旅立ち
「レイ、準備は大丈夫?」
師匠の声に頭を上げる。
ぐっと拳を握ればあの頃の私とは全然違う。
震えていた拳は、今は落ち着いている。
この世界に来て、たくさんの事があった。
訳の分からない世界にまた落とされて、絶望して、なんでか分からないけど、抱きしめられて、拒否をして。
運命だとか愛しているとか言われるけども信じられず、でもそれが嫌だと思う自分がいたことに気づき、修行して強くなって、自信をもてて。
そんな風にようやくなれたらなれたで、この世界が、私が大切だと思える人達が辛く悲しい未来があることを知って無茶をして。
怒られて、泣かせて、でも褒めてもらえて。
色々な事があったから今の私がいる。
あの世界のトラウマも偶然にも克服できて。
私が私として、好きになれ、そして、そんな私が今は宝玉の乙女として、この世界を救う立場になるなんて。
「ふふふ、おかしな話。」
「レイ?」
「嗚呼、すみません。大丈夫です。師匠。」
「そう?なら良かったわ。」
師匠が手を伸ばして開けるトビラ。
扉の前には、私のパートナーがいる。
さっきから喜びの感情を感じていたから、よく分かっている。
もう、少しは落ち着いて欲しい。
主従関係になるのだから。
いや、これは私が勝手にそうおもっているだけだけど。
パートナーと言われても、しっくりこなかったから。
魔力をもらって、戦うから主従関係のほうがしっくりきたからマスターということにしたし。
「レイ!」
「これからよろしくお願い致します。マスター。」
「マスターって。」
「怒らないでください。今は宝玉の乙女としてここにいるので。そうじゃない時は普通に呼びますから。」
そう言ってもむすーっとしているリュウ様に本当に呆れてしまう。
これから旅に出るというのに。
本当にいつも通りなのね。
まぁ、その方が緊張しなくてもいいから。
「リュウもしっかりと修行できたようね。」
「勿論。しっかりと力の制御の仕方を教えこんだから、ぶっ倒れたりはしなくなったよ。」
「それは良かったわ。流石はアデルね。」
「レイの為ならってとーってもはりきってね。本当に上手くなったよ、魔力の使い方がね。」
「レイのパートナーとなるのだから、誰よりも上手く魔力を扱えないといけないから。」
「いえ、パートナーではなく、マスターですよ、リュウ様。」
そう言えばリュウ様は心底不服そうな表情を浮かべているし、伝わってる感情は拗ねている感じだ。
しかし、ここは譲れない。
パートナーにしたつもりはないですもん。
「ふふふ、本当にレイにはかなわなくなっていくわね。このバカ息子が。」
「運命ってそんなもんだよ。僕にとってのサーちゃんは敵わない相手だもん。リュウにとって、レイちゃんは敵わない相手になるのは必然だよ。」




