飛び散り、そして尋問
加えて、痛みが込み上げてきたことと呼吸のし難さからか、刑法官が突然嘔吐する。
悲鳴軽減のために詰め込んだ布も一緒に吐き出された。
しかし栓が抜けてしまったためにその勢いで飛び散った雫が危うく服にかかりかけるが、寸前で身を引いて避ける。
「──ん、はぁはぁ……ぐぇっ……」
ひとしきり吐いて残りゲロも出し切った彼の顔は涙と鼻水、大量の汗、そして口の周りに嘔吐の残留物を貼りつけておりぐちゃぐちゃになっている。
すると大きく肩を揺らしている刑法官の髪をブライアンが無造作に掴み、無理矢理顔を上に上げさせる。
「さ、その調子で何やったんか全部言うてくれ。そしたらすぐ終わらしたるから」
「ゆ……して、く……許し……て」
「……」
先程までのブライアンとは違い、低く無機質の様なトーンで催促をする。
しかし刑法官が怯えて話にならない。その様子に埒が明かないなと考えていると、不意にブライアンが彼の顔を地面に叩きつける。
吐瀉物に向けて叩きつけたことで派手に飛び散る。今度は避け切れず、それが少しだけ服につく。
「(せっっっかく避けたのに……!!)」
借り物ではあるが、服が吐瀉物で汚れるのは不快極まる。
少量でも水があれば洗濯は出来る。そしてその水はある。しかし非常用の水のためこんな状況で使うのは控えたい。
「(……脱ぐか)」
地下のせいで寒いが、着続けていても不快なのですぐさま脱ぐ。
そしてもう一人の動けない刑法官から服を借りる。上だけ借りてもサイズが大きいのでコートの様に全身を覆える。
そんな俺を横目で見ながらブライアンは尋問を再開する。
「なあ、なんで首長の所でことが起こっとるって分かったか言うてくれや。もぉしゃべれるんやろ?」
「ぐぁっ……い、います……言いますか、ら、許じて、くだざい……!!」
声音は低いのに物言いは優しい分、そして今までのブライアンからは感じたことのない殺意に彼はあっさりと屈した。
しかしその圧はこっちまで委縮するものだったため英断だろう。拍子抜けではあるが。
そうして床から顔を上げることが叶った刑法官から真相が語られた。
方法は二つ。
一つは、内通者だ。階段に配置されている二人の看守の内、片方は必ず自分たちの息のかかった者を配置し、首長やブライアンなどの特定の人物の動きを報告させている。
もう一つは、魔道具による盗み聞きだ。首長の部屋の近くに聴力を強化する魔道具を身に着けた獣人を配置し、会話の盗聴後、議事録のまとめ報告させている。
「──これで全部だ」
「……嘘は言うてないな?」
全てを話し終えた刑法官に確認を取りながら牢の外にいる女看守の方を指差した。そんなブライアンの誘導に釣られた彼と俺は彼女の方を見る。
すると彼女が手にしている小刀の切っ先が刑法官の方へ向く。
こちらを一瞥もせずに周りを警戒しているというのに殺意と小刀はしっかりと彼を捕らえている。
「ひっ……?! ってない! 嘘なんて言ってない、です。はい!」
彼女の脅しによって刑法官も素直に返事をする。




