十三人目の地獄
一日空きましたが、最新話です。
「テッペイ、起きろ。今から来てもらうところがある。早く準備しろ」
門の前で器用に立ったまま寝ているテッペイの背中を蹴りながら呼び掛ける。
「…っ!痛てぇな、誰だよ!…ってアリスさん⁉」
「いいから準備を早くしろと言っているんだ。」
しかし彼は状況を飲み込めていないらしく、
「…どこに行くんすか?」
などと抜かしていたので、仕方なく私は彼を引きずっていった。
××××
「ルリディア西部の廃墟?そこになんかあんのか?」
「そうみたいですね。アリスとルミアさん、ダルクさんも同行するみたいです」
アリスが準備をしているため、俺とテッペイは二人で待っている。
「おや?アリス君はいないのかね?」
ドアが開いた。多分探偵コンビが来たのだろう、と振り返ると、案の定ルミアさんとダルクさんが立っていた。
するとアリスも準備を終えたらしく、部屋の奥から姿を現す。
「やっと来たか。探偵コンビ。」
「ふん。廃墟に魔方陣とは興味深かったからね。」
「そうだ。今からそこに向かうぞ。」
すると急にテッペイが立ち上がり、
「ちょ、ちょっと待ってくれ。分隊16番の奴らに伝えてくる」
そう言って部屋を出て行った。
××××
階段を上がり、見慣れたドアを開ける。
「おい、猫。それとロイ。今から少しここを留守にするが、仕事はしっかりしておけよ?」
ロイと猫は仲良く新聞を読んでいた。
「あれ?隊長は今日出かける予定やないん?」
ロイがこちらに近づいてくる。
「丁度いい。ちょっと耳貸せ」
半ば強引に体を引っ張り、こそこそと話す。
「【十三人目の地獄】についてだ。よく聞け。」
それを聞くとロイの表情は険しくなった。
「もし…俺がいねぇときに、戦闘になったらの話だ。十三人目の地獄が現れないことを祈るが、もし現れちまったら…」
「絶対に奴が人を殺さないようにてめぇで制御しろ。いいな?」
こそこそ話のはずなのに、やけにはっきりと聞こえる。
「り、了解や。もっとも、そんなことがあらへんのが最善なんやけど…」
「よし。お前にかかってるからな。俺は出かけてくる」
そう言って、俺は「分隊16番」と彫られたドアを閉め、アリス達の方に向かった。
××××
アリスさんがご機嫌斜めだ。待たせちまったからか?
「遅いな。何をしていた?」
「分隊の奴らへの注意喚起だ。俺らが不在のときもしっかり働けってな。」
「ふむ…まぁいい。ならば出発しよう」
アリスさんが真っ先に立ち上がり、ドアの方に向かう。
全く、せっかちな所は昔から変わらねぇな。
××××
テッペイさんを見送った後、やたら不機嫌そうにほっぺを膨らませながらティアが問い詰めてくる。
「私を除け者にして何話してたの?教えてよ」
「別に何も。今日は留守にするらしいで」
「ふーん。」
あまり納得がいかないようだが、ティアは再び手元の新聞に目を落とす。
「んー、この猫可愛くない?」
「どれどれ?…お、ほんまやな。」
頼むから、今日は何も起こらないでくれよ…
××××
昼をやや過ぎた頃、城の中が慌ただしく動き始めた。
そして俺の嫌な予感は的中した。
「分隊16番!至急町の南部に向かってくれ。他の隊は既に到着している!」
ドアを破るような勢いで分隊長代理が駆け込んできた。
「どうしたんや⁉何かあったんか?」
分隊長代理は首を縦に振る。
「悪魔の襲撃だ。死人も出ている」
それを聞いたティアが、俺の袖を素早く掴み、転移魔法の詠唱をした。
止めるには、もう遅かった。
××××
一瞬のうちに視界が暗転した。
次に目に飛び込んできたのは、分隊、つまり仲間の、大量に積まれた死体だった。
凄惨だ。あまりにも酷い。あたりには血の臭いが充満している。
その中に一つ、手を真っ赤に染めた悪魔の姿を見ることができた。
奴はこちらに気づいたらしく、
「おや、殺し損ねたかな。まだ残っている」
と、こちらに殺意を放つ。
「ちっ…猫、一旦離れるぞ。奴は危険や」
しかし彼女は動かない。死体の山から目を離せないらしい。
奴はティアに向けて鋭い爪を向け、一気に距離を詰めてくる。
「…っ!…猫、手荒やけど堪忍な!」
俺は、ティアを突き飛ばし、奴の攻撃の範囲外に追い出した。
××××
私はロイに突き飛ばされ、尻餅をついた。
「いたた……⁉」
私がその時目にしたのは、右肩に穴を開けられ悶絶するロイの姿だった。
「…ロイ!」
足が震える。歩けない。
そんな私を見て、悪魔はこう言った。
「大丈夫です。貴方たちもすぐ、死体の山に積んであげますから。」
「…ぅあ…」
「貴方たちは、ここで死にますから。」
死ぬ。その言葉を聞いた瞬間、頭が痛くなる。
死ぬ。死んでしまう。嫌だ。死にたくない。嫌だ。嫌だ。嫌だ。死にたくない。
意識が遠のく。
そうだ、死なないためにはーーすればいいんだ…
××××
「…ティアには手を出すな!」
しかし悪魔の仮面のような顔からは表情を読み取れない。
「おやおや…お嬢さんは怖くて声も出ないみたいですよ?」
ティアは下を向いて何も喋らない。
「まぁ、いいでしょう。先に貴方を始末しましょう」
爪が首に迫る瞬間。
「あっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
とても長い嗤い声が響いた。俺と悪魔は一瞬呆気にとられる。
「あは、ははは、あははは…」
まだ、彼女は嗤う。
悪魔は不愉快に思ったのか手を止めた。
「何です?お嬢さん。うるさいったらありゃしない…」
彼女はくるりとこちらを向く。
「私を殺す?…それは無理よ。…私が、貴方をバラバラにしてあげるんだから…」
そう、もう彼女はティアではない。
【十三人目の地獄】が、そこに立っていた。
感想お待ちしております( *`ω´)




