誘導、そして蛇
ペンダントに魔力を流して姿を拷問されていた方の刑法官に変える。
さすがに怪我まで再現はしていないが、
そして意を決して足を踏み出す。
ようやく踊り場から姿を現した刑法官に彼は声をかけてきた。
「あ、え? なんであなたが……?」
しかし彼の反応は予想していなかった物だった。
「(不正解かよっ!!)」
得意気に変更したというのに二分の一、もしくはもう片方の刑法官を入れて三分の二を外した。
そうして不正解の姿で現れてしまったことで門番が動揺している。
しかし姿を現してしまった以上はもう後戻りは出来ない。
「(今は応援を呼ばれないことが先決!)」
未だ動揺して固まっている彼の元を目指して石階段を早足で上がる。
すると意外にも門番はすぐに槍を構え、「止まれ!!」と静止を叫ぶ。
冷静さを欠き始めている門番の声に反応してか、『天眼』で動向確認をしているブライアンを連れて行った門番が足を止めた。
既に崖っぷちとなってしまったため致し方なく指示に従う。
「はぁ、はぁ……声を荒げてしまい申し訳ありません、刑法官様。ただ、上がって来る前に答えていただきたいのです。何故あなたがブライアンと下に居たのでしょうか?」
息を軽く整えた彼がゆっくりと疑念を口にする。
その質問はもっともであるが故に誤魔化す答えが見つからない。
物言いからして刑法官に敬意を抱いている様子だが、そんな刑法官がブライアンと一緒にいる理由……
「(ブライアンが言い訳していたみたいにボアアガロンのボスを見に行ったことにするしかないか)」
下手な理由を並べるよりも辻褄が合っていた方が良い。問題があるとすれば結局の所で声が高いため出せないことだ。
階下での時同様に子供の声帯では成人した男性声も女性声も似せられない。
「(せめてあと四、いや三段は階段を上がれていれば、声を上げられるよりも前に対処出来るんだけどな……どうにか自然に上へ行きたい)」
簡単な視線誘導ならまた氷で蛇でも作れば可能か。しかし相手から見られている状態で差し向けても不自然となってしまう。
……いっそのこと相手の方からこっちに近づいてもらえば対処出来る。
「(近づかせるなら血を流す方がより良いかもしれないな)」
頭の中で現状最適な方法を並べつつ、未だ答えようとしない俺から少しだけ視線を外させるために口元に指を持って行き、静かにするよう促す。
そしてすぐに上を指差す。
突然のジェスチャーに表情をさらに険しくした門番は、それでも目だけを動かせて一瞬上を確かめる。
その隙を逃さない。
『ウォーミル』と『水流操作』で残り少しの水を俺の死角に当たる場所へ移動させる。
それと同時に階段をさらに一段上がる。
「! 止ま──っ!?」
当然、こちらが明確な動きを見せれば視線は戻ってくる。
だからこそ俺の背後で蠢く氷の蛇の存在に気がつく。彼の視線が俺のやや左奥の方を向いているのが分かる。




