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第四話 たけのこ

今日は楽しみにしていた遠足だ。

初めてのタコノコ狩りである。

竹林の場所はこの拠点から片道3km

猪や猿に出会うこともあるらしい。



用意する装備は容量20ℓの小型竹籠に、石斧、石槍、植物網を数枚。

採取隊の6名は各々容量40ℓ~100ℓの竹籠を背負っている。

哨戒と戦闘を担当する二人は比較的身軽な装備だ。


細心の注意を払いながら移動すること1時間と少し。

目的地の竹林に到着した。


現着後はまず周辺一帯の状況確認を行う。

めったに無いとは聞くが、ここで熊の痕跡でも見つかろうものなら即時撤退である。


「シノブ、どう見る?」

「3匹以上の猿が1、8匹以上の猪が1、5匹以上の猪が1」

「概ねよいだろう」

「猿は5だな」

「10匹の群れは幼体も多い」

「最大の脅威は6匹の猪だ」

「6匹は割と近い。遭遇しそうだな」

「楽しそうじゃないか、シノブ」

「そりゃぁもう」


なにせ生きた猪と対峙するのは未体験である。

猪――位階2の魔物生物。

成体の標準体重150kg、最高時速60km

避ければ良いとはいえ、突撃の威力はタマより遥かに上だ。

毛皮は固く、耐久力、持続力も高いため

直接戦闘力では位階2の中でも上位である。


対応策は突撃を躱しざまに植物網を進路上に設置、

脚に絡ませて機動力を削ぐことが初心者向けの戦術だ。


「頑強のムスヒは補助しておく」

「補助切れの状態で不意打ちを受ければ死ぬ。油断はするな」

「うん、ありがとう」


ムスヒはこの世界での魔法だが

物理現象としては全く影響を及ぼさず

生体に備わる機能にのみ作用する。

筋力、脳力、感覚、消化吸収、呼吸、治癒などだ。


地水火風光闇の属性といった、前世のゲーム知識はゴミである。

逆に狩猟採集生活をしている現世人から生命科学を教え込まれている。


触れれば他者に対しても発動するが、生命活動を阻害するような内容には抵抗力が強く働く。

操作する生命活動について、相手の認識が浅ければ大きな効果も発揮できない。

端的に言うと攻撃やデバフのムスヒを創出するより、強化した筋力で石を投げた方が確実に強い。


もちろんタマを家族にした際も、精神を操作したりはしていない。

愛である。



それはともかくとして猪......いや、タケノコ狩りだ。


周囲一帯への索敵探知を最優先にしつつ、タケノコを採っていく。

土を盛り上げる程度に頭を出し始めた違和感を探るのは、

純粋な視力より、脳内の認識処理力を高めろと指南される。

この世界で『気を付けろ』は具体的な詳細指示を伴うのである。


竹細工や棒に加工するため、成長した竹も伐採を行っていき......

「よし、今日はここまでだな」


猪とは出会えなかった。


猪とは出会えなかった。


少し残念である。2度繰り返すほどには残念である。



帰路は採取物を満載しているため、往路より難しい。

痕跡を消せる場所では消し、消せない場所では往路と同じ足跡を踏む。


当然、足跡の向きを変えないよう後ろ向きである。


9人の往復で残す足跡は往路の1人分だけだ。

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