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ステージ2(B1)

 バッ!

 ガキンッ‼


コ:へえ、両腕の翼自体が君の武器なんだね!


カ:ジャア!


コ:まったく、カラスの仲間とは到底思えないよ!


 ギギンっ

 ギギギンッ!


コ:まっ、その凶暴な性格はカラスっぽいけどね!


カ:スウウ……


コ:……ん? 息を吸い込んだ?


カ:ビュオオオオッ‼


 カケスの体内から氷点下の暴風が生み出される

 自身のくちばしからつららが垂れるほどにだ


コ:ぬぐっ⁉ これはあのときの雪原よりよっぽどきついかも⁉


カ:ビュオオオオッ!


コ:とりあえず吹雪の範囲内から脱出する!


 バッ!


 自慢の跳躍力を駆使し、なんとか吹雪を免れる

 足首の調子はよさそうだ

 しかし、


コ:あれ? 吹雪がやんで――――


カ:ジャアッ!


コ:ぐう⁉ 急に切り替えてとびひざ蹴りとは容赦のないやつ!


 そこからはカケスの猛攻が続いた

 氷の膜を張った翼でコクメを鋭く切刻み

 距離が生まれると吹雪を噴出して逃げ場を奪っていく


コ:(こいつ、ボクの体力がなくなるのをじっと待ってる。これまで戦った獣人とは勝手が違うぞ……!)


 コクメの思考に一筋の焦りが生まれる

 けれど、手立てがないわけではない

 いや、むしろ

 コクメは口の端をつりあげた


コ:(今のやつは慢心・・している。攻撃がワンパターンなんだ。吹雪を発生させてボクが逃げ出したところを狙ってくる。そこでカウンターを決めれば……!)


カ:ビュオオオオッ!


コ:来た!


 猛烈な冷気がコクメを襲う

 彼はれた動きで攻撃の範囲内から脱出した


カ:ジャア!


 その瞬間を逃さず、カケスの獣人が接近する


コ:(――――ここだ……ッ‼)


 思考が冷える

 世界が止まったように見えた

 ゆっくりと迫りくるカケスに対して、


コ:もらったァ!


 刃を振るおうとするが

 一閃のヴィジョンが頭の中を駆け抜ける


コ:(――――っ)


 それは過去に倒した獣人たちの姿だった

 いいや、倒したなんて言い方は生ぬるい

 殺した

 命を奪った

 彼らの姿が脳裏に浮かぶ

 その言葉は蜃気楼のように揺らめいた


 彼らも同じ人間だということを


コ ――――くそ‼


カ:ジャア⁉


 ズビシャアっ


 コクメの刃は獣人の翼をかすめただけだった

 二枚の羽がゆらゆらと舞い散る


コ:まずい、外した!


 コクメは慌てて追撃を試みた

 それが失敗だった


 グギイ……っ


コ:~~~~~ッ! こんなときにかぎってええええ!


 ハイネに治してもらったはずの捻挫が再び

 一度捻挫をすればそれが癖になってしまうのだという


カ:ジャジャジャジャジャジャっ


コ:おまっ、笑うなこっちは死活問題なんじゃーい‼


カ:スウウウ……


コ:やばっ


カ:ペペペっ‼


 発射されたのは吹雪ではなかった

 鋭利な先端をしたつららが二本、弓矢のように飛んでくる


コ:ぬうううッ


 愛刀がすぐ近くに転がっているのに

 ぴくりとも動けない彼には手にすることができない


カ:ジャアアアアッ‼


 獲物をかりとった野生の雄叫びがあげられる

 実際、この戦いに勝利したのはカケスのほうだった


 ズシャリッ


 肉の裂ける音がする


コ:…………


 死を覚悟したコクメはぐっと目を閉じていた

 だが、想像したような痛みが襲ってくる気配はない

 むしろ、足首の痛みが和らいでいるような


コ:……?


 ゆっくりとまぶたをあげた


イ:もう、無理しちゃだめだよコーくん


コ:え、イッちゃん……?


イ:また足首痛めちゃったんでしょ。これは当分安静にしてないとね


 ハイネはいつものように微笑む

 彼女の翼につららが突き刺さっているのにも関わらず

 透明な液体が傷口から溢れている


コ:待ってイッちゃん‼ ボクなんかより自分の治療を先に!


イ:あはは……、そうしたいところなんだけど自分の傷は治せないんだよね


コ:それなのにボクのことをかばったの……?


イ:それよりもコーくんにね、お願いしたいことがあるの


コ:お願い?


イ:あの獣人を助けたい


コ:――――ッ


 この後に及んでまで、彼女は他人のことを想うのか

 翼の傷は決して軽いものではないのに


コ:…………どうやったら助けられる?


イ:これを獣人に刺してほしい


コ:これは注射器?


イ:この薬には獣人の力を抑え込む作用がある。あの獣人もきっと暴れたくて暴れているわけじゃない。病気の人みたいに苦しんでるだろうから


コ:…………


イ:だから、倒すんじゃなくて助けてあげたいの


コ:…………


 彼は返す言葉が見つからなかった

 彼女から預かった注射器を握りしめ、一言


コ:任せて


 獣人に向き直る


カ:ジャアアっ!


コ:君、苦しいんだね。そりゃそうだよね、気づけないボクがおかしい


 足首の調子はよくはない

 激しく動き回るのは不可能

 なら


コ:待ってて。今すぐ助けてみせるから


カ:ジャアー!


 ビュオオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ‼


 春をも凍てつく猛吹雪に見舞われる

 地面にはすでに数センチ程度の雪が積もっていた


コ:ぐ、うう……っ


 生命の存在を一切許さない絶対零度

 コクメの体力を着実に奪っていく

 けれど、しかし

 彼は一歩ずつ確実に踏み進めていく


カ:ジャ、ジャア……ッ‼


 その大きな翼をはばたかせ、暴風を生み出す

 一段と勢いを増す吹雪

 だが

 彼は決して進める足をとどめない


 ビュオオオオッ!


 ハイネは言った

 あの獣人はしんでいるのだろと

 吹雪が木の葉に重なり、水となり変わって滴る


 雫が地を濡らす


カ:ジャ、ジャア……


コ:――――っ


 カケスとコクメとの距離

 残り三メートル

 しびれを切らしたのか


 バッ‼


 カケスの獣人は吹雪を止め、


カ:ジャアー‼


 コクメとの距離を一気に詰めた

 対して、彼は、


コ:…………


 音を立てることもなく


 ――――とんっ


カ:……ジャ?


コ:……またせてごめんね


 カケスの懐に潜り込み、

 薬を注入した


カ:……あ……


 途端、カケスの獣人はその場に倒れ込み

 人の形へと戻っていく



 ステージ2(C)へ


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