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第五話 イノシシ

タケノコ堀りの翌日である


「明日はイノシシ狩りだ」

イツキの指示で緊張が走る。

シノブの胸は期待に踊る。


「採取の痕跡に気付いて警戒しているだろう」

「明日ならまず間違いなく襲い掛かってくる」

「疲れとイラ立ちは今日がピークだろうな」

「出発時間は?」

「昨日より3時間遅く進発する」

「罠はいくつ仕掛けた?」

「即席で24」

「おおよその方角は掴んだな?」

「基点から成体6が東、幼体含む10が西だ」

「ならば東に向かう。後方の備えには私が出よう」


おぉ、明日はイツキとタマも一緒だ。ますます楽しみになってきた。


「シノブは回避と防御と見学に徹しろ。攻撃は許可しない」

「............了解」

「では明日に備えて休息だ。十分に休め」


散会となった。

拠点の周囲は針葉樹林であるため動物は少ないが

完全な安眠というわけにもいかない。


それぞれ木の洞や茂みなどの下に分かれ、

ウサギの毛皮を敷くなどして寝床を作り、休息を取る。

ムスヒの活用で疲労回復を強化するため問題はないが

シノブは時おり家屋や布団を懐かしく思い出してしまう。

前世記憶の弊害である。


翌日、竹林にて。


「原則として各群れから1頭だ」

「リーダー格は残し、凶暴性の高い個体を選別しろ」

「陣形は半円形、進行判断は先頭2名に一任」

「状況開始」


号令により展開する人員たち。


実に見事な光景で、シノブは心からほれぼれとする。

配置は

正面を12時として2名が突出し、

左方9時~10時半に3名

右方13時半~15時に3名

高度に連携された作戦行動とは......実に美しいものである。


「各員の位置と様子を常に把握しろ、真横から現れる場合もある」

「了解」


15分後


――来た。


方向は正面、さすが位階3の追跡精度は伊達ではない。

両翼の6名はそれぞれ3人1組で2枚の前後陣へ。

正面2名は突撃を躱して網を敷きながら後退。

前陣の援護投石の有効射程まで引き込んでいる。


網は捕獲ではなく、脚に絡みつかせることが目的である。

2mも引きずらせれば自然の植生にも引っかかって抵抗を生み、

バランスを一時的に崩させる。

転倒すれば儲けものであるが、

突進力を一時的に減衰させるだけで効果は十分だ。


動きが乱れているところに、

前陣の3名は拳大の石を時速140kmで投擲する。

投石のダメージは軽微だが、蜂に刺された程度には嫌そうだ。


そして、この状況に怯まずに闘志を燃やす目をした個体が一匹。

うん、今日の獲物はあいつだろう。


同時にイツキと後陣3名が後方を振り向いた。

一拍遅れて振り向くと母イノシシを先頭に1列縦隊で突進している。

シノブが3歩下がる間にイツキは10歩前へ。

タマは右方に展開する。


母イノシシに網を絡ませて減速させれば後続のウリ坊は玉突き事故だ。

最後尾の1匹へは横からタマ砲が炸裂した。


イツキは速やかに一匹を刺殺、母イノシシに威圧を与えて追い払った。

以上でイノシシ狩りは終了である。獲物は成体が1、幼体が2。

タマが手加減を間違えて一撃で仕留めてしまったが

概ね予定通りの戦果である。


なぜこんな集団戦闘を行っているかと言えば、

人間に対する警戒心を教え込むためだ。

数世代もかければ人間を簡単な獲物だと認識する群れも減るだろう。


余談であるが、位階2の投石担当に投球フォームを教えて

全力投石を試して貰った時は時速180kmほどだった。


流石に隙だらけで戦闘の役には立たない。

遊びとしては面白いと評判である。


位階3イツキによる全力投石はタマの元来の役目を粉砕した。

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