それぞれの戦い
《雫島・霊生の森より少し離れた場所》
荒闇家には、三矢と呼ばれる猛者がいる。
天翔家でいう四天翔みたいなものだ。
目の前にいる糞女は、幻惑の蛇目女。
術中心の戦闘を得意としていて、初見で戦いたくない相手は誰かと聞かれたら、大御神級を除けば、どの神も真っ先にこいつの名前が出てくるだろう。
実際、私は上位神になる前の神々の戯れ(ゴッドゲーム)でこいつに負けている。
姉が助けてくれていなければ、この世にいなかっただろう。
「あら、漢字も読めなくなってしまったのかしら?それとも、年老いて記憶力が低下してしまったのかしら?どちらにせよ、お可哀想なこと。改めて自己紹介してあげますわ。私は蛇目女と…。」
「わざと言ったのよ。あんたこそ、年齢のせいで小言が増えてるわよ?これだからおばさんは嫌ね。」
「この貧弱女!年齢なんて然程変わらないでしょうがぁ!」
蛇目女が怒り狂って突っ込んできた。
休む間もなく、次々と打撃を繰り出してくる。
全ての攻撃を裁き、蛇目女の腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。
追撃の好機。
でも、これは罠。
「【白龍波動!!】」
全方位にオーラを放つ。
目の前の蛇目女と、背後に迫っていたもう一人の蛇目女の体が崩れ落ちて土に溶けた。
分身で相手の出方を探り、隙があればそのまま倒す。
怒り狂って我を忘れているように見せかけ、本命は背後からの攻撃。
ただし、どちらも分身。
実にいやらしい戦い方だ。
三十メートル程先の空中に黒い穴のようなものが現れ、中から蛇目女が出てきた。
「ふふふ、少しは成長したようですね。私に負けたときのトラウマをほじくり返してあげようと思ったのに。」
「千年以上前の話をまだ武勇伝にしているなら、小者に思われるわよ?」
「この減らず口が!」
こいつ相手に、冷静さを欠いてはいけない。
そしてなるべく時間を稼ぎつつ、類ちゃん達のことは悟られないようにする。
やることは多いが、問題はない。
「さっき年齢が然程変わらないとか言っていたけど、微差は大差よ?」
「死にたいようですね、塵にしてあげましょう。」
強大な赤黒いオーラが練られている。
こちらもオーラを存分に練る。
ここからが本番だ。
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《霊生の森・洞窟内》
俺を煽る葉、それぞれ悶々とするカンナと光、鼻息を荒くしながら血走った目をしている亀蒼、制御不能なメンバーを連れて洞窟の奥へと向かう。
進んでいくと、光の話の通り黄緑色の光が溢れた場所が見えてきた。
すると、葉が俺の前に急にやってきて、あっかんべー!をして光のほうへ飛んでいった。
出会ってまだ二十分も経っていないはずなのだが、酷く嫌われてしまったようだ。
「ほぉーーーーーー!!」
突然、亀蒼が走りだした。
追いかけようと思ったが、カンナと光を置いて行けなかったので、暴走組は放っておくことにした。
少し歩いたおかげで落ち着いたのか、カンナも光も楽しそうに談笑している。
いや、のんびりしている場合ではないのだが……。
「へえ、クレープですか!美味しそうですね!」
「材料さえあれば簡単に作れるよ。今度一緒に作らない?」
「いいですね!是非、作りましょう!」
放課後のテンションで話している。
注意しようかとも思ったが、カンナの境遇を考えればこういう話ができる相手も数少ないだろうし、光も同い年くらいの女の子に会えてリラックスできているように見える。
……本当は三百歳なんだけどな。
面倒なことになりそうだから、言わないことにした。
そんなことを考えていると、やっと亀蒼たちに追いついた。
「遅いぞ!見てみろ、この神秘を!」
亀蒼の言葉をスルーし周りを見てみると、圧倒的な存在感を放つ巨大な木が、黄緑色の光を放っていた。
見るからに生命力に満ちている。
『やあ、よく来たね。』
頭の中に聞こえる。
王樹が話しかけてきたようだ。
光から話を聞いてなかったら、驚いてしまっていただろう。
「お初にお目にかかる!我が名は天翔亀蒼守神改め亀蒼、天翔家所属の上位神で、四天翔の一人だ。」
「流星類無女神改めカンナです。」
「廻神大助です。」
どうしようもないことだが、自分だけ名前が短いのが気になった。
【話は聞いているよ。特に……、いや、なんでもない。ふふふ。】
なんだ、なんで笑ってるんだ?
光が妙にあたふたしているが、それはまあいいか。
「こちらも光殿から話は聞いている。王樹殿、我々は其方達もといこの島に危害を加える気はない。しかし、他の者がこの島にある呼魂の祠を狙って悪事を働こうとしている。どうか、呼魂の祠の場所を教えてくれないだろうか。」
亀蒼はさっきの興奮している姿が嘘かのように、堂々とかつ高貴な振る舞いをしていた。
さすが、上位神というべきか。
「そして、ひと段落したら私といろいろ話をしてくれないだろうか!?この島のことや其方のこと、いろいろ話してみたい!」
前言撤回。
『話すかどうかは置いといて、呼魂の祠の場所は教えよう。』
「本当ですか!!ありがとうございます!」
カンナが嬉しそうだ。
それもそうだ、俺だって嬉しい。
これでやっと新しい仲間に会える。
『ただし、一つ条件がある。』
「条件?一体何だろうか?」
亀蒼が聞くと、葉が王樹の周りを飛びまわり始めた。
『葉と光も連れて行ってほしい。』
「え?」
思わず光のほうを見る。
光は動揺せず、ただ真剣な顔をしていた。
どうやら、こうなることはわかっていたようだ。
『この子達はまだ契約したばかりなのもそうだが、葉はまだ生まれて一週間くらいでね。力は強いが、まだまだ経験不足なことが多い。そこの二人も、創造界に行くのだろう?』
亀蒼が神妙な面持ちになった。
「わざわざライバルを増やせと?」
『状況的に見ればそう思っても仕方ないが、そうはならないさ。心配なら、徒党契約を結ばせてもいい。もちろん、葉が仕える形でだ。』
「なんだと!?」
亀蒼が驚いて大きな声を出した。
葉は王樹をポカポカ叩いている。
「亀蒼さん、徒党契約ってなんですか?」
「神同士が上下関係を結ぶ契約のことだ。簡単な話、あの子供と光殿が正式にこちらの味方になる。」
そもそも味方のようなものだと思っていたので、何をそんなに驚いているのか不思議に思ったが、葉の様子を見る限り、不服なようだ。
「徒党契約を結べば、光殿の願いを叶えるのは類姫次第になる。あの子供は、それが嫌なのだろう。」
「なるほど。」
葉は光のことが大好きなのだろう。
だから俺のことも何かと目の敵にするし、徒党契約も渋っている。
「私はそれで大丈夫です。」
光が亀蒼にそう言うと、葉が慌てて光のところに飛んでいき服を引っ張っている。
どうしても光を止めたいようだ。
「葉ちゃんありがとう。でもね、私じゃ葉ちゃんのこと守れないし、葉ちゃんの負担も大きくなっちゃうの。それに、私の願いのことは知ってるでしょ?」
葉はしばらく飛び回っていたが、少しすると諦めたのかその場で大人しくなった。
すると、カンナが光と葉のほうへ歩いていった。
「そうしたら、徒党契約の件は一緒に創造界から帰ってこれたら決めるというのはどうでしょう。そのほうが、葉様も憂いなく判断できるはずです。」
葉は、さっきよりかは元気よく飛び回っている。
どうやら納得はしてくれたようだ。
カンナが王樹のほうを振り向く。
「王樹様もそれでいいですか?」
『あぁ、構わないよ。むしろ、気を遣ってくれて感謝してるくらいだ。』
「これくらい気にしないでください。私と光様はもう友達ですし、仲間になるなら葉様とも早く仲良くなりたいですからね。大助もそう思いますよね?」
「あぁ、そうだな。」
光が複雑そうな表情だったのが少し気になるが、現状考えられる最善手だとは思う。
『本当にありがとう、心優しき友よ。ならば私も、君達の優しさに応えなければいけないね。』
突然、王樹が強く輝きだし、空間の中が黄緑色の光一色になった。
思わず目を瞑る。
そして目を開くと、王樹の根本あたりから上に三メートルくらい伸びた不思議な光を放つ穴ができていた。
『これが君達の探していた呼魂の祠だ、要は私自身というわけだ。』
亀蒼が恍惚の表情で王樹を見ている。
今にも走り出しそうだ。
しかし我に返ったようで、真剣な表情に戻った。
「類姫、大助、遂に始まるな。私はついていけないが、全力を尽くすのだぞ。」
「え?亀蒼さん来ないんですか?」
てっきり来るものだとばかり思っていた。
「龍白がいるから大丈夫だと思うが、万が一ここを襲われると其方らが帰って来れなくなってしまうからな。それに、王樹殿とも積もる話があるからな。」
『構わないが、程々にしておくれよ?』
なんとなく王樹が嫌がっているように見えるのは気のせいだろうか?
まあ、何はともあれここからは自分達でどうにかするしかない。
やれることをやろう。
「大助、葉様、光様。危険な旅になるかもしれませんが、絶対にみんなでここに帰ってきましょう!」
「おう!」
「絶対帰ってこようね!」
葉が俺達の周りを飛び回っている。
『愛しき子供達よ、その旅路に幸あれ。さあ、ここに飛び込むがいい!』
「行ってきます!」
「うむ、行ってこい!!」
亀蒼と王樹に見守られながら、四人で駆け出す。
そして、穴の手前で一斉に飛び込んだ。
俺達は、穴の中に吸い込まれていった。
『今更だが、あの子達は大丈夫だろうか?』
「心配なかろう、あの子達ならきっと大事を成し遂げられる。」
『あぁ、我々は信じて待とう。』
「それはそうと王樹殿、この呼魂の祠のことも含めていろいろ聞きたいのだが!!」
それから数時間もの間、王樹は質問攻めにあったとかなかったとか。
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目が覚めると、地面に倒れていた。
ここはどこだろう、みんなは?
起き上がると、見知らぬ森の中に倒れていた。
霊生の森とは違う、至って普通の森だ。
神力のような力は特に感じない。
「おおーーーーーーーーーーーーーん!!」
突然、森の奥から獣の雄叫びが聞こえた。
雄叫びが聞こえたほうへ走る。
進めば進むほど、大きな生物が暴れているような音が大きくなる。
一体何の音だ?
すると、鉄のような鎧と剣を武装した十人くらいの集団を見つけた。
そして、その集団と相対していたのは、集団が小さく見えるほど大きな、灰色の四足獣だった。
遅くなって申し訳ありません。
ご愛読ありがとうございます!
次回投稿は、11月5日(水)21時予定です。
早まりそうなら変更します!
それでは、次回に会いましょう!




