表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感情を知らない王女は、ヤンデレ魔導師に囲われる ――共依存の果てのしあわせ  作者: ゆにみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/20

19、少し、外に出てみようか

 「リシェル。……何をしていたんだ?」


 低く、押し殺した声。


 振り返ると、扉の向こうに立つルークの瞳が、まっすぐこちらを射抜いていた。


 金色の光が、ひどく冷たい。


 「それに……あいつの匂いがするんだけど」


 一歩。


 また一歩と、ゆっくり距離を詰めてくる。


 (……怒ってる)


 胸の奥がヒヤリとした。

 足が勝手に一歩さがる――けれどすぐに、その場に踏みとどまる。


 逃げたくない。

 だって、ルークだもの。


 「……あいつって、シリルのこと?」


 「――はっ」


 ルークの喉の奥から、乾いたような笑いが溢れた。


 「正体を明かしたのか。ずいぶん仲良くなったみたいだな」


 そのまま視線が突き刺さる。


 「で? 外に出た?」


 「ち、違うよ!」


 慌てて首を振る。


 「ちょっとだけ出ちゃったけど……魔法のせいって言ってたの! すぐ戻ったよ!」


 「……魔法?」


 「うん……“素直になる魔法”って。よくわからないけど……気づいたら外にいて、でもすぐ帰ってきたの」


 言いながら胸がちくりと痛む。

 それと同時に――迷いもなく告げた。


 「ルークと一緒にいることが、いちばんの幸せだから」


 その瞬間、ルークの呼吸が止まったように見えた。

 静寂が落ちる。


 「……でも、本当は」


 ぽつりと、落とされる声。


 「こんな場所に、閉じ込められていたくないんじゃないのか?」


 言葉は優しいのに、どこか痛い。

 けれど私は、すぐに首を振った。


 「ううん。ここはルークとの大事な家だよ」


 一歩、近づく。


 「外とか中とか、そんなの関係ないの」


 そして、まっすぐ見上げて笑った。


 「ルークがいるなら、どこでもいい」


 そう告げた瞬間。

 ルークの瞳に揺れていた影が溶けて消えた。


 そして、強く抱きしめられる。


 「……少し、外に出てみようか」


 「うん。ルークと一緒なら」


 答えた途端、身体がふわりと浮いた。


 気づけば、ルークに横抱きにされていて、開かれた窓から外の光が流れ込む。

 風が頬を撫で、ルークの腕の中で世界が反転する。


 魔法でゆっくりと空へ浮かび上がっていく。


 「う、うわぁ……きれい……」


 広がる青空。

 足元には色とりどりの花々。

 胸がふわっと軽くなって、息まで甘くなる。


 「たまに、こうして出かけようか」


 「うん。でも――」


 ぎゅっと、服を掴む。


 「ひとりじゃいやだよ? ルークと一緒だからね?」


 一瞬だけ、ルークが言葉を失った。


 それから、わずかに目を細める。


 「……ああ」


 その表情が、胸の奥をじんわりあたためる。


 「あそこがちょうど良さそうだ」


 ルークは、私を抱き抱えたままゆっくりと下がっていく。

 私たちは、花の丘へ降り立ち、一本の大きな木の根元に並んで腰掛けた。


 「……リシェル、嬉しそうだな」


 「ルークと一緒だからね」


 くすりと笑う。


 「それに……さっきの、ちょっと嬉しかったの」


 「……何がだ?」


 ルークが小首を傾げる。

 その仕草が妙にかわいくみえた。


 「だって……あんなに怒ってたのって、嫉妬でしょ? 」


 ルークの動きが、わずかに止まる。


 「私、ルークが大好きだから」


 まっすぐに告げると。


 「……俺も、リシェルが大好きだよ」


 その言葉で心臓が大きく跳ねる。

 でも、なんだか――ほんの少し、伝わっていない気がした。


 だから、ちゃんと伝える。


 「ねえ、ルーク」


 そっと、その手を取った。


 「私が言ってるのはね……」


 一度だけ息を吸う。


 「――恋をしてるって意味なんだよ?」


 言った瞬間、ルークの動きがぴたりと止まる。


 息の音すら聞こえなくなる。

 その沈黙が、余計に胸を熱くする。


 (い、言っちゃった……!)


 心臓がうるさすぎて、どうにかなりそうだった。

次回、最終話!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ