第五十二話 梶原音の悩み 作曲編
私は梶原音。弱視で視力が0.1以下。矯正もできない。
でも、私には音楽の才能があると思う。
YouTubeでのピアノの弾き語りの動画を出したら、1000回は再生される。
だから私は音楽の道に進みたい。だけどお母さんに反対されている……
でもお母さんには、
「埼玉県立ぽてと視覚特別支援学校の高等部専攻科に進学しろ!」
と強く言われている……
お母さんは私に安定した道に進んで欲しいのだ。
でも、その気持ちもわかる。
だから、お母さんを納得させるには、何か実績がいる。
その実績を作るために今準備をしている!
***
私は、次の休みも芹沢勇気くんの家にまでやってきている。
遊びに来たわけじゃない。「小説家になれる」で投稿され話題になっている「ひなげしの花」の朗読動画を撮るためだ。
その動画のBGMを作るのが、私の仕事だ。もちろん準備してある!
「まく美ちゃん! この曲どう? 私はいいと思うんだけど……」
まく美さんは「うーん……」「どうなんだろう……」とうなりながら何回も曲を聞いてくれた。
「音ちゃん。確かにこの曲はいいよ。いいんだけど……」
まく美さんの表情は良くない。
「だめなとこはね、はっきり言って!」
私がこう強く言うとまく美さんはゆっくりと話出す。
「少し……きれいすぎるかな……『ひなげしの花』はコメディもある作品だから、もっと……なんというか……」
まく美さんは少し考えたあと、こう付け加えた。
「方向性は、このままで、もうちょっとバカっぽい音楽を作って欲しい」
まっすぐ私の目を見て、要望を伝えてくれる。
確かに、私の曲は優等生すぎるのかもしれない……
「少し……考える時間をちょうだい……」
今は、午前中。夕方には帰らないといけないが、まだ時間はある。
何とか今日中に間に合わせたい!
***
――そんな時に未来からやって来た同級生? の林修くんからロインで電話がかかってきた!
なんでだろう? 未来の情報で私の行動を予想しているのかな!?
「はい。なんですか? 林さん。私は忙しいんですが……」
私は横着な態度で電話に出る。
「知ってるよ。今は朗読動画を作ってるんだよね?」
「一体なぜそれを!?」
やっぱり未来の私の行動を知っているの!?
「いや、とある情報筋から調べたんだよ!」
林さんはあっけらかんと言い切る!
……そういうことか。ユーキくんから聞いたのかな?
「音ちゃん。今困ってるんじゃない? 僕なら力になれると思うよ。ちょっと話してもいい?」
「はい……良いですよ」
困っているのは本当なので聞いてみよう。
「音ちゃん。『ひなげしの花』の主人公の女の子『ルリ』ちゃんって明らかにまく美さん自身がモデルじゃないかな?」
「そ、そうかもしれません……!」
「ルリ」は少しぽっちゃりした女の子って設定だった!
林さんはさらに続ける。
「それに、ヒーローの『ユウマ』はユーキがモデルじゃないかな? これは推測だけど。」
「た、確かに……」
「ユウマ」の設定は背が高い王子様だった。ユーキくんもすごく背が高い。もしかして……いや! きっとそうだ!
「林さんありがとうございます! すごく参考になりました!」
私は素直に感謝の気持ちを伝える!
「別にいいよ〜。これで音ちゃんと僕は友達だね?」
「いえ。友達ではありません! 電話切りますね」
私はきっぱり断る!
電話を切るときに「なんでなの〜」と悲痛な叫びが聞こえたような気がしたが、気にしてる場合じゃない!
***
「え!? 私とユーキくんの馴れ初めを聞かせて欲しい?」
「ひなげしの花」の主人公2人のモデルは、まく美ちゃんとまく美ちゃんから見えてるユーキくんだと確信した私は、初めて人生で初めて取材をすることにした。
……まく美ちゃんの話を聞く必要がある!
「わかった。でも音ちゃん……そんな素敵な話じゃないけどいいの?」
「もちろん! 必要なことだから!」
私は少し戸惑っているまく美ちゃんに、強い言葉で話してくれるように、求めた。
それに私も中学生女子だ。恋バナを聞いてみたい!
私はまだ恋をしていないからね。
……そういえば、私も未来にユーキくんの嫁の1人になるらしいけど、本当かな?
まく美ちゃんは私をまっすぐ見つめて、こう話し始めた。
「ユーキくんは、私の王子様。ユーキくんがいなかったら、私、死んでるよ」
次回はまく美さんの過去の話です。一話で終わります。
次回の更新は、日曜日の20時です。
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