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ロスト・ライフ~女の子に食べられる前夜~【ロールプレイングゲーム型小説】  作者: 空超未来一
【ステージ5】: ひまわりは夜に出会い、朝を迎える
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ステージ5(はじまり)

 おぼろげに記憶している白い街

 彼らが白い街へとたどり着くのも残りわずかだ


コ:なんとなくこのあたりの景色を見たことがある気がする


イ:わたしも。やっぱり来たことがあるのかなっ?


レ:似たような景色なんていっぱいあると思うぜ? 広々とした野原に川のせせらぎ。昼寝をしてくださいといわんばかりだ


コ:たしかに眠たくなるのは分かるけど……現実がそうさせてくれないというか


レ:……あー、やっぱり目に入っちゃう?


コ:目に入るどころじゃないでしょうよ……


 コクメたちの行く先に立ちはだかるのは迷宮も迷宮

 迷いこんだ者を帰さん大樹海だ


レ:これ……まじで行かなきゃいけんのですか? 四方から触手に襲われる未来しか見えないんだけど


コ:それは間違いない


レ:あの、否定してくれませんかね?


イ:この樹海を越えた先に、わたしたちの記憶を取り戻す何かがあるんだ……


コ:そうだね。理屈では説明できないけど、そんな気がする


レ:コクメたちの記憶ねぇ。やっぱりまだ戻らないのか?


コ:うん……ミミさんの能力で戻りかけているのはたしかなんだけど


イ:あと一つ、きっかけがあればって感じかなっ


レ:ふうん。ほんと、二人の過去に何があったんだろうなあ?


コ:記憶を失ってるんだから、何かよくない出来事があったのは間違いないと思う。イッちゃんが氷の中にいたわけも何かあるはず


レ:氷の中にいたってイマイチ理解できんのよなあ。氷漬けにされる人生って想像するだけでも震える。寒いだけに


コ:うん


イ:うん


レ:…………


コ:ボクたちって、何者なんだろう?


レ:なんだなんだ、くさいぞ~? ぷんぷん漂ってくるねぇ、いやあ、くさい


コ:もう! 人が真面目な話をしてるときに茶化さないでよ!


レ:だってなあ、自分が何者だなんてくさいこと言うからさあ。記憶があるにしろないにしろ、分からないもんでしょ、自分のことなんてさ


コ:……


イ:……


レ:なに? 急に黙ってどったの?


コ:……いや、レンゲってふと核心をついたことを言うなと思ってさ。普段は歯糞みたいなのに


レ:歯は余計だ。糞よりも余計汚く感じるわ


コ:ともかく、この樹海を越えたらボクたちの記憶が戻るかもしれない。ならもう、腹をくくっていくとしますか!


レ:え~、記憶なんて突拍子もない出来事で戻るかもしれないじゃん。腹くくる必要もないって


コ:でも、苦難を乗り越えた先に掴み取れるものがあるかもしれない。たとえ触手に襲われたってボクは必ず乗り切って見せる!


イ:コーくん、さっきとは打って変わってやる気になってる


コ:まあね。ボクも男だからさ?


イ:うん、カッコイイねコーくんは


レ:で、本音は?


コ:イッちゃんが触手に絡まれる可能性を見出して、やる気が出た


イ:へ?


レ:あっはっは! そりゃたしかに『漢』だ!


イ:もうコーくんっ!


 そうして、コクメたち一行は樹海の中へと入った

 頼りになるのはミミから受け取った方位磁石のみ

 手元の針に異常は見られない


コ:ねえ、二人とも。これ本当にあってるのかな?


イ:そ、そう言われても……グルグル針が回り出したりはしてないんでしょ?


コ:少なくとも遭難確定演出はまだ出てないと思う


レ:大丈夫、なんとかなるって。まっすぐ歩いてるんだしさ!


コ:今のレンゲの一言が確定演出になったけどね


レ:しまった、まっすぐ歩いてると思ったら「あれ、この道さっきも通ったくない?」ってなるやつか。不用意だったぜ……


コ:早くフラグを折らないと……


イ:ごめん、何言ってるかわたしにはさっぱりわからないや……


 そんなこんなで、三人は同じ道を通ることなく順当に歩みを進めた

 と不意に、見慣れた景色にそぐわない存在が目に入った


コ:二人とも止まって。……誰かが倒れてる?


レ:あれは……獣人?


 道端で倒れたいたのは大きな白い羽根を持ったハクチョウの獣人だった


コ:あんなにボロボロになって……何があったんだ


イ:理由はなんでもいい。とにかく、早く助けないとっ!


コ:待ってイッちゃん。なんだか様子がおかしい……


 獣人の肉体が内側から隆起していく

 やがて獣人はヒトの型を失った

 みるみるうちに細胞が分裂していき肥大化する


レ:おいおいおいおい、どうなってんだよこりゃ!


 獣人はさらなる進化を遂げ、よりハクチョウに近い姿へと変身した

 禍々しい模様が全体に浮かび上がる


イ:肉体が瀕死に陥ったから生き延びようとして進化したんだっ


コ:それってつまり……どういうこと?


ハ:より“獣”に近づいたってことっ


獣:====ッ‼


 文字に書き起こせない咆哮が轟く

 甲高いというよりは鋭いと表現したほうが正しいかもしれない


レ:み、耳がやられて視界が揺れる……ッ


コ:まずい、くるっ!


 獣人の身体が揺らめいた直後、


コ:ごぶっ⁉


イ:コーくんっ! 嘴が刺さって……っ


レ:こいつ、いつの間にコクメの目の前に! 


コ:ぐっ……間一髪だね


レ:そうか、コクメ剣で防ぐのに間に合ったのか。距離をとれコクメ!


コ:言われなくて、も!


 嘴を押し返し、回し蹴りで吹き飛ばそうとするが、


コ:なっ、当たらない!


獣:…………


レ:獣人の姿がはっきりしない……?


イ:なんだか踊ってるみたい


コ:全然攻撃が当たらないんだけど……!


 シュッ、バババババッ


コ:まるで蜃気楼と戦ってるみたいだ!


獣:キエエっ!


コ:ぐううっ!


イ:たぶんあれがあの子の能力……『姿が揺らめく力』?


レ:攻撃は当たらないし、どこから攻撃が来るかもわからない。厄介なやつだな


コ:お前は相変わらず他人事みたいに言うんだね!


レ:だって他人事だし


コ:はよ戦わんかい!


レ:ちょっ、こっちくんな!


コ:よし、獣人の相手は頼んだ


レ:おのれえええええええええ‼


獣:キエエエエエエッ!


レ:いやあああああああああああああああああ⁉


 ババババババババババッ!


コ:すごい。レンゲのやつ、獣人の攻撃を紙一重で避けてる


イ:わたしには避けるたびに衣服が破れてるように見えるんけど……


コ:レンゲの命も時間の問題か


イ:社会的なね


コ:イッちゃん。あの獣人はまだ助けられるのかな?


イ:え?


コ:他の獣人みたいに人の姿に戻すことってできるのかな?


イ:……ううん、もうダメだと思う。あそこまで人の形が崩れた獣人は助けられない


コ:…………そっか


イ:コーくん……?


コ:――――うん。わかった。ボクが終わらせるよ


イ:終わらせるって――――


 ハイネが言い終わる直前で、コクメの姿が消える


レ:ひいいん、もうパンツの一かけらしか残ってないよぉぉぉ!


コ:――――っと。こんな短時間であられもない姿になったね、レンゲ


レ:……え? コクメ、いつの間に


コ:よし、やるか


レ:おい、コク


 ズバアアァァァッ‼


 再び、コクメの姿が消えたと思ったら、

 ハクチョウの翼が一刀両断に切り裂かれた


 獣:~~~=======ッ‼


 獣人も自身の身に何が起こったのか理解できなかっただろう

 抜群の斬り味を誇る、透明な剣の主は誰でもないコクメだった


コ:これでバランスが狂ったはず。もう君の能力は使えないよ


レ:コ、クメ……? いつの間に獣人の背後に


コ:最近覚えた必殺技さ。覚えたというより、思い出しただけど


レ:思い出した?


コ:詳しい話はあとで。早くトドメを指してやらないと


 地面に転がり苦しみもがく獣人をコクメは見つめた


コ:――――ごめんね


 ザシュッ


 戦いの結末はあっけないものだった

 ハクチョウの心臓部を一突きすると、ハクチョウの動きが止まる


コ:…………


 光となって消えゆく獣人を、コクメは最後まで見守った

 最後の一かけらが風に乗って消え去る


コ:……ふう、なんとかなった


レ:お前……無事か? 剣で嘴を防いだとはいえあの衝撃波はヤバそうだったけど


コ:まあ、なんとか。そういうレンゲこそ、致命的なダメージを受けてるように見えるけど?


レ:町についたら一番に服買うわ


コ:うん、至急必要だと思う。イッちゃんの目の毒だよ


レ:興奮しちまうもな


コ:イッちゃんは大丈夫だった?


 コクメが声をかける

 しかし、返答はなかった


コ:イッちゃん……?


レ:手遅れだったか……オレも罪な男だな


コ:そんなひび割れたカサカサの身体じゃ誰も興奮しないから


レ:オマエヲコロス


コ:本当にどうしたのイッちゃん? 怪我でもした?


 コクメがハイネに手を差し出そうとして、


 ペチっ


 ――――拒絶された


コ:……え?


イ:――――あ、いやごめんなさい!


コ:う、うん。ボクは気にしないけど……大丈夫イッちゃん?


 と、一歩近づき、

 ハイネが一歩下がる


イ:…………


コ:ごめん、イッちゃん。ボク、何か悪いことしちゃったかな?


イ:あ、あのそうじゃなくて! コーくんは全然悪くなくて!


コ:えっと……言いにくいことがあるのなら言わなくていいよ


イ:……ごめんねっ


コ:とにかく獣人は倒せたんだ。距離的にももうちょっと。この調子だと今日中には白い街につけそうだね


レ:だな。早く行こうぜ、ここにいたんじゃいつどこからか触手に手足を取られるか分かったもんじゃない!


コ:まだ気にしてるのそれ。どうでもいいけど、行こうか


レ:おう


イ:ダメっ‼


 ハイネの声が木霊する

 木々がざわめいた


レ:ハイネ……?


イ:ダメっ。あの街に行くのはダメ。やっぱり引き返そうよ


コ:急にどうしたの? やっぱり様子がおかしいよ?


イ:ダメなものはダメなのっ! あの街へは行けない


コ:――――思い出したの?


イ:――――ッ


 ハイネの肩がビクリと跳ねる


コ:思い出したの? あの街のことを、イッちゃんの過去を……


イ:そ、それは――――


コ:…………


ハ:…………


 空気が張り詰める

 二人の時が止まる


コ:ねえ、どうなのイッちゃん?


イ:…………


コ:何か言ってよ、イッちゃん!


レ:まあまあまあ、そう熱くなるなよコクメ


コ:レンゲ……


レ:お前さんの気持ちはわからんでもないが、ハイネの様子がおかしいのもたしかだ。お互い冷静じゃないんだよ。そんなときに喧嘩なんしてもあほらしいだろう?


コ:…………


レ:ハイネはオレに任せて、お前さんはそこらへんでも散歩して頭冷やしてこい。そう遠くなけりゃ、迷子にならんだろうし


コ:…………わかった。ちょっと行ってくる


レ:おう


 レンゲの提案を飲み、コクメは二人に背を向けた

 ハイネの姿を一瞥して、その場を後にする



 ステージ5(A)へ


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