気に食わない神
「良く考えれば分かる事だ、何故お前が思う相手がまた愛し子となったのかを。」
「はっ?」
俺の運命がまた勇者で、しかも相手が神から力を貰った。
どこもでも初代宝玉の乙女とその勇者と同じ。
そして俺の前世はその勇者?
「もしかして、レイは初代宝玉の乙女の生まれ変わりか?」
「嗚呼。俺も驚いたよ。前回招いた消えた愛し子が俺の前に再び現れたのだから。」
「再びだと?それはつまりお前が初代に力を与えた神か!!」
ニンマリと笑う神にどこか頭痛がする。
浮かぶは朧気な記憶。
目の前に微笑む、少女。
どこかレイに似ている。
この少女は。
「嗚呼、嗚呼。少し思い出した。俺は、俺は、初代宝玉の乙女のパートナーであり、勇者だった。そして、神に俺の愛する彼女を奪われないように、魂まで使って飛ばしたんだ。彼女の魂をこの世界ではない世界に。」
「本当に、無茶苦茶なことをしてくれたよなー。折角ようやく俺の元にくると思ってたのにさー。」
「ははっ、だから、レイは俺とは違う世界に居たのか。そして、俺が再び絶望的な勇者と呼ばれる存在として生まれたのわ。」
前世の俺の罪という訳か。
神の愛し子を勝手に世界を超えて逃がしてしまったから。
けど、そんなこと覚悟の上だった。
どれほど自分が苦しもうとも、それでも彼女を自分以外のものにさせたくなかったから。
それは今もそうだ。
例え神でも。
「渡す気はない。絶対にだ。」
「はっ、はははっ!!!まだそういうのか!?」
「勿論だ。レイは俺の運命であり、他に渡す気は一切ない。魂さえも神でさえ渡す気はないっ!」
「もう一度飛ばす気か?いいや、それはもう出来ないぞ。なぜならもう知っているからな。だからそんな隙はない。」
「嗚呼、分かってるさ。でも、どうやってでも渡さないさ。」
方法は今は思いつかないが、まだその時まで時間はある。
今、目の前のこいつは言った。
愛し子だけに辛い思いをさせたくないから、俺をここに読んだと。
前世を思い出せと。
その前世が魔王を倒した前世だ。
少しずつ思い出されるのは勇者の記憶。
この記憶のおかげで、大分見えてきた。
絶望的だった未来が、希望へと。
「成程な。俺をここに呼んだのはレイの為か。」
「勿論。愛し子に悲しき思いなどして欲しくはないからな。」
「はははっ!!!レイを渡す気は、一切ないが、この記憶を思い出させてくれたことは感謝するよ、神よ。」
そう言えば、神は嫌そうな表情を浮かべている。
ははっ、神でもこんな顔をするのだな。
「本当に嫌な奴だ。」
「褒め言葉としてとっておくよ。神。」
「愛し子を悲しませるなよ。」
「言われなくとも。」
俺がレイを悲しませる訳にはいけない。
俺はレイを残して死ぬ気は一切ないし、その可能性もなくなった。
後は。
「お前にレイの全てを渡さない方法を考えないとな。」
「人間ごときができるか。」
「一度出来なかったくせに。今度もそうなるさ。」
神に向かって笑えば、怒りの表情を浮かばせ、その表情を最後にまた光に包まれた。




