最初の門番、そして時間
ブライアンが彼らと簡単な雑談を交わしている中でひとまずの指示通りにしているが、全く怪しまれている様子がない。
と言うよりもこちらに視線を合わせようとしていない気がする。
「この件が片づきましたら、時期にブライアンさんたちは撤収されるのでしたか?」
「せや。だからそれまでに筋力鍛錬の一覧表を作っておくから励むんやで」
「「はい!」」
彼は別れを惜しんでいる看守たちに激励を送ってから、敬礼をする二人の間を抜けて行く。
それに一足遅れて俺も着いて行く。
「……」
不意に悪戯心というか好奇心が湧き、すれ違う前に立ち止まって二人に視線を向けてみる。
しかし目を合わせようとはしない。まるで化け物を前にしたかの様に、敬礼は解かずに視線だけを別に向けて固まっている。
「おーい、早よぉ来い」
「!」
立ち止まっているこちらに催促の声が大きく響いて飛んでくる。
遊びを切り辞めて急足でブライアンの後を追う。そうして過ぎ去って行く俺を目だけで追っている二人を『天眼』で観察しながら、階段を上り始める。
「(──っ! ここの石階段の造り……)」
先程のブライアンからの催促でもしかしたらと感じていたが、実際に上り始めて理解した。
もうこの先、俺に時間がほとんどないことを──
「……」
しかし自分の状況が本当にそうなのかを確認するために意識を背後の彼らへと向ける。
特段怪しい動きをすることもなく、俺らが石造りの階段を上がって行くと二人はようやく敬礼を解いた。
その顔には緊張からか冷や汗と共に安堵の表情が浮かんでいる。
「(刑法官の話はブラフだったのか? それともまだ行動を起こさないだけなのか。はたまた、偶然見張りに入らなかったのか……)」
理由を模索しつつ階段を駆け上がっているとブライアンが声を潜めて話かけてくる。
「ここは結構声が響くから、なるべくしゃべらんようにな」
「……分かった」
納得したくない想いを胸に了承の返事をする。
その忠告のお陰で、先程の実感と推測が正解に近かったのだと内心で舌打ちをする。
牢への道すがらにしか質問が出来ない以上、本来ならこの場であっても矢継ぎ早に質問を浴びせたい。
しかし等間隔の見張りとここの洞窟の様に音が広がりやすい石階段によって阻まれ、質問をする時間が大きく削られた。
加えて──
「(次に質問が出来るのは、恐らく地下三階での移動時のみ。それ以外には他の看守や刑法官の協力者が居る可能性が高い)」
拷問された刑法官たちは協力者や魔道具でブライアンの動きや会話を把握したと言っていた。
しかしそれはあくまで、何故首長たちが室内で隠れて何かしていたのを知っていたか、について吐いただけだ。
「(情報が知りたいのだから、俺だったら首長の部屋だけに留めたりしない)」
──もしかしたら他の場所にも似た細工を施している。そう考える方が妥当。
ただ、いくら協力者が居るとはいえ、地下牢にまで同様のを用意するのは難しいだろう。
見張り場と内部の様子がはっきり分かる牢内に伝達用の魔道具を置いて隠し通すのは難しい。また、壁の中に埋めるのも痕跡が目立つため出来ない。
そう推定すると地下はある意味安全だろう。
しかし次の質問が出来る僅かな時間の中で、首長の権威を知るべきか迷う。
重要だが、それが最適解なのかを考える必要はある。
「(逆にそれまでは何も出来ないもどかしさもあるけど、まずはここから抜けるのが先だ)」
そうして方針を定めている間に次の看守たちが見張る四階層目まで来る。
誰が刑法官の協力者なのか分からない状態で、何をしてきたのかを悟られずに通過して行く。
もし運悪くバレれてしまえば全てが無意味となる。




