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ステージ3(D)


レ:……どういう状況だ、これ?


イ:…………


 しばらくの間、誰も言葉を発しなかった

 ミツキの寝息だけが空間に満ちる

 ゼラが落ち着いたのを見計らい、ハイネは重い口を開いた


コ:さっきボクたちを襲ってきた獣人がオクトちゃんで――――ゼラさんを守ろうとミツキちゃんが獣人化した……?


レ:にわかに信じがたいな


イ:わたしだって信じたくないよ……


コ:ミツキちゃん……何事もなかったみたいに今も寝てるもんね


レ:そもそも、獣人ってのはそんなわらわらと湧いて出るようなものなのか?


イ:感染するからこそ、みんな人が変わったように獣人を忌み嫌うんだと思う。獣人に触れただけで感染するとかそんな簡単に移るってわけでもないけど


コ:もしかして……アイスちゃんから感染した……?


イ:だとしたら今頃村の人みんな獣人になってる。アイスちゃん言ってたでしょ。獣人の村出身だから、一般の獣人とは違って感染させないように特別な予防をしてるって


コ:たしかに……


イ:そんなことはもうどうでもよくて……問題は…………


コ:…………オクトちゃん


 赤髪をひるがえし元気よく案内してくれた少女の笑顔が脳裏をよぎる

 彼女はもう、いない


ゼ:わたくし……もうどうしたらいいか、わかりません


コ:……ゼラさん?


ゼ:オクトちゃんにもご家族にも顔向けができない。宿を明け渡しても、わたくしを売っても、一生仕えようとも、わたくしたち親子の罪は消えないのはわかってます。でも今、親友を殺したという事実にミツキが潰れてしまうんじゃないか、それだけが心配で


イ:…………


ゼ:最低だってわかってます。けど、この子が心配で心配でたまらない……っ!


イ:ミツキちゃんのお母さん、ですから


ゼ:わたくしは……これからどうしたら


 再び、沈黙

 薄い月明かりが月を照らす


コ:本当に……オクトちゃんだったのかな?


レ:どういうことさ?


コ:ほら、誰もオクトちゃんが獣人に変身した瞬間を見てないんでしょ。だったら、あの獣人がオクトちゃんだったとは言い切れないし


?:ごめんくださいっ!


 大きな声だった

 夜分にも関わらず宿の入り口の戸を強く叩く音が響く

 ゼラが愛娘を背負い、立ち上がった

 コクメたちがその後についていく


レ:ただごとじゃなさそうだな……


 扉をあけると、そこに立っていたのは長い赤髪を後ろで結わえた女性だった


ゼ:トパーズさん……


ト:夜遅くにごめんなさい! うちのオクトが来てませんか?


ゼ:――――っ


ト:普段ならもう寝ている時間なので布団に入っているものばかりだと思ってたんですが、どこにも見当たらなくて。お昼間にミツキちゃんと楽しく遊んだってオクトが話してたものですから、もしかしてここにいるんじゃないかと……


ゼ:…………


ト:うちのオクト、来てないですか?


 ゼラ、言葉が見つからない

 三人顔を見合わせるが、どうすることもできなかった

 ゼラ、怪訝に思い問い直そうとして、


ト:ゼラさ――――ひっ‼ そ、その手……っ!


 トパーズが見たものは、ゼラの肩をつかむミツキの手

 五指はない。ゼリー状の触手が濡れた髪のように垂れていた


ゼ:違うのっ! こ、これは……っ‼


ト:じゅ、獣人、獣人が出たあーッッッ‼‼


 夜空に木霊する絶叫

 それはまどろみを彷徨いつつあった村の目を覚ました


男:なんだなんだ……?


女:どうしたのトパーズさん


ト:じゅ、獣人が出たの! ゼラさんとこのミツキちゃんが獣人に感染してて!


男:何だとッ‼


ゼ:だ、だからこれは違うんですっ


男:何が違うんだッ‼ まさかずっと隠してたのか⁉


女:ひィッ⁉ 手が、手がないわ……ッ!


老婆:早急にこの村から出ていけッ‼ 疫病神ッ‼


男:死ねッ! 消え失せろ‼


女:きっと親も感染してるわッ! 近寄らないでッ


ゼ:は、話を聞いてくだ――――痛ッ


コ:な、なんだよこれ……っ


レ:おい、石を投げるな! 怪我でもしたらどうするんだッ⁉


男:消えろ、消えろ‼‼


女:獣人に生きてる価値なんてない‼ 死ねばいいのに


コ:こんなの、おかしいよッ‼


イ:これが……アイスちゃんが言ってた獣人に対する異常な拒絶……っ


コ:話せばきっとわかるのに……この調子じゃ絶対に無理だ……ッ


レ:落ち着けコクメ


コ:落ち着いてなんていられないよッ‼ 誰も悪くないのに、こんな仕打ちは……ッ


レ:コクメ。こうなった人間はもう無理・・


コ:……ッ


レ:とにかく、今はこの場から逃げ出すことを考えて――――


 キイイイイイイイイ――――ンンッ


 頭蓋骨を貫通するかのような甲高い鳴き声

 カツオノエボシの獣人だった

 再び目を覚ましたミツキが獣人へと変身したのだ


ゼ:み、みっちゃん……


カ:…………っ


 ミツキに意識の有無があるのか、確認する暇もなかった

 自身の倍の身丈のゼラを軽々と持ち上げ、カツオノエボシの獣人が逃走する


コ:み、ミツキちゃんがゼラさんを連れて……っ!


イ:追おうコーくんっ!


コ:うん、必ずボクたちの手で救い出そう。アイスちゃんの暴走を止めた時のように! 


レ:村の人たちとの話はそれからだな


 三人、村人に背を向け、走り出す



 ステージ3(E)へ


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