規則、そして捕縛
『天眼』で先に門番をしている人たちの様子を見に行く。
彼らは自分たちに近づいて来る階下から足音に気がついているらしく、武器を構えて下を警戒している。
その行動に違和感を感じ、上るのを止める。
対してそんな門番たちの様子を知ってか知らずか、ブライアンはなんの躊躇いもなく踊り場から彼らの前に顔を出した。
「なんでブライアン殿が下から来られるのですか?」
「前任からは下りたという報告は受けておりませんが?」
二人がブライアンを目視すると、その姿勢のまま質問を投げかけてきた。
「……どおした二人共。そこまで刺々しくしなくても良いやろ」
「誤魔化さずにお答えてください」
「何故下に居たのですか?」
「青のボアアガロンのボスがおった牢をもう一度見に行ってたんだ。資料だけじゃ分からないこともあるからな」
「あそこへは許可なしには近づけないはずです」
「各看守にもその旨を説明する義務があったと思いますが、それを行わなかったのは規則違反。異論がなければ容疑有りとして捕縛します」
ブライアンと親しくないのか、最下層にいた看守たちの様に勤勉に職務を全うしようとしている。
そんな彼らに薄い笑みを浮かべながらも困った表情をしているブライアンの反応から見ても想定外と分かる。
「(やっぱり途中で上るのを止めて正解だったな)」
階下を警戒していた看守たちの表情や雰囲気が鋭く、多少は事情を把握している者の様子ではない気がした。
だから曲がるのを躊躇ったが、嫌な正解を引いた。
「(どうするか。俺だけ別行動を取れる雰囲気でもない。そもそもブライアンを連れて行かれるのは困る)」
打破する方法としては、その前任を呼び出して無理矢理誤魔化すくらいだろうか?
しかし今の状況からその前任への確認を要請しても時間がかかる。そうなればまたしても脱獄騒ぎになる。
「(……方法がないとなると最悪ブライアンは諦めて俺だけでも戻る必要がある)」
選びたくない選択肢だが、最低限でもそれは取っていないといけない。
しかしより多くの情報がいるのにそれを逃すのは悔やまれる。
「……せやな。俺がちゃんとやってなかったんは悪かった。面倒かけて悪いが、手続き頼むわ」
対抗策を練る前にブライアンが降伏する。
両手を上げ、肩をすくめながらゆっくりと階段を上がって行く。
「……ずいぶんと素直ですね」
「手早くて良いです。では私が連れて行きます」
「お願いします」
彼の投降を訝しみながら門番の片方が階段を降りて、彼を縄で縛る。
そしてブライアンを連れて階段を上がって行く。
「(上、か……)」
俺も上に行かないといけないのに先に行かれるのは面倒だ。
それに門番が一人残っているのも厄介だ。反響は気をつけていれば大丈夫だろうけど、彼の目を掻い潜って上へ行くならどうしても音が出てしまう。
ある物はユキナの幻術をまとう魔道具とコップ半分程度の水だけ。




