第七話 英雄譚
今現在の集団生活はイツキ達の英雄譚である。
この過酷な自然環境下で、独立して持続可能な人間集団を形成し、人類の生存域を拡大する。
それこそイツキ達が人生を捧げる夢物語なのだ。
現在地は遠く離れているが
数年に一度、この集団は本拠地ダンジョンに10日ほど滞在する。
この世界アメハシラで最も安全な場所こそ
人を襲う魔物が出現する、ダンジョン1層である。
かつての大都市部には高層ビルをも破壊できる幻獣型が出現する。
平野部では象や虎が魔獣と化した魔物が徘徊している。
山間部でも現在のような有り様である。
ダンジョン1層では位階1の低域層しか出現しない。
よってダンジョン1層こそ人類の揺りかごである。
ダンジョン1層の主産品は以下の通り。
『ひのきのぼう』
『きのたて』
『やくそう』
『そまつなパン』
『にかわ』
うさぎの肉
うさぎの毛皮
武器かつ木材!
防具かつ木材!
植物性の栄養!
主食!
動物性の栄養かつ壁画の素材!
動物性の栄養!
衣料!
あまりにも親切!
とてつもない優しさ!
戦闘と生存に必要な全てが完結するのである。
大きな危険が伴う移動も不要で
季節の影響を受けることもない!
シノブ達にとっては完全にイージーモードだ。
さらに2~3層ではドロップ品に
『つた』
『ねんど』
が加わる親切設計。
まさに揺りかご!
このダンジョン1層を『家』として人類は種をつなぎ、
ダンジョン浅層や、日帰りできる程度の範囲を地道に調査開拓し
生活の基盤として拡げてきた。
むろん調査開拓は未知の危険への冒険であり、
多くの人類が命を散らした歴史でもある。
イツキは15年前27歳で位階3に到達し
このダンジョンに依存せずに活動できる別集団を作る夢を掲げ
新天地に向けて踏み出したリーダーだ。
イツキ達が死してなお、シノブ達が自然環境下で集団を持続できるか否か…
日常生活そのものが、育成系スローライフ英雄譚なのだ。




