第五十三話 まく美の過去
私は梶原音。今からまく美さんの過去を聞かせてもらうところだ!
「ユーキくんも聞いて」
「あぁ……」
まく美ちゃんはユーキくんにも聞いて欲しいようだ。
ユーキくんはパソコンでの作業を止め、まく美ちゃんのとなりに座る。
「――私がユーキくんのことを好きになったのは10歳の頃なの」
まく美ちゃんは話し出した。ユーキくんは「え……」と少し驚いている。
……知らなかったんだろうか?
「ちょうどその頃に私はお父さんに無理矢理、ヤられていたの」
10歳の頃から、性的暴行を受けていたの!?
……嫁候補の筆頭? の水野未来さんからそのことは聞いていたけど……そんなに早かったんだ……
でもまく美ちゃんは落ち着いて話してくれる。
――正直、思い出すだけでもしんどいと思うけどな……
「死にたいぐらい辛かったけど、たまたまテレビでユーキくんを見つけたの。『10歳の少年、小説家デビュー』って特集だった」
「ユーキくんが探偵少女fの小説を発表したんだね」
私は相槌を打つ。そのニュースはさいたま市うなぎ区では知らない人はいないだろう。
「そう! 私はその特集で、ユーキくんに一目惚れしたの! 『がんばれば小説を買ってやる』ってお父さんに言われたから私は頑張った……いや頑張れたんだと思う」
「うん」
……どう頑張ったかは聞かないし聞きたくない。
きっと、私の想像を超えることだと思う。
まく美ちゃんはさらに続ける。
「どんなに嫌なことがあっても、ユーキくんのことを思って乗り切った。12歳の頃にスマホを買ってもらえて、私はユーキくんと同じように物語を作りたいと思った。……そうすれば見つけてくれるかもしれないから」
「それで、ユーキくんの作品の二次創作をネットにあげたんだね」
私はまく美ちゃんのことについて調べたのでこのくらいはわかる。
「そうだよ。でも、私を絶望させる出来事が15の時に起こったんだよ……」
まく美ちゃんの顔が曇る。
「な、何があったの!?」
私はびっくりして、大きな声で聞いてしまう。
まく美ちゃんはゆっくりと話し出した。
「15歳の時に 、子供が産めない体になっちゃったの」
私の顔は引きつる。そして何も言えない。
まく美ちゃんはさらに続ける。
「ユーキくんの子供を産むことを目標にして今まで生きてきたのに! だから、私は住んでいたマンションの屋上に向かったの! 飛び降りて死ぬために!」
今まで落ち着いた様子と違い、まく美ちゃんは感情を爆発させる!
でも、少し間を空けて、今度は満面の笑みでこう言った。
「……でもその時ユーキくんが助けに来てくれたの。だから、私はまだ生きているの」
……そりゃユーキくんのことが大好きなわけだ。
***
「ユーキくんはその時、まく美ちゃんのことを知っていたの?」
私はなーんにも話に入ってこないユーキくんに話を振る。
「まく美のことは知ってたよ。SNSでよくメッセージくれてたからね。でも、あの日。まく美を助けることができたのは『神の声』のおかげなんだ」
「ごめんなさい……言ってる意味がよくわからないんだけど……」
私は素直に聞く。
「ああ。わからないよね。音さんには、言ってないもんね。実は俺のお母さんは『神の声』が聞こえるんだ。それに従って屋上に行ったんだよ」
「えぇ……もっとわけがわからないよ」
私は困惑を隠せない。
「音ちゃんに会いに行ったのもお母さんの『神の声』なんだって。ふふふっ不思議だよね」
まく美さんはからかうように笑う。私は全く笑えず「そうなんだ……」と言うしかなかった……
まく美さんはさらに続ける。
「でもね、私を救ってくれたのは、『神の声』なんかじゃなくてユーキくんなの。これから詳しく話すね」
「うん」
とりあえず今はこの話を聞こう。めちゃくちゃ気になるし!
「私は屋上に行ったけれど、高い柵があって飛び降れなかったの。絶望して泣き叫んでいた私にユーキくんは突然現れてこう言ったの!」
まく美ちゃんは話し出すとボルテージがだんだん上がっていく!
「『君は創作の才能がある! 君のことは一生食わせるから僕に着いて来てくれないか!』ってね! これを聞いて私は死ぬ気がなくなったの!」
そして最高にボルテージが上がったまく美ちゃんはユーキくんを見つめながら、嬉しそうに語った!
――その表情は、私には言葉にできない。愛してる、男の子を見つめる女の子ってこんな表情をするんだ……
あえて、言葉にするなら、の恍惚の眼差しを向けている。かな?
「でもね、大好きなユーキくんにも悪いところがあるの! 音ちゃん聞いてくれる?」
今度は、私の方向いてまく美ちゃんは話し出す。私は「いいよ」と一言だけ返す。
「なんでユーキくんには、複数の恋人がいるの? おかしくない? 今は私も含めて4人いるのよ! 音ちゃんも入るんだから、5人になるよ! ユーキくんなんで1人を選ばないの!?」
「うーん……選ばなきゃいけないと思ってるんだけどね……選べないんだよね……」
ユーキくんは答えを濁す!
……なんで、もう私も入ってることになってるの?
私、まだそんな覚悟できてないんだけど……
「あと、なんでこんなボロアパートに住んでるの? お金はあるんでしょ?」
「君を買った時に使ったって言ったでしょ!」
「それでも『タクローロード』のお金はあるじゃない! 私が頑張って作画したのに! なんでなの?」
「それもお母さんが『神の声』でダメだって言うんだよ仕方ないじゃないか!」
「またお母さんの言う通りにやってるの? もう15歳なんだから別にいいじゃない?」
痴話げんかが始まってしまった……
どうしよう……止めないと!
「2人とも! とにかく! 今やるべきことをやろうよ! 私もBGMのアイディア浮かんだから! ね?」
2人ははっとして、朗読動画を撮る準備に取りかかった。
……アイディアが浮かんだの本当だ。まく美さんの話を聞いたから、良いものができる気がする!
私はその日の夕方までにBGMを書き上げた。まく美ちゃんのOKも出た!
正直、手応えはある!
――もしかしたらお母さんにも私の夢を認めてもらえるかもしれない――
ガイドラインを確認したら、この表現なら、「過激な表現あり」と「残酷描写あり」には引っかからないと思ったので、設定しませんでした。怒られたら設定します。これはジェミニのアドバイスを初めて僕が無視しました。
次回の更新は、水曜日の20時です。
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