4 予言?
その日、伯爵邸の食卓はいつもより豪華だった。なぜなら当主が久しぶりにまとまった休みを取ったからである。
伯爵家の当主・パーシーは国王の執事として王城に部屋を与えられているため、仕事が立て込んでいる時は自宅にはなかなか落ち着かない。
国王の執事は一人ではないがパーシーが抱えてる仕事は多い。そして後輩への指導などの教育にも熱心で休日も勉強会やら自己研鑽やらで帰ってきても大人しくしていないのだ。
「…で、お昼過ぎにお帰りになった伯父様は何をしてらっしゃるの?晩餐の時間は伝わってるわよね?」
ハリエッタが純粋な疑問として尋ねる。
「フォンス様の学院の課題をご覧になっておいでです。…そろそろいらっしゃるかと…」
ああそうか、とハリエッタは納得した。後輩に教育熱心な伯父は身内である自分たちにも当然、教育熱心だった。
ハリエッタは卒業を控えているため、もう課題らしい課題は与えられていないが、弟のフォンスは今年から貴族学院に入学しばかりなのだ。
ついこの前まで帰ってきた伯父に課題を見てもらっていたのはハリエッタが最優先だった。何だか懐かしいわね、と彼女は妙にしみじみとした気分になる。
と、同時に明確な進路が決まっていないハリエッタは少し不安になる。聖堂学園は聖職者を目指す貴族の子弟たちに開かれた学園だ。同級生は実家の領地の聖堂に赴任するものがほとんどで、そのほかは王都の大聖堂や聖騎士団などに配属が決まっているが、ハリエッタはそうではない。
学者や高位聖職者を輩出してきた伯爵家の者として伯父が以前そうだったように王都の大聖堂の神官を目指していたが、パーシーに「上層部で調整しているので配属については心配無用」と言われたのだ。還俗したとはいえ、国王の懺悔聴聞師を務めていたパーシーは今でも聖堂上部に顔が効く。当主であり後見人の伯父がそういうのだからハリエッタとしてはそれ以上動きようがなく、役目を言い渡されるまでは少しのんびりしててもいいだろうと思っている。
とはいえ、友人たちが将来の展望について語る中で話に加われないというのは少し寂しいものがあり、同時にどんな「お役目」が与えられるか不安でもあった。
久しぶりの家族がそろった晩餐は和やかに進み、貴族学院のことを楽しそうに話すフォンスを見てほほえましい気分になる。
「ハリエッタ」
パーシーがおもむろにハリエッタを呼び止めた。心なしかいつもより真剣な…いわゆるお仕事モードに近い表情である。
「はい」
「君の進路について、ようやくだが話すことができるようになった。この後執務室で詳しく話そう」
執務室のローテーブルに食後のお茶を用意し、パーシーは人払いをした。使用人は退出していく。王城内イケオジランキングと理想の執事選手権の上位記録保持者の風格で一口お茶を飲んだパーシーは少しだけためらった後こう切り出した。
「聖者聖女認定の話は知っているな?」
「はい。授業で習いました。今年はちょうど選定の儀式が行われる年ですね。それが、わたくしの進路に関係が…?」
この国の宗教は独特である。主に信仰されている神は一柱だけだが国の守護神とされており、実は時々代替わりしている。そのため数十年に一度、加護を授けられたり伴侶に選ばれたりする人間が出てくるのだ。それに該当する人物を男性なら「聖者」、女性なら「聖女」と呼ぶ。彼らの仕事は選定された理由により異なるため、一概に決まっているものではないが、伝えられているところによると守護神の催事を執り行ったり時代によっては戦いへ赴いたり、様々なようである。とはいえ、ここ数十年聖者聖女は選定されておらず、すでにおとぎ話の域に入りつつある話だ。
それでも習慣的に選定の儀式自体は10年ごとに行っている。いつ守護神が聖者聖女を選ぶかわからないからだ。
選定の対象となるのは儀式の年に聖堂学園を卒業した学生と、現在聖職者として働いている者である。日にちが決まっていて地方各地でも行われるが、儀式自体はそう難しいものではない。
神は基本的に人間の目に見えないため、「声」が聞こえる人間がいるかどうかを神自身が聖堂に降り立って判断するというものらしい。とはいえ神を感知できない人間の方が多いから、形式的な祈りの儀式として認識されているのが現状である。
「単刀直入に言う、君は聖女に選ばれる」
「え?」
話が細切れで短くてすみません。
次からちょっとずつ長くなっていきます!
この話が実はぶっ飛んだギャグがベースになっているということがばれていきます!




