帰還、そして最初の質問
そして情報に嘘がないとすれば、ブライアンの拷問の理由は解消した。
例え彼がこのまま拷問を継続する、しないにしても約束は漕ぎ着けた。
「(ブライアンなら約束は守るだろうからひとまず安心だな)」
あとは首長への説得をがんばるだけ。簡単ではないが、このラストチャンスを逃す訳にはいかない。
ゲートを失ったのだからなおのこと後がない。
「これで訊きたいことは聞けた訳だけど、このあとはどうするつもりなんだ?」
「そうやなぁ。その紛れ込んでるやつは気になるな──そろそろ見張りが変わるはずだから、先に坊主を返す方にするわ」
「は? え、なんで今?」
「多分もう朝食の時間やから、さすがに坊主が居ないのは問題になる。すまん、俺が配分を誤った。急いで戻ろう」
「……分かった」
「モモ! 悪いけど、こいつら見張っててくれ!」
「承知しました。お気をつけて」
「おおきに。行くぞ坊主」
拷問を一時休止にしたブライアンに連れられて牢を出る。
「──っと、念のため持ってくか」
しかし途中で何かを思い出した彼は踵を返す。
そして刑法官に着けていたユキナのペンダントを回収して出てくる。
「着けといてくれ。やり方は分かっとるやろ」
「……ああ」
渡されたペンダントを着け、横で番人をしているモモ看守を観察しながら魔力を流す。
『天眼』に映る自分の姿はしっかりと彼女になっている。
その幻影先に困惑しているブライアンを無視して早く行こうと催促する。当人が何も言ってこない様子にブライアンも諦めたようで、階段の方へと向かう。
早朝前のため廊下を歩いていても牢内の囚人がこちらに目を向けてくることもない。見られて変な証言をされないのは好都合だ。
そして計らずして二人だけの時間を得られたので、聞けるだけ質問する。
「……なあ、冤罪ってどうやったら証明出来る」
「それを俺に聞くんか……」
当然ながら最初の質問に難色を示される。
「もう時間がないからな。訊けるうちに訊いておきたい」
「それでもやろ……今の状況やと難しぃな。証拠も証言も複数出とる。それに冤罪やとしても肝心の坊主が捕まっとらん以上は弁明は通らんな」
「捕まってない?」
「今の姿やと誰も坊主がキリサキなんて信じられん。俺も首長もドライアド殿から言われんかったら信じんかったわ」
「……それもそうか」
それでも返してくれた内容は納得せざるを得ない。
しかし指名手配中のキリサキではなく、情報にない子供の姿の俺だったから三階層に収容されたと考えられるし、監視も少なく拘束も大してされていなかった。
それに首長やブライアンと話す機会も得られた。
だから利点だったとしか考えていない。
今の話で現実を知らされたからと言って後悔するつもりはない。
「(三階だったからキリを助けに行けた。あのまま手が出せずにいたら殺されていただろうし、弁明が通り難いくらい問題ない)」
そこは揺るぎない事実だ。利点が最大限活きた以上悔やまれることなんてない。
「(そもそも俺の意思で子供になった訳じゃないから足掻きようもなかったけど)」
前提の変更が出来ない内容を考える必要もないので、すぐに次の質問へと思考を切り替える。




