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ロスト・ライフ~女の子に食べられる前夜~【ロールプレイングゲーム型小説】  作者: 空超未来一
【ステージ5】: ひまわりは夜に出会い、朝を迎える
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ステージ5(F)

 意識を失った少女

 力だけが暴走する


コ:……っと、カッコつけたところで……これはやばいよなあ……


 立ちはだかるは見上げるほど巨大な両手

 圧殺、絞殺、撲殺

 死につながる要因は数え切れない


コ:でも、約束したから。二人分の約束は必ず守ってみせる


 手札は二つ

 これまで何度も振るってきた剣と時を止める力

 周りから見れば瞬間移動


コ:たぶんあの両手を砕ければなんとかなるのかな……?


 何もわからない状況での戦闘

 けれど、コクメは剣を握りしめる


コ:いこう


 ――――カチっ


 時が止まった世界で駆ける

 両手の背後へと周り、根元を断ち切る


ガキインッ


コ:ちょっ、嘘みたいに固いなッ!


 ブウウンっ


コ:ぐうっ⁉


 巨大な裏拳を全身で受け止める

 宙へと飛ばされるが、着地には成功した


コ:危機一髪……こんなの何回も喰らってられないんだけど


 体力が持つうちに大地から生える両手を断ち切らなければならない

 しかし、自慢の剣は歯が立たないときた


コ:これってもしかして詰んでる……?


 絶望の中、さらなら追い打ちが襲う

 大樹の指の先から幾重にも枝分かれした触手が伸びてくる


 シュババババババッ


コ:はあっ、はあっ。こんなの体力が持たない!


 受けに転じれば敗北は明らか

 しかし攻撃はまるで通じない


コ:だからって諦める理由にはならないッ!


 カチっ


 一瞬の時を止め、再び両手との距離を縮める


 ズバババババババババっ


 大樹に切り込みが入る

 それはのこぎりで板を切るように、段々と深くなっていった


コ:切り込みが浅く立って何度もやれば切れるはず!


 シュババババババッ‼


 コクメの動きが速度を上げていく

 さらに速く、またさらに速く


 ババババ――――ッ!


コ:っと!


 触手がコクメを襲うが、


 カチカチカチっ


 小刻みに時を止め、見事なまでにさばき切る

 そして、


コ:――――これで終わりだッ‼


 ズバアアアッ‼


 ず太い両手首を一刀両断することに成功した

 ズドンっと砂塵を上げて両手が落ちる


コ:はあっ、はあっ……なんとか……なった


 コクメが膝から崩れ落ちる

 彼の体力はすでに限界に達していた


コ:時を止める力って……便利なようで馬鹿みたいにしんどくなるからなあ


 連続で使用したことにより、コクメはもう一歩たりとも動けない


コ:でも……これで約束を守れた。これであの赤髪の子も安心して眠れ――――


 ――――る、と言おうとしたところで

 コクメの呼吸が止まった


 ズズズズズ……っ


 触手が、大量の触手がミミズのように地を這っている

 それらは意思を持つかのようにとある目的地を目指していた


コ:……うそ、でしょ


 切り落とされた両手

 その切り口に触手が集まっていく

 コクメの脳裏によぎる、最悪の未来

 再生


 ズズズズズッ


 集まった触手が絡み合い、両手首へとつながる

 そうして、再び悪魔の両手が復活した

 何事もなかったかのように


コ:まずい……これは本当にまずいって


 両手がコクメのほうへと向かってくる


コ:――――ッ!


 カチっ


 彼は脊髄反射で時を止めていた

 が、想定していたよりも早く時が動き出す


コ:ぐう……っ⁉


 時を止めるだけの体力が残っていなかった

 両手に掴まれたコクメは全力で逃げ出そうと試みる


コ:くっそ……ッ。力強すぎるから……ッ!


 そう簡単に抜け出せるわけもなかった

 握りしめる力がより一層強くなる


コ:ぐがががああああああああああああああああああああ‼


 傷とは違う痛み

 それはもはや痛みではなく苦しみそのものだった

 内蔵という内蔵が圧迫され、悲鳴を上げている


コ:ううううううううううううウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ⁉


 これ以上力を込められたらどうにかなってしまう

 そう糾弾しても力は強まる一方だ

 抗う力も残っていない


 ある一線を越えた瞬間――――脳裏によぎる



 死



コ:アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ⁉⁉⁉


 断末魔が木霊する

 唯一の安らぎが叫ぶことだった

 叫ぶことで苦しみが紛れる

 だが、すぐに悲鳴はやんだ

 肺の中の空気がなくなる

 再び取り入れることは叶わない

 圧力が許さない


コ:――――――――


 死の直前に見えるという走馬灯

 コクメにも同様の現象が起こっていた


 洞窟の中で目を覚まし、失われた記憶を求め旅に出た

 ハイネと出会い、獣人の存在を知った

 たくさんの人々と言葉を交わした

 救えた命があった

 救えなかった命があった

 後悔なら数え切れないほどある

 過去を変えられるものなら変えたい

 それは無理な話だ



 だってここで、死ぬのだから



コ:――――――――ッ


 死ぬ

 死

 どうなる

 簡単な話

 もうなにもできなくなる

 わすれる

 かんがえられなくなる

 全部終わる


コ:――――ね、ない


 まだ、生きる理由がある

 赤髪の子と目の前の少女との約束を守りたい

 少女を救いたい

 それに、記憶も取り戻せていない

 ハイネと腹を割って話せていない

 彼女のことを何一つ分かっちゃいない


コ:――――それでまだ、死ねるわけがない


 不思議な感覚だった

 死の直前だというのに、夢心地なで心地が良い

 頭では理解できないが、魂が知っている

 一か八か

 意識を手放そう

 生きるにはそれしかない


『死』が『ボク』のすべてを引き出してくれるのを信じて


 あのときと似た感覚

 アイスが殺されたと知った時の、胸の内に渦巻いた――――真っ黒な闇



コ:



 コクメの意識が途切れる

 言うならば、彼は糸の切れた絡繰り人形だった

 体を握りつぶされておしまい

 そのはずだった



 ぶわ……ッ



 闇がコクメの内側から噴き出した

 比喩ではない

 どの物質にも当たらないダークマターがコクメの身体から噴き出し、大樹の両手を木っ端みじんに吹き飛ばした


 パラパラ……っ


 砕け散った大樹の両手が再び形成される

 正面に佇むのは、闇の権化だった


コ:


 意識のないコクメを包む影を具現化したような闇

 まるで生きた炎のように揺らめている


 ジュルルルルルルルルルルッッ


 大量の触手が両手の指先から飛び出す

しかし、


ズズズズズズズっ


 闇も触手と同様に無数に分裂しすべてを打ち払った

 闇に触れた瞬間、触手は即座に干からび粉みじんになって風にさらわれる


 そこからは一方的な暴力だった

 闇が大樹の触手をすべて喰らう

 徐々にやせ細っていく両手首


 グォ――――ッ‼


 このままではまずいと判断したのか

 両手が拳を握りしめてコクメを狙った

 両サイドから挟み込まれる形での強襲


コ:


 ドンッッッ‼


 コクメの両脇から巨大な闇の手が生まれ、大樹の拳を止める

 闇の手に触れた大樹はみるみるうちにやせ細っていく

 ついには、粉となって消え失せる


 ――――終わりはあっけないものだった


 ズズズズっ……


 突如として発生した闇はコクメの身体の内側へと吸い込まれるように戻っていった

 残ったのは静寂だけだった



 ステージ5(G)へ


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