第十三話 李承美の再生 前編
僕、李承燁と未来からやってきた僕の友達だと主張する少年。
林修くんはリビングの四人掛けのイスに向かい合って座って妹の李承美を待っている。
ただ待っているのは気まずいので林くんと話してみる。
「林くん。僕は未来ではどんなサッカー選手になるんですか?」
「スンヨプは十七歳でJ2のすごく弱いクラブでプロになるんだよー! しばらくそのクラブでプレーした後にJ1の強いクラブに入るんだよ! そしてそのクラブの顔にあるんだよ! すごいでしょ!」
林くんは笑顔で語る。
スポーツの世界はプロになるだけでも大したものだが、僕はそこまで出来るのかな? あれ? そういえば……
「あの……林くん。僕はロンドンのクラブで林くんといっしょにプレーするんですよね?」
確かさっきそう言ってたはずだ。修くんは笑顔のまま答えてくれる。
「それがさぁ、レギュラーのボランチが急に移籍しちゃってさ。それでスンヨプに白羽の矢がたったんだよ。完全移籍じゃなくて短いレンタル移籍でロンドンに来てくれたんだよ! あれは助かったよ!」
なるほど、合点がいった。そういう事はプロサッカーの世界ではよくある事だ。
「僕はロンドンでは活躍しましたか?」
林くんはうーんとうなり、少ししてから答えた。
「まあまあ活躍したかなぁ。スンヨプって敵チームにいたら嫌な選手なんだけど味方にすると頼りない。使いづらい選手なんだよ。ボランチなのにミドルシュートめちゃくちゃ下手だし、守備でも足引っ張るしさぁ。もちろんパスは上手かったからそこでは通用してたんだけど……」
「え? 僕そんな選手になっちゃうんですか?」
今の僕は守備も攻撃もなんでも出来るボランチなんだけど……
「後から思ったんだけど、スンヨプは十七でプロになるべきじゃなかったと思うんだよね。その時はフィジカルで通用してなかったから、現代ではもうちょっと体を作ってからプロになった方がいいかもね」
「わかりました。頭に入れておきます」
「本当に頼むよ〜まじでミドルシュート練習してよ〜キャリアで一本は入れてよね!」
「はぁ……そこまでなんですか……」
ミドルシュートが決まれないボランチなんてプロで長年やれるのだろうか? 今は決めているのだが……
話していたらスンミが部屋から出てきてリビングにやってきた。
未来での僕の事も気になるがそれはまた今度になりそうだ。
服装はトップスがアイボリーのブラウスに黒のフレアスカート。
ばっちりメイクも決めている。デートに行くようなコーデだ。
「初めまして! 僕は林修! 未来からやってきた君の友達だよ! スンミちゃんはやっぱりかわいいね!」
「そ、そうですか! 嬉しいです」
スンミは照れ臭そうに喜んでる。スンミの喜ぶ姿を見て僕も嬉しくなる。
スンミは兄の自分が言うのも何だが、他の中学生の子と比べてもかわいいと思う。
スンミは僕のとなりのイスに座る。林くん。頼みますよ!
***
スンミは、少し緊張しているようだ。林くんとは初めましてだし仕方ないだろう。
まず林くんが話し始める。
「スンミちゃんは未来ではみやほんのパートナーになるんだよ!」
「えっ!私は宮本さんと結婚するんですかぁ?」
「いや、それが事実婚でさぁー! 籍は入れてないんだけど、いっしょに暮らして子供も出来るんだよ!」
親友の宮本茂雄と事実婚してくれれば僕は安心だが……
「でも、宮本さんモテるじゃないですか……林さん。私なんかとパートナーになってくれるでしょうか?」
スンミは自信無さげに言う。
「そんなに謙遜しなくてもいいんだよ! 僕はスンミちゃんが素敵な女性だと知っているからね! 多分、みやほんも親友の妹。スンミちゃんの事を大切に思っていると思うよ」
「そうなのかな……」
ちょっと会話が途切れた時に林くんがスンミに語りかける。
「だってみやほんは部屋から出ないスンミちゃんに会いにきてくれたんでしょ? 親友の妹とはいえ嫌いな子にわざわざ会いにこないよね? それがみやほんが君の事を大切に思っている証拠だよ」
「そ、そうかもしれませんね……」
少し場が温まった。林くんが切り出す。
「スンミちゃん。なんで学校に行けなくなっちゃったの? 僕に出来る事ならなんでもするからさ。理由を教えてよ」
スンミは「えっと……」と呟き黙ってしまう。ここは僕も助け船を出すか。
「スンミ。その林くんは金本くんの悩みを解決してくれたそうですよ。話してみたらどうですか?」
「そうだよ! ここにはお父さんもお母さんもいないよ。何でも話してよ!」
林くんもさらに一押しする。するとスンミが話し始めた。
「林さん。私たち家族は在日コリアンって事は知ってますよね? 実は同じクラスの子に『国に帰れ!』と言われたんです。私……それに何も言い返せなくて……こう言う時は何て言い返せばいいんですか?」
そんな事があったのか!? 僕も初耳だ! 僕は怒りを抑えて林くんの回答を待つ。
林くんは少し考えてこう言った。
「『帰りたくても帰る飛行機が出でません』って言い返せばいいんじゃない?」
「えっ! ふふっ」
まさかのジョークで言い返すやり方にスンミは笑う。僕も少し吹き出してしまった。
「林くん。面白い言い返し方ですね! そうだスンミ!『船も出てません』って言い返すのもいいかもしれませんよ!」
僕も乗っかり、三人で笑う!
「林さん!じゃあ! 韓国に帰れ! って言われたどうするの?」
スンミも乗ってきた!
「そういう時は、『帰りたかったけど、言われたら帰りたくなくなったなー』って返せばいいよ!」
「ふふふっ! その手があったか!」
スンミは軽口を言い朗らかに笑う。僕は林くんとアイコンタクトを交わしいっしょに笑い合う。
もうスンミは緊張していないようだ!
在日コリアンの方を差別する意図はありません。李承美ってキレイなので悪口を言われたのだと思います。
「まくおが韓国の方や在日コリアンの人ついて思うこと」という記事を活動報告に載せて置くので読んでみてください。
「帰りたくなくなったな〜」というジョークはパクユソンさんのYouTubeチャンネルを参考にさせていただきました。
「飛行機が出てません」の方は自分で考えました。
次回は明日7時に更新します。スンミちゃんの後編です。
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