第三話 タマ
移動先の拠点に合流した。
シノブのそばで休んでいるのは、タマだ。
イツキが家族にした、うさぎである。
やはりうさぎを撫でるのは心地が良い。
なんでも転生者が『銃と弾丸』という概念を話した際に
『自動追尾』という発想が興味を引いたイツキが
うさぎの頭突きを利用しようと考えたらしい。
うさぎのタマ(弾)だ。
まずは正面から抱き止め、
大きな抱擁力で身を包み込んでから、解放する。
すると死の恐怖に襲われたうさぎは逃げ出すので、
追い付いて再び愛の抱擁を与える。
気持ちが伝わるまで繰り返す。
そうして家族にした、とのことだ。
目を離した隙にいなくなることも、何度かあって。
ちゃんと連れ戻しに行ってあげたらしい。
イツキは優しいなぁ。
野生のうさぎは明らかに強い生物へ、無暗に突撃するほど愚物ではない。
どうやら人間だけステータス補正が外見に反映されにくく、
人間=狩れる対象と認識されている事情がある。
当初のタマも、狐・狼・猪への突撃は嫌がったようだが、
イツキの愛により、躊躇なく突撃する気合と根性を習得している。
そのため、タマは野生には存在しない、位階2のうさぎとなった。
この世界アメハシラでは位階が上昇すると生命としての強度が跳ね上がる。
タマは位階2となって以降、日に日に劇的な成長を遂げて
フレミッシュジャイアントをも上回るサイズへ大型化した。
後ろ脚まで伸ばした全長1.5m 体重25kg 最高速度110km
一撃離脱、牽制、挟み撃ちなどの戦術を駆使する
イツキと深い絆で結ばれた相棒が、タマだ。
レベル3ともなれば、うさぎの捕獲は難しくないようだが
『育てるのに要する時間を鍛錬に充てた方が強くなれる』ということで
タマは弾丸ではなく、保育サポートを主な役割とされている。
8歳相当の知能を有しており、発声は出来ないものの、聞き取りは完璧で記憶力も良い。
何よりも幼児の面倒見がよく、体重25kgくらいは背中に乗せてくれたりもする。
ちょうど、6歳のタケルが遊ぼうとタマのもとにやってきた。
「いけー!たま!」
と素早く跨っている。
タマは手加減も良く分かっているので
遊び相手がタケルなら時速45km程度で跳ぶ。
遊びは限界を引き延ばして成長するのが最も楽しい。
なお子供騎乗時の最高速度は時速55kmほどで、
「もっと早くだ!」
とシノブが言い続けたときに最速をマークした。
タマの全力でも、子供を乗せてそれ以上は出せなかった。
幼少期に限界を超えて疲労したときや、大けがをしたときなどは、
タマの背中で寝て癒されていたものだ。
寝具にはうさぎの毛皮を使っているが、あの寝心地は今でも思い出す。
もしシノブがうさぎを家族にしたら、名前はおそらくマクラとなるだろう。




