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ロスト・ライフ~女の子に食べられる前夜~【ロールプレイングゲーム型小説】  作者: 空超未来一
【ステージ5】: ひまわりは夜に出会い、朝を迎える
45/56

ステージ5(C)

レ:遅かったな。森の妖精にナンパでもしてた?


コ:縁起でもないこと言わないで!


 これ以上ハイネの機嫌を損ねたくないコクメ

 それから彼らは森を抜け、白い街へとたどり着いた。あれだけ白い街へ行くことを拒んだハイネは嘘のように静かだった

 白い街には宿屋がたくさんあり、コクメたちは温泉で有名な宿に泊まることを決めた


レ:広い部屋。優しい畳の香り。晴れやかな青空。ぁぁ……、宿最高……


コ:ここ最近野宿ばっかりだったからねえ。久しぶりにぐっすり眠れるよ


レ:もうオレここの子になる


コ:あんたはまたそんなこといばっかりゆうて、ほんまにおいて帰るよ~?


二人:ちらりっ……


イ:わたしお風呂行ってくるね


二人:あ、はい


 ハイネ、コクメとレンゲを置いて部屋を出る


コ:やっぱり……イッちゃんまだ怒ってるっぽいね


レ:一応落ち着いてはいるみたいだけどな。そういうお前はなんかすっきりした顔に見えるぞ


コ:まあね。久しぶりに一人っきりの時間があるといいもんだよ


レ:なるほど……一発キメたわけか


コ:ナニとは言わないけど、十中八九間違ってるからその想像


レ:男はみんなそう言うよなあ


コ:それはいいとして、どうにかイッちゃんの機嫌を戻せないものか


レ:オレたちがとやかく言って解決するもんじゃないっしょ。本人が心を整理できるまで見守ってやるしかない


コ:……やっぱり記憶が戻ったの?


レ:それはわからないなあ。お前が一人で散歩に出かけたあともこれといって会話があったわけじゃないし


コ:そっか。見守るのがベストか……


レ:おうよ――――というわけで、オレはさっそく見守ってくるぜ


コ:え?


レ:んじゃ行ってくる


コ:ちょちょちょちょ、ちょっと待って


レ:なんだよ


コ:見守るってなに? 物理的に? 四六時中?


レ:おうよ


コ:それもはや監視じゃん!


レ:馬鹿言え。ちゃんとプライベートは守るぜ、オレはよ


コ:びっくりするくらい説得力がない。というか今って……


レ:ようやくオレの真意に気づいたか


コ:…………まったく。そういうことなら先に言いなよ、親友


レ:それこそ品がないってもんだ。だろ、相棒?


コ:へへっ


レ:ははっ


二人:いざ、女風呂へ……ッ‼


 二人、最高の笑顔で部屋を出る

『男』と書かれた青いのれんをくぐり、衣服を脱ぎ捨てる


レ:まずは作戦会議だな。湯船でも浸かりながら話そうや


コ:おーけい。目標の機嫌が機嫌だ。見つかったら死より恐ろしい体験を味わうことになるからね、緻密に相談しよう


 シャワアアアアっ


コ:……って、レンゲの肌割れって全身に出てるの?


レ:……おっと、夢中になりすぎて隠すのを忘れてた。悪いね、気分の悪いものを見せちまって


コ:いや別に、気分は悪くならないけどさ。お湯染みない?


レ:それは大丈夫。痛みには慣れてるから


コ:唐突に強者感出してくるな


レ:痛気持ちいい


コ:よかった。安心した


レ:安心されるのもどうかと思うが……。気分を害していないようでよかったよ


コ:そりゃどうも


 ちゃぷんっ


コ:ああ、気持ちがええんじゃあ


レ:五臓六腑に染みるぅぅ


コ:レンゲの場合、ほんとに染みてそうだね


レ:ははっ、違いない!


コ:それで……例の作戦について、詳しく聞こうじゃないか


レ:おうよ。まずは現状についての共有から始める


コ:お願い申し上げます


レ:第一に、この宿にオレたち以外の宿泊客はいないらしい。つまり、今女風呂にいるのはハイネだけってことになる


コ:なるほど、他の人に迷惑をかけなくて済むってことなんだね


レ:ハイネにはド迷惑をかけることになるがな!


コ:いっこうに構わんッ‼


レ:お前さん……たまに支離滅裂な発言をするよな


コ:関係ない。早く続きを申せ


レ:ええっと……んで、ハイネ以外に女風呂にいないからバレる率が極端に下がることになる


コ:人の目が少ないからね。要するにイッちゃんに見つからなければいいわけでしょ


レ:ところがどっこい。そう簡単にご馳走にありつけるはずがないんだな


コ:その心は?


レ:女風呂を覗くにあたって二つの懸念点がある


コ:懸念点?


レ:一つは女将の存在。ここの女将がまあ怖い女性らしく、見つかったら最後。ケツが真っ二つに割れるまで叩かれる


コ:お尻は最初から割れ取るがね


レ:そしてもう一つ。そもそも女風呂にハイネがいないという状況。それが一番最低最悪な結末になるだろう


コ:え? でも、イッちゃんはさっき風呂に行くって


レ:言ったな。でも行ったとは限らない


コ:…………


レ:今のハイネはオレたちが知っているハイネじゃないかもしれない。記憶を取り戻したのならなおさらだ。どこに行ったか、わかったもんじゃない


コ:それは……


レ:否定できないだろう。現実はそんなもんだよ。だからこそハイネがいない場合が最悪の結末なんだ。女風呂を覗いたときに誰もいない虚無感……想像するだけで身震いがする


コ:え、そっち?


レ:逆にそれ以外に恐ろしいものなんてあるのか?


コ:ボクは今、レンゲが一番恐ろしいよ


レ:意味分からんこと言ってんで動くぞ。この胸の奥の高鳴りがおさえられない


コ:要するにムラムラしてるってことね


レ:いくぞ、相棒オオオオオオオオオオオ!


コ:ボクは今、君の相棒であることが何よりも恥だと感じてる


 壁際に張り付くレンゲ

 彼の姿はまるでゴキブリだと、コクメはつくづく思った


レ:そおーっと。そおーっとだ。この壁を越えた瞬間アガルタの光景が手に入る


コ:真下から見上げる君の下半身の光景は絶望的だよ


レ:気をつけなきゃいけない瞬間は覗くとき。女将がいないことを確認し、ハイネの位置を確認できればそれでいい。そこから鑑賞会が始まるのだ!


コ:ねえ、レンゲ


レ:大きな声を出すんじゃない! 女風呂のほうに聞こえたらどうするんだね!


コ:女将さん、ここにいるんだけど


レ:え?


 レンゲが見下げる

 コクメの隣に女将が控えていた

 レンゲは何事もなかったかのように壁からずり落ちた


レ:こんにちは、女将さん


女:はい、こんにちは


レ:いいお湯をありがとうございます。ところで女将さん、こちらは男風呂ですよ?


女:ごめんなさいねえ、お掃除をしなくちゃいけなくて


レ:そうでしたか。お勤め、ご苦労様です


女:覗き魔を処分するという、大掃除がね


レ:退散……ッ!


女:逃がさないよ、地の果てまでッ!


 ダッ!


 真っ青な顔で逃げ出す、レンゲ

 彼を追いかける女将の形相はまさに鬼だった


コ:あれが本当の鬼ごっこなんだろうなあ……


 ちゃぷんっ


 緊張が解けたのか、コクメは改めて湯船に浸かった


コ:ふう……


イ:なんだか騒がしいね


 もたれかけた壁の向こうから、声がした


コ:あはは……、やっぱり聞こえてた?


イ:作戦会議のところからしっかりね


コ:お~、こわ~っ


イ:コーくんは微妙に乗り気じゃなかったから許してあげる。レンゲくんはダメだけど


イ:そのさりげない一言が信じられないくらい恐ろしいよ


イ:ふふっ、冗談だってば


コ:半分冗談に聞こえないなあ


イ:もう、コーくんはわたしのことをなんだと思ってるのさ?


コ:さあ、なんだと思ってるんだろうね?


イ:ふふふっ


コ:あははっ


 穏やかな空気

 滴が水面にはねる



イ:コーくん――――わたしね、思い出したよ



コ:そっか――――思い出したんだ


イ:うん、思い出した。全部、思い出した


コ:きっかけは何だったの?


イ:たぶん……あのハクチョウの獣人の翼を斬ったときだと思う。わたしの片翼も、同じように切り裂かれたから


コ:――――ッ。ごめん、イッちゃん! ボク、不用意に


イ:コーくんは悪くないよ。むしろ動揺してコーくんたちに八つ当たりしたわたしのほうが悪い


 …………


コ:……まだ、ボクたちには話せない?


イ:ごめんね、コーくんが思い出すまでは話せない


コ:それってつまり……


 コクメとハイネは記憶を失うまでに――――すでに出会っていた


イ:正直ね、コーくんには思い出してほしくない。ううん、これは強欲でわがままなわたしの気持ち……。コーくんはきっと思い出すべきなんだと思う


コ:イッちゃん……


イ:わたしが話せば、コーくんもきっと思い出す。でも、そうしたくないわたしがいて、どうしても話すことができない。ごめんね、コーくん。ほんとにごめん


コ:それは仕方のないことだよ。イッちゃんもボクのことを思って言ってくれてるんだろうしさ


イ:でも、これだけは伝えておきたいのっ。わがままばかりで何言ってんだって思われるかもしれないけど……


コ:うん?


イ:わたしは、コーくんのおかげで『天使』でいられた。あなたと出会えたからこそ、生きていられたんだよっ


コ:…………


イ:ごめんね、ほんと何言ってるんだろうねわたしっ。何回謝ってるんだろう


コ:じゃあさ、一つだけボクのわがままを聞いてもらってもいい?


イ:コーくんのわがまま?


 ハイネがさりげなく上を向く

 と、そこで初めてコクメが女風呂を覗いているのに気がついた


イ:ちょっ、えっ、コーくんっ⁉


コ:うーん、相変わらずイッちゃんはいい身体してるよねえ


イ:何言ってるのコーくんっ!


コ:これでおあいこ


イ:……へ?


コ:イッちゃんはボクに過去のことを教えてくれない。その代わりボクはイッちゃんのセクシーボディをしっかりと堪能した。これでおあいこでしょ?


イ:コーくん……っ


コ:どう? 納得してくれた?


イ:…………納得はできないかな


コ:あれ?


イ:乙女の柔肌を見られたわたしのほうが割りに合わないと思うなっ!


コ:……ぷっ。あははっ、たしかにおっしゃる通り!


イ:このツケは高いからね、コーくんっ


コ:なんなりとお申し付けくださいな、ハイネさま


 楽し気な笑い声が反響する

 遠くから聞こえてくる悲鳴と謝罪とケツを叩いた音は聞こえないふりをした



 ステージ5(D)へ


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