婚約者の幼馴染があんまりにもウザいのでまとめて贄にしちゃうお話
「カイ様、どうかお待ちください!」
「…冷たい女だな。メアリーは病弱なんだ。俺がそばにいてやらないといけないんだよ」
「でも、この間もそんなこと言って…」
「嫉妬は見苦しいぞ」
「…そんなっ!」
婚約者の心無い物言いに、私は絶望した。
「マリー。俺はお前と婚約しているが、幼馴染との交流まで制限される謂れはない。不満があるなら、婚約の白紙化でも実家で直談判して勝ち取るんだな。その方が俺も助かる」
そんな言い方は酷い、結婚とは家同士の約束。
私一人の一存で白紙化までできるものじゃない。
どうしてこの人はここまで私を蔑ろにするのだろう。
「…とにかく俺は、メアリーが待っているから帰る。お前も気をつけて帰れよ」
去っていく彼。
今まで感じていた嫉妬は、その背中を見て何故かすっと引いていく。
その代わり、別の怒りが込み上げてきた。
今日の出来事を、幼馴染に報告という体で愚痴る。
幼馴染は黙って聞いてくれて、労ってくれた。
私はそれにさらに甘える。
「このままじゃ、頭に血が上って倒れてしまいそうだから何かストレス発散できない?」
「へー、じゃあ大人の嗜みでも今更だがしてみるか?」
「大人の嗜み?」
「カジノ」
「国営のところなら行きたい!」
カジノに誘われたのは予想外だが、今まで少し生真面目に生きすぎていた私には良い刺激かもしれない。
「じゃあ、国営のところに行こうぜ。良いところ知ってるんだ」
「やっぱりピートに相談してよかった」
「ふふん、じゃあ有り金持って行こうぜ」
幼馴染に招かれて、国営のカジノで遊ぶ。
すると、びっくりするほどビギナーズラックが発動した。
お小遣い全額をつぎ込んだ結果、持っていたお小遣いが十倍になった。
怖い。
「おー、やったじゃん。それだけあれば貧乏貴族から領地と爵位買えるんじゃねーの?」
「そのくらいの金額にはなったわね…」
「…なあ。もしアレなら、本気で婚約者とその幼馴染ちゃんを黒龍様に捧げさせて貰えば?それだけの金があれば自立できるんだし、お前のご両親だって止めないんじゃねーの?無実なら潔白も証明されて婚約者と幼馴染ちゃんはハッピーエンド。お前のご両親や相手のご家族にだってお前がどう思ってるかそれなりに理解してもらえるだろうし、どっちにしろ婚約は無くなるだろ。もし喰べられても、相手のご家族は何も言えない制度だし」
「それは…」
我が国には生贄制度がある。他国の人間には、なんてことをするのかと言う人もいる。けれど、我が国はその生贄制度で栄えてきた。そのおかげでみんな飢えずに済むのだ。
黒龍様の好む『魂の穢れた者』を毎月数人捧げるだけで、黒龍様のお力で不毛の大地であったこの国でも沢山の農作物が実るようになった。
罪人なんて国中探せば毎月幾人も見つかるので生贄探しにも困らない。特に、公には裁けないが罪を重ねたワケあり貴族の断罪にはぴったりだ。
一応、表向きには国の為に身を捧げた尊い命とされるので残された者たちにとってはむしろ名誉となる。残された者たちに金銭の報酬もある。アフターケアもばっちりだ。王族や貴族は生贄制度の真実を知っているから、影では色々言われるが。
しかも、冤罪だった場合黒龍様の好む『魂の穢れた者』判定から外れるので食べられない。むしろ身の潔白を証明して生還できる。
「それで、今回稼いだお金で爵位と領地を貧乏貴族から買って独立したらいいよ。もし婚約者と幼馴染ちゃんの潔白が証明されても、そのお金があれば婚約破棄の賠償金だって払えるだろ。それでも爵位と領地は買えるだけの金だし。それでその暁には…俺を侍従として雇ってみない?」
彼の言葉に、なにか強い意志を感じる。
「…貴方はそれでいいの?なんでそこまで助言してくれるの?侍従って本気?」
「それでいいよ。だって俺お前に片想いしてたんだもん。侍従になればずっと一緒にいれるだろ」
「…」
なんてことだ、全然気づいてなかった。
「婚約を申し込むのでも良いけど…お前、あんなクソ男でも本気で愛していたじゃん」
「…うん」
やっぱり、私の一番の理解者はピートだ。
「だからさ、ただ…そばにいさせてくれればいい」
「本当にそれでいいの?私多分結果がどちらに転んでもしばらくは立ち直れないことになると思うけど」
「そんなお前と一緒に居たいんだよ。支えてやりたい。どうせ貴族の三男なんて、暇なんだし。むしろ手に職つくし、楽しそうじゃん?」
「ありがとう」
「おう」
私達はカジノを出ると、早速私の独立に向けての準備と二人を贄に捧げる準備に向けて動き出した。
そして私は、カイ様とメアリー様を贄に捧げてもらえるよう両親に交渉した。
両親にはカイ様のこれまでの態度を説明して、これ以上はお互いのためにならないのだと訴えた。
そして、黒龍様に捧げないと我慢ならないほど怒りが溜まっていることも伝えた。
ピートは私をカジノに連れ込んで、ビギナーズラックで大金を稼いだことを両親に伝えてくれた。
それを横で聞いていた我が家の跡取りで両親に溺愛されている弟が、独立できるくらいなら別に好きにして良いでしょと援護してくれて…両親も折れた。
「ということで、貴方たちは贄になっていただきます」
「な…」
「やましいことがなければ食べられたりしないのでご安心ください」
私がそう言うと、カイ様もメアリー様も真っ青になる。
あ、これは黒だな。
「そ、そんな…待ってくれ、それだけは!」
「私も残念です。貴方と結婚するものだと思って今まで過ごしていましたから。そちらのご両親にももう了承は得てますので、これでさようならですね」
「待って、嫌よ!黒龍の贄になんてなりたくない!」
金切り声を無視して、教会から来た屈強な男たちと神官たちが二人を無理やり連れて行く。
「ああ、さようなら…私の初恋」
そして私は、カイ様と決別した。
その後カイ様が、メアリー様と共に喰べられたと聞いた。
あちらの家は、カイ様の他にも優秀なスペア…失礼、弟がいたのでなんとか大丈夫そうだ。
メアリー様のご実家は、むしろわがままで病弱でお金ばかりかかる厄介な子がいなくなってほっとしている節がある。
後継は別にいるのだから、そんなものなのだろう。
そして私はといえばピートの主導のもとで、本当に領地と爵位を買ってしまった。
「よっ!女伯爵様!」
「もう。ピートったら」
「あはは。まあ真面目な話これでも俺は貴族の三男坊、兄たちに何かあった場合のスペアとして教育は受けてたから領地経営の知識はあるぞ。俺が教えられることは全部教えるから、存分に頼ってくれ」
「頼りにしてるわね」
私の言葉に彼は胸をドンと叩く。
「おう!任せろ!」
数年後、ピートのおかげで領地経営は上手く行った。
社交界でもなんとか上手くやっている。
実家との仲は良好なまま。
そんなこんなで日々を乗り切っていたらようやく気持ちの整理がついて、ピートの気持ちを受け入れてピートと婚約したりと慌ただしくなった。
でも、毎日がとても楽しい。
ありがとうございます、黒龍様。
黒龍様のおかげで、今日も私たちは穏やかで幸せな日々を過ごせています。
高評価、ブックマークなどありがとうございます!とても励みになります!完結まで頑張っていきますので、楽しんでお付き合いいただければ幸いです!




