追憶
では、テッペイの回想編です。( *`ω´)
「おい、シュルツ。貴様盗賊の自覚はあるのか?」
「盗みと人殺しは全く関係ねぇだろうが。」
「誰もそんなことは言っていない。証拠を消せと言っているだけだ。」
「殺す必要はねぇだろ?口を封じれば済む話だ」
「だからお前は甘いと言っている。いつか死ぬぞ?」
「はいはい、忠告どうも。」
俺には盗賊は向いていないのだろう。そんなことは百も承知だ。
こんな殺人狂が率いている盗賊団なぞこっちからお断りだっつーの。
「おい。シュルツ。お前の恋人の命は俺が握っていることを忘れたか?」
「…っ!てめぇ、あの村には手を出さねぇって言ってただろうが!」
机をつい強く殴ってしまった。硬い木の感触が骨を伝わって右手を痺れさせる。
「全く…お前を拾ってやったのは俺だ。あまり調子に乗るなよ?」
ああ、腹が立つ。こいつの名前一文字一文字に虫唾が走る。
「…ったく、次の仕事の話だろ?早く話せよ」
俺の向かいに座る殺人狂は涼しい顔で
「この近くの目障りな商人を襲ってこい。奴らは上等の毛皮を城に運ぶ途中だ。いいな?」
「はいはい、分かりましたよ」
乱暴に立ち上がり、部屋の扉を蹴破るように出て行く。殺人狂と同じ空気を吸ってるだけで気が狂いそうだ。
××××
「全く、またあんたは煙草吸ってんの?煙たいからやめなさいって言ってるでしょ?」
「あー、はいはい。明日からやめるっつーの。」
長い金髪を二つに纏めたこの女がシュバル=レッドリング=リンだ。
顔は綺麗なんだが、何しろ性格がきつい。
今思えば、よくいままで恋人として生活してこれたな、と自分を褒めてやりたい。
「テッペイは明日からって言って結局後回しにする悪い癖があるでしょ?今すぐ煙草をやめなさい」
「お前禁煙の辛さ知ってんのか?」
仕方なく、まだ半分も吸ってない煙草を握り潰す。
「じゃあ、これも没収しておくから。もう吸わないでよ」
リンが持っていたのは二箱の煙草だった。よく見ると俺のじゃねぇか。
「おい、いつ抜き取った?」
「あんたが椅子を取るために後ろ向いたでしょ?」
やられた。まさか一秒足らずで尻ポケットから抜き取られていやがった。
「お前、俺よりよっぽど盗賊に向いてるんじゃねぇか?」
するとリンは少し俯き、
「ねぇ、あんたやっぱり盗賊やめないの?バカじゃない?王国騎士団の方がよっぽど…」
「今は金に困ってんだよ。それに前科のある奴が騎士団なんてできるかよ」
リンの言葉を遮るように言い放つ。
「…私と、この村の為に嫌々盗賊やってるんでしょ?あんたの仲間が話してたわよ」
「……バーカ。お前には関係ない話だ。」
するとリンは少し泣きながら、
「何であんた一人で抱え込むの?バカじゃないの?何で相談してくれないの?」
「………次の仕事が終わったら、あの悪名高き盗賊団を抜けてやるさ。」
「…ほんとに?」
「ああ、当たり前だろうが。もしそん時は
……結婚するか」
××××
「ほらよ。毛皮と売り上げ金だ。これで文句ないだろ?約束通り俺は抜けるからな」
「ああ。ご苦労。ただ、もう一仕事頼みたい。」
「あぁ?」
「俺たちはそろそろこの村を離れて新たな拠点に移るつもりだ。分かるな?」
確かにこいつらが出て行けば安心して暮らすことができる。
リンとこれで暮らせる。
「だからな、証拠隠滅の為に…」
しかし殺人狂は言い放つ。
「あの村を燃やせ。いいな?」
それを聞いた瞬間、俺の堪忍袋の緒が切れた。
「ふざけんなよこの殺人狂がぁっ!」
奴の胸ぐらを掴む。しかしぴくりとも顔色を変えない。
「何故殺すんだよ、そんな必要ないだろうが!」
「決定事項だ。証拠は隠滅しておかなければならん」
意味が分からねぇ。
「何で…何でお前は簡単に人を殺せるんだよ…狂ってやがる…」
殺人狂はにたりと笑い、
「殺人に真っ当な理由をつけるのは流石に疲れるな。…楽しいからに決まってるだろ?」
まだ、まだ笑う。何が可笑しいんだ。
「……っ!」
殺人狂を掴んでいた手に力を込め、投げ飛ばす。
派手な音を立てて床に叩きつけられたはずなのにまだ高笑いを止めない。
「ククク…はははは、もう遅いな。」
事務所の扉を蹴破り、外に出る。いつもより力が入っていたのか、蝶番が弾け飛ぶ。
××××
走る。リンがいる所に。俺が生まれ育った村目指して走る。
もう疲れすら感じないくらい疲れた。足がもつれる。
「畜生…間に合え、間に合いやがれ…」
次の瞬間俺の目に飛び込んできたのは、
赤い村だった。
「あ…あぁ…」
「あぁ、テッペイさん。もう終わりましたよー。帰りましょう。」
知らねぇよ。認めねぇからな。
「ちょっと、テッペイさん!焼け死にますって!待ってください!」
無視してリンの家まで走る。
皮膚が焼ける香ばしい匂いがする。吐きそうだ。
なんとか原型を保っていたリンの家には、まだ新しい、血溜まりが入口に出来ていた。
しかも、その傷の主は移動したらしく、血がどこかに続いている。
「…まさか…な。」
走ってその血を辿る。点々と規則正しく落ちていた血痕がだんだんふらつき、ときおり血を吐いたのか生々しい血の跡が続いている。
「どれだけ…お前はしぶといんだよ…」
血の主はリンであって欲しい。でも、リンであって欲しくない。
もうすぐ森に差し掛かろうかというところで、血の主は木にもたれていた。
××××
「お…おい、リン。」
言葉が続かない。
リンは内臓が見えるのでは、というくらい腹を横に深く切り裂かれている。
「ば…バカ。何で来たのよ…」
喋る度に口から血を零す。
「も、もういい。喋んな。」
しかし無視してリンは喋る。
「私は…もうダメだから…二つだけ…テッペイにプレゼントがあるわ。」
リンが咳き込む。
「一つ目は…私の家に、おじいちゃんから伝わる…大事な剣があるの。……それを持って行って。あんたの役に立つから…」
最期の力を振り絞って続ける。
「二つ目は…これよ。テッペイ、今まで…ありがと…」
一つの煙草の箱を俺に渡すと、力なくリンは微笑み、崩れ落ちた。
「あ…あ、あぁああああぁあああぁっ!」
リンのまだ温かい身体を抱いて、喉から血が噴き出る程叫んだ。涙に血が混じる程泣いた。
リンから貰った煙草の箱には、
「どうしても禁煙がきつかったら開けろ」
と、血で殴り書きがしてあった。
すごく長くなりました( *`ω´)
感想お待ちしております。




