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ロスト・ライフ~女の子に食べられる前夜~【ロールプレイングゲーム型小説】  作者: 空超未来一
【ステージ5】: ひまわりは夜に出会い、朝を迎える
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ステージ5(D)

 白い街でも獣人化現象は起こった

 コクメが戦い、ハイネの力で獣人化を抑える

 そうやって世界にはびこる悲しみを消していた


 その報せが届いたのはしばらく経ってからのことだった


コ:獣人が殺されてる?


レ:オレが調べたところによると、ただの噂話じゃないらしい


コ:獣人が殺されるって……ボクたち以外に獣人と戦える人なんているの?


レ:どうだろうな。ただ、ここ最近で獣人の姿を見なくなったのは肌身で感じてるだろう?


コ:……たしかに。獣人が暴れる数が少なくなってるなとは思ってたけど


レ:どうも、街に隣接してる森の中で事が起こってるらしいぜ


コ:森の中…………


イ:心当たりでもあるの、コーくん?


コ:いや……ううん、なんでもない


レ:オレも最初は噂話くらいなものだと思ってたが、目撃者の数からして間違いないだろうな。森の中に獣人を殺す『何者か』が潜んでる


イ:それは聞き捨てならない。獣人が人から嫌われてしまうのは、仕方のないことだけど……だからって理不尽に命を奪われていいはずがない


レ:そうだな。つーわけで、オレたちでどうにかしたほうがいいと思うんだが……コクメはどう思うよ、コクメ?


コ:…………


イ:コーくん?


コ:ボク、行ってみるよ


イ:行ってみるって?


コ:森の中に。獣人を惨殺してる犯人を見つけて、話をしてみる


イ:待って。一人じゃ危険だよ


レ:ハイネの言う通りだ。オレたちがまともな戦力にならないとはいえ、慎重に行動したほうが得策だ。もう少し情報を集めてからでも


コ:その間にまた獣人が殺されちゃうかもしれない


レ:それは、そうだが……


コ:ボクなら大丈夫だよ。いざとなったら逃げ出すし、それに修行のおかげで『時を止める力』も二秒に伸びたしね!


レ:一秒が二秒になったところであまり変わらんだろう


コ:そんなことないさ。戦いの中の一秒で生死が分かれるくらいなんだから。大丈夫、ボクに任せて、レンゲとイッちゃんは街で情報を集めてほしい


レ:わかった……気を付けるんだぞ、コクメ


コ:うん。思い立ったが吉日。行ってくるかな


イ:ねえ、コーくん


コ:ん?


イ:ほんとに……危なくなったら逃げるんだよ?


コ:もちろんだよ


 コクメは立ち上がり、入り口の扉に手をかけた

 一度振り返って、二人に声をかける


コ:それじゃ、いってきます


 中心街から離れて数十分ほど

 森の中は不気味なほどに静かだった

 心なしか、植物たちの葉に張りがないように思える


コ:このいつも修行してる場所から先に行くのは、この街にやってきた日以来だなあ


 あの日のことを思い出す

 ハクチョウの獣人を倒したことがきっかけで、ハイネの記憶が戻った

 そして植物を操る橙色のドレスを着た少女と出会ったのも、あの日のことだ


コ:まさか、ね


 コクメの脳裏によぎる、一つの可能性

 彼女には彼女の信念があり、正義がある

 それが何かわからないけれど、否定することはできない


コ:……もしも。もしもそうだったとしたら、ボクはなんて声をかければいいんだ?


 たとえば両親を獣人に殺されていたのなら?


コ:獣人を恨むのは当然だ。殺したいほど憎いだろう。でも、君が殺しているのは両親の命を奪った獣人じゃない。だから、こんなことに意味はない……とか


 彼の言葉は本当に届くのだろうか?


コ:獣人は人を襲ったりするし、そもそも誰かに感染してしまう悪の根源。だから、一体も残さずに滅ぼしたほうがいい……って言われたら?


 思考が分岐し、ついには両手で数え切れなくなる


コ:どれにしたって、あの女の子が殺してるって決まったわけじゃない


考えるだけ損だと、心を新たにしたとき。

行く先に一体の獣人が倒れているのを見つけた

 血相を変えて駆けつける


コ:……ひ、ひどい傷


 五体満足とはいえないくらい獣人は重体に陥っていた

 もう助からないとコクメは悟る


コ:ほら、これを飲んで……


獣:…………


 うっすらと開いた瞳にコクメが映る

 コクメが差し出したのは獣人化を抑える薬だった

 万が一のためにとハイネから受け取っていたのだ


コ:ゆっくりで大丈夫だから


獣:…………


 獣人の身体はコクメよりも小柄だった

 きっと子供が獣人化したのだろう

 あまりに悲痛な現実に、コクメは唇を噛んだ


獣:お、兄ちゃん……?


コ:――――っ


 悲痛で済めば、幾分マシだったかもしれない

 薬の力で獣の姿から、半分ほど人へと戻っていく


 ――――見たことのある顔立ちだった


 忘れるはずもない

 赤い髪が特徴的なこの子は――――橙の少女が救った女の子だ


コ:なんで……なんで君が獣人に……


赤:……あのときの、おにいちゃん……?


コ:え?


赤:あの……ね。わたし、助けてくれたおねえちゃんにおかえしがしたくてこっそり見てたの。でも、おねえちゃん笑いながらたくさんのかいぶつをころすようになって。すごくこわくて……


コ:……喋らないで。傷が開くから


赤:だからね、今度はわたしがおねえちゃんを助けてあげなきゃって。おかしくなったおねえちゃんをもとに戻してあげなきゃって


コ:そんなことが……


赤:でも、わたしじゃだめだった……かいぶつのすがたになっても、あのおねえちゃんをたすけられなかったか、ら……


コ:…………


赤:だから……お兄ちゃんが、助けてあげ、て……


コ:……約束する。必ず、あの子を救ってみせるから


 コクメは小指を差し出し、冷たい小指を握った

 天にでも、神にでもない

 この小さな勇者に誓う


コ:だから、ゆっくり休んでて



 ――――亡骸を寝かせ、立ち上がる



 ステージ5(E)へ


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