。


「雑魚共ぉ!!そこの虫二匹を消せぇ!」

「ひ、ひぃ!!」


分身二組はカンナへ、一組は俺の元に向かってきた。


百メートルは離れてるであろう俺たちを各個撃破するつもりらしい。


分身が十メートルほど上から黒い塊を撃ってきたので、俺は走って逃げた。


身体能力が上がったとはいえ、上空の敵にジャンプし攻撃して外せば良い的になってしまうし、カンナのように術を使える気もしなかった。


攻撃を受けるという選択肢も考えたが、この状況下で万が一動けなくなったら終わりなので、逃げに徹することにした。


チラッとカンナを見ると、前後から同じように攻撃を受けているようで、時折術の光が見えた。


やられるほどではないのかもしれないが、連携を取られ多少苦戦しているようだった。


隙をついて男も攻撃をしてくるかもしれない、と警戒はしたがオーラを纏って手を伸ばしてるだけで一歩も動いていなかった。

なんとか、カンナまで三十メートルくらいの距離まで近づけた。


「【天翔風(あまかけるかぜ)】!!」


カンナの強大な風が吹き荒れ、三組の分身全てを遠くへ吹き飛ばした。


俺が纏っていた風も強まり、俺を持ち上げるとカンナの隣まで運んでくれた。


風さんには頭が上がらない。


それぞれ百メートル程飛ばされた分身達は、猛スピードでこっちに向かってきている。


この間も男への警戒は怠らなかったが、やはり一歩も動いていなかった。


「大助。契約のおかげで多少回復しましたが、私の今の体の状態では多数から攻められると死角ができてしまい、今のように広範囲の術を使うしかなくなってしまいます。」

「マジか、回復の術とかないの?」

「あるにはありますが、敵を前に悠長に使えるような術ではないので、あまり現実的とは言えませんね。」

「なるほどな、広範囲の術を連発はダメなのか?」

「他に比べると溜めや消費が大きいので、連発すると隙が大きくなってしまうんです。」


とはいえ、こちらにそれ以外の選択肢が見つからない。


せめて俺が上空の敵を倒せたら…。


「なので、ぶっつけ本番ですが奥の手を使います。」

「奥の手?」


カンナはそう言うと、纏っているオーラを更に輝かせた。


なんだ?必殺技でも使うのか?


戻ってきた分身達はその様子を見て、それぞれ十数メートル上空からまた黒い塊を連射してきた。


それと同時にカンナの姿はオーラの中に溶けていき、やがて俺を包み込む光のドームになった。


直後に全ての攻撃が直撃したが、ドームは無傷だった。


『大助!頼みましたよ!』

「え?何?どういうこと?」


ドームの中は優しい光で包まれており、少しずつ俺の体を覆っていった。


『【流星類無女神(ながるるほしのたぐいなきめがみ):付喪神形態(つくもがみけいたい)】!!』


次の瞬間、ドームが弾け中から光があふれた。


そしてその中心には、白地に金の模様が入った狩衣(かりぎぬ)を羽織った俺が立っていた。

第三話読んでいただきありがとうございます!次回は個人的に詰め込んだ回ですので楽しみにしていただけると幸いです!次回投稿は10月14日(水)21時予定です!

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