再会
《大助が怪我した日の夜》
母親から、近所の幼馴染の大助が怪我したらしいと聞いて気が気じゃなかった。
母親は数日前に、変な外国人に会ってお菓子を大量にもらってきたり、近所のお祭りで亀すくいをして見事に一匹すくい、蒼と名前をつけて飼うことにしたりと突拍子がないことが続いたので、最初は聞き流していた。
しかし、愛犬の姫ちゃんの散歩で大助の家の近くを通ったときに、大助のお母さんが泣きながら車から降りていたのを目撃し、母の言っていたことは本当だったのだと気づいた。
幼稚園のときから中学までずっと一緒で、大助が地元で有名な野球の強豪校に推薦で行くと聞いたときは、人目を避けて泣いてしまった。
唯一の救いは、大助は寮生活じゃなく自宅から通っていたので、姫ちゃんの散歩のときや走っているときにバッタリ会ったときに、話したり一緒に走ったりした。
楽しい時間のはずなのに、別れる時間が来るのが嫌で邪魔にならない程度にギリギリまで一緒にいた。
この時間がずっと続けばいいのにと思っていた。
でも、大助が頑張っている姿を見て、自分の気持ちを胸に押し込んで陰ながら応援していた。
去年の秋大会からレギュラーになったと聞いたときは自分のことのように喜び、大会で大助の高校の記事や結果が出る度に切り抜いてノートにまとめた。
そんな大助が、最後の大会直前に怪我をした。
自分の部屋で、新聞の切り抜きをまとめたノートを見る。
大助が初めてスタメンで出て勝った試合結果の記事、大助が初めてホームランを打ったときの記事、地元の星と取り上げられてちょっと緊張気味の顔の大助が写っている記事。
読み返す度に涙が溢れた。
一番辛いのは大助なのに、涙が止まらなかった。
自分の心の中をたくさん埋め尽くしている彼を思うと、深い悲しみに襲われた。
大助も泣いているだろうか。
居ても立っても居られず、連絡をしてみる。
「さっき聞いたんだけど怪我したの?大丈夫なら後で電話したい。」
迷惑だっただろうか。
心配する気持ちと声を聞きたい気持ちが混在して、自分勝手な内容になってしまったと後悔した。
ベッドにうつ伏せになる。
自分の中でいろんな感情がごちゃごちゃしていた。
しばらくすると、大助から返信があった。
「ありがとな。とりあえず、やれることをやるよ。電話はまた今度な。」
いつもと変わらない返信。
しかし、否定しないってことは本当に怪我をしたみたいだ。
あと、やれることをやるって言うときの大助は基本追い詰められているときで、メンタル的に疲れている場合が多い。
そんな彼に何もしてあげられないという事実が、堪らなく悔しかった。
なんでもいい。
大助の力になりたい。
そんなことを考えながら泣いていると、いつのまにか眠ってしまった。
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気がつくと、洞窟の中にいた。
外は夜のようで暗いのだが、ほんのり光を放つ植物が辺りを照らし、足元には洞窟の中とは思えないほどの草木が生い茂っていた。
「ここ、どこ?」
突然の出来事で、思わず心の声が出てしまった。
すると、少し遠くに黄緑色の光が動いているのが見えた。
光はまるでこっちにおいでと言うかのように、楽しそうに飛んでいる。
しかし、突然よくわからない場所に連れて来られたせいか行く気になれなかった。
そんな私を見て痺れを切らしたのか、黄緑色の光はこっちに向かって飛んできた。
え?嘘、襲ってくる!?
私は光とは逆方向に走って逃げようとしたが、木の根のようなものに足が引っかかり転んでしまった。
右膝を擦りむいてしまい、血が出ていた。
うつ伏せの状態で上を見ると、黄緑色の光は私の真上で止まっていた。
「きゃあ!!!」
思わず声を上げてしまう。
しかし、何も起こらない。
むしろ私の声でパニックになったのか、黄緑色の光は私の上を慌てた様子で飛んでいた。
ところが急に空中で止まり、より一層強く輝きだした。
「え?何!?うわぁ!?」
怖くて目を瞑る。
しかし、やっぱり何も起きない。
いや、起きていた。
私の右膝が黄緑色に光っているのだ。
「きゃあ!何これ!」
驚いて思わず叫んでしまった。
恐る恐る右膝を見ると、なんと擦り傷が治っていた。
「え?嘘……。」
もう一度上を見ると、黄緑色の光がゆっくりと私のほうへ降りてきた。
私は体を起こし、壁のほうへ後退りをした。
黄緑色の光が私と同じくらいの目線の高さまで降りてくると、光の中にはたくさんの葉っぱで作ったような服を着た妖精のような子供がいた。
子供は心配そうにこちらを見ている。
「あなたが、治してくれたの?」
私の言葉を聞くと、子供は嬉しそうに首を縦に振った。
子供は喋れないようだが、私の言葉はわかるようだった。
しばらく私の周りを楽しそうに飛んでいたが、また洞窟の奥のほうに飛んでいった。
やっぱり、奥のほうに来てと呼んでいるようだ。
不安はあるが、頼れる人もいないので子供について行くことにした。
子供はゆっくりと歩く私に合わせてくれているようで、二メートル前をずっと飛んでくれた。
五分ほど歩くと、黄緑色の光が溢れる場所が遠くに見えた。
その瞬間、子供がスピードを上げて光が溢れる場所の手前まで飛んでいき、その場でくるくる飛び回っていた。
どうやら出口のようだ。
私は少し駆け足で進んで、子供の待っている場所まで行き一緒に洞窟を抜けると、黄緑色の光に包まれた一本の立派な巨大樹があった。
周りは高い岩の壁で包まれているが、頭上には夜空が広がっているようだ。
広がっているのだが、木の枝が大き過ぎてこの場所から見える空をほとんど隠してしまっていた。
枝には緑色の綺麗な葉っぱをたくさんつけていて、凄まじい生命力を感じる。
昔、大輔と一緒に遊んだ森の一番大きい木に似ているような気がした。
『やあ、お客さんかい?』
突然、頭の中に声がした。
周りを見渡しても子供と私しかいない。
まさか、子供が喋ったの?
『驚かせてごめんね。君に話しかけているのは、目の前にある大きな木だよ。』
え?木が私に話しかけている?
全く状況が理解できなかった。
『混乱するのも無理はないね、私の名前は王樹。君の周りを楽しそうに飛んでいるのは私の子供、葉だ。』
「王樹さんに、葉ちゃん?」
私が名前を呼ぶと、子供は嬉しそうに王樹の周りを飛び始めた。
どうやら本当に葉という名前らしい。
『君の名前は、なんていうんだい?』
「私の名前は、高田光です。」
『光か、良い名前だ。』
「あ、ありがとうございます。」
木に名前を褒められるなんて初めてだったので、ちょっと戸惑ってしまった。
『光、少しずつ説明してあげよう。まず、君がいるこの世界は……。』
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《現在、洞窟内》
「そういうわけで、私は王樹さんと葉ちゃんに出会って、葉ちゃんと契約することにしたの。」
泣き止んだ後、光が話してくれたことはいろいろと衝撃的だった。
まあでも、俺がここにいる経緯を話したら、光も驚くと思う。
慣れてきてしまっているが、俺と光にとってはそれくらい非現実的なことが起きているのだと改めて思った。
「ところで大助、そこにいる男の人と女の子は誰?」
「あぁ、紹介するよ。亀蒼さんとカンナ、亀蒼さんはめっちゃ強い人で、カンナは俺の神様だ。」
「私は研究者だ!」
亀蒼が騒いでいたが、光はそれを全く気にせず、ずっとカンナを見ていた。
「じゃ、じゃあ、こ、この可愛い子と、契約したの!?」
「か、可愛いなんて…。大助!この方とても良い人ですね!」
カンナも光もどっちも悶えている。
しかし、なんとなく理由は違う気がした。
そんなことを考えていると、葉が俺の頭をポカポカ殴ってきた。
「痛!痛いって!やめろ!」
手で追い払うと、葉は俺を煽るかのように洞窟の奥へ飛んでいった。
どうやら、こっちに来いと言っているようだ。
「大助、せっかくのもてなしだ!奥に行こう!」
亀蒼が今までで一番興奮している。
ずっと我慢していたのか、目が狂気に満ちている。
一度違うことに気を逸らさせないと。
「そういえば、龍白さんは?」
「おっと、忘れていた!」
亀蒼が目を閉じた。
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《その頃の龍白》
「はぁ!?敵の根城を突き止めたら、大助の幼馴染がいて、研究対象がわんさか!?あんた、目的忘れてないでしょうね!!……って、念話切れてる。ったく、あの研究馬鹿!!!」
作戦は順調のようだけど、亀蒼の暴走が気がかりでしょうがない。
「それにしても、いきなり攻撃が止まったのはそうゆうことだったのね。」
攻撃してこないから逆に追っかけまわしたら、木の根が逃げ続けるっていうおかしな状況になっていたけど、納得がいった。
とりあえず、一通り周辺を調べたら私も向かうとしようか……。
突然、感知に化物じみた神力が引っかかった。
私はオーラを存分に練り、神力の元凶の元へ向かった。
どうやらあちらも気づいたようで、猛スピードでこちらに向かってきている。
この神力は知っている。
視界にも捉えた。
見覚えのある黒い着物に赤黒い髪、あの糞女だ。
「【白龍息吹】!!」
「【蛇郡濁流】!!」
白いオーラと赤黒いオーラがぶつかりあい、相殺された。
オーラがぶつかった部分は、地面が抉れていた。
「やはりいたわね!貧弱女!」
「こっちの台詞よ!蛇目女!」
十五話ありがとうございます!
定期更新に戻すかどうかは、いろいろと考えてからまたお伝えできればと思います!
それでは、また次回会いましょう!




