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大切なもの  作者: アンスリウム
高校生
15/22

「意味が分かんない」



私が飛鳥さんたちと別れると時間はもう昼の12時を過ぎかけていた。私は比呂が心配になり、急いで比呂の家へと向かった。




──ピンポーン





「はーい、……どちらさまー」





ドアを開いたのは奏ちゃん。警戒しているようで、ドアのチェーンをつけたまま開き隙間から様子を伺っている。




比呂はまだ帰ってないのかな?






「奏ちゃん?加奈だけど、入ってもいいかな?」





私は優しく問いかけた。





「あ、かなねぇ!?うん、入って!」





明るい声が聞こえると、一旦ドアが閉まる。また開いて、奏ちゃんが私に飛びついた。





「おっとっと、奏ちゃん?」



「かなねぇ、おなかすいた」





奏ちゃんは私に顔を埋めたまま言う。





「そっか、今私が作ってあげるね」





私が奏ちゃんを離そうとすると、奏ちゃんは私の服をギュッと掴んで抵抗した。


奏ちゃんの肩は小刻みに震えていて、鼻をすする音が聞こえる。





「奏ちゃん?どうかしたの?」



「おうちかえったら、だれもいなくて……さみしかった」





私は何も言わずに奏ちゃんの頭に手を置いて撫でた。





「中入ろっか?」



「うん!」





奏ちゃんは顔上げて私を見ると、ニコリと笑う。目はまだ赤かった。



奏ちゃんは一緒に初詣に行った後ぐらいから、私に甘えることが多くなった。ずっと誰かに甘えたかったんだと思う。


私は奏ちゃんが甘えてくれて嬉しい。比呂には時々怒られるけど……



ご飯を食べ終えると奏ちゃんは私に身体を預けて、お昼寝中。比呂はまだ帰ってきていない。

大丈夫なのかなあ。





──ガチャリ





「ただいまー」





あ、比呂が帰ってきた。どうしよう。びっくりするかな?でも隠れるところないし、奏ちゃんいるから動けない。あーーー、私はどうすればっ。



足音がだんだんと近付いてくる。



こうなったら自然な感じでやり過ごそう。



比呂が居間に入ってきた。バチっと目が合った。





「あははは……おかえり〜」



「白咲か、いたのか」





私が苦笑いしながら言うと、比呂は虫も殺さぬような顔で私に返す。


むぅ、もっと驚いてくれてもいいのに。それにただいまって言ってくれても。





「うん、お邪魔してます。……比呂」



「何?」



「……ご飯、食べる……?」





私が言うと、比呂は私にもたれている奏ちゃんに目を移して、





「ああ、悪いな」



「うん、気にしないで、そこにあるから自分でとってね、ごめんね」





比呂は何も言わずに、用意されていた昼ご飯を持って私の近くにある机の前に座る。





「比呂」



「何?」



「その……ごめん、ありがとう」



「別に。お前がいなくなったら奏が悲しむからな」





比呂はご飯を淡々と口に運んでいく。





「……うん」





奏ちゃんのためか……まあ、そうだよね。



それでもいいや、私は嬉しかったから……



私は奏ちゃんの頭を撫でながら、比呂の横顔を眺めていた。


比呂がご飯を食べ終わると、





「あいつらはもうお前に何もしないから安心しろ」



「え?それって……」





まさかケンカしたの?





「俺は何もしていないぞ」



「じゃあ、あの後どうなったの?」





私の問いかけに比呂は苦虫を噛み潰したような顔をしてから、





「いきなり頭下げられて、謝られた」



「え?」





何それ、あ、ダメ。我慢出来ない。





「……プッ!……あはははは!!な、何それ、意味が分かんない」



「何笑ってんだよ」





比呂は私がお腹を抱えて笑うのを見て、顔をしかめる。


私は目に浮かんだ涙を拭って、



あの人たち比呂の正体に気がついたんだね。





「ごめん、つい可笑しくなっちゃって」



「お前やっぱり変」





変……




私はひどく落胆した。比呂は私を気にせずに話を進める。





「高校入って調子に乗っただけらしい。要するに高校デビューっていうやつだ」



「ふぅーん、そうなんだ」





あははは……変……



私は比呂に生返事を返した。そのままうつむくと、奏ちゃんと目が合った。


私は目をパチパチさせて、一旦顔を上げて二度見した。奏ちゃんは私を見てニヤっと笑う。それはもう小悪魔的に。




起きてたの!?いつの間に……

その笑みは何!?

というかいつの間に膝まくら!?





「か、奏ちゃん?起きてたら言ってほしいなあ」





私がそう言うと奏ちゃんは目をこすりながら、





「ふぁ〜〜〜、いまおきたよ。おにいちゃんおかえり」





絶対嘘だよね?完全起きてたよね?なんでそんな嘘を……奏ちゃんの企みが分からない。





「ただいまー」





比呂は本を読みながらそう言うと、立ち上がり、





「俺部屋で休むわ」



「はーい!」





比呂が言うと、奏ちゃんは元気に返事をする。比呂が出て行くと奏ちゃんは私に飛び込んだ。





「てい!」





奏ちゃんは私の身体に顔をスリスリさせる。私はその可愛さに頬が緩んだ。





「かなねぇはおにいちゃんすき?」



「ふぇっ!?」





予想だにしていなかった突然の言葉に私はどきんと心臓を大きく波打ち、目をパチクリさせた。


奏ちゃんは邪心のかけらもない表情で私を見つめて、もう一度。





「すき?」





2度目の問いかけに私は狼狽し、かぁーっと顔を真っ赤にして言葉に詰まる。




す、す、す、好き?いきなり!?




頭は完全にパニック状態。奏ちゃんは私から目を離さない。



視界がグルグルする〜〜〜



私はプシューと蒸気を出して、床にへたり込んだ。





「かなねぇ?かなねぇ!かなねぇ!」





奏ちゃんは私の身体を揺らしながら何度も呼びかける。





「大丈夫だよ……死んでないから」



「もう、びっくりしたーーー!!」



「ごめんね」



「うん、かなでもきょうはもうきかない」



「……うん」





じゃあ、また今度訊くんだ……



その後は何事もなく1日が終わった。



無理やりすぎたかな?

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