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大切なもの  作者: アンスリウム
高校生
14/22

「これからよろしくね」



春の訪れを感じる桜並木の下





「おい、あれも新入生なのか?」



「可愛すぎるだろ」



「クラス一緒になれるといいな〜」





紺色のブレザーに赤いチェックのスカートという新品の制服に身を包んだ少女は周りの男子を虜にする。



ふわっと春の柔らかな風が少女を吹き抜けた。



少女の周りを桜の花びらが乱れるようにヒラヒラと美しく舞い、少女の長い黒髪を風が揺らす。


凛とした佇まいで落ち着いた雰囲気の美少女に周りは時間が止まったかのように見惚れた。




なんだか周りに見られている気が……、私、何かしたのかな?うぅ……恥ずかしいよう。




私、白咲加奈(しろさきかな)は今日から高校生です。私が今日から通うのは公立雪ヶ丘高校。


それなりに賢い高校。通学路にある桜並木がすっごく綺麗なんです。




あ、桜の花びらが。



頭を払うとヒラリと花びらが舞った。



私は門の前で立ち止まり、目を瞑る。



比呂と同じクラスになれますようにっ。



そう祈ると、不安と希望に胸を膨らませて学校へと足を踏み入れた。



─────

───



はぁ……結局、比呂とは同じクラスになれませんでした。それどころか席に着くと私が休む暇なく、





「白咲さん、スマホとか持ってる?」



「え?いや、私は」



「加奈ちゃん!LINEやってる?」



「ふぇっ!?LINE……」



「加奈さん、僕とメアドでも交換しましょう」



「あ、私は、その……」





あちこちから声が聞こえてきて、私の首が……。しかも、いきなり加奈なんて……、うぅ……恥ずかしくてもうダメです。





「ちょっと、あんたたち。女の子に寄ってたかって何やってんの?困ってるじゃない。ほらさっさと席に戻る!」





声が聞こえたと思ったら、いつの間にか周りの男の子は居なくなっていた。助けてくれた?良かった〜。





「あんたも嫌なら嫌ってハッキリ言いなさいよ。だから付きまとわれんのよ」



「はい……ありがとうございます」





そう言いながら顔を上げると、前には大人っぽい雰囲気の女の子?女の人が私を見ていた。


制服だから多分生徒。見るからに明るそうで茶色のポニーテールは背中まであり、少しつり上がった目が印象的な綺麗な人。見惚れてしまいそうになる。



こういう人がモテるんだろうな〜。





「顔真っ赤よ、もしかして男の子と話したことあんまりない?」





私、顔真っ赤だったんだ。





「は、はい……」



「意外ね、そんな可愛いのに」



「ふぇっ!?いや、そんな私は……」





か、可愛いなんて!こんな綺麗な人に





「自信持ちなよ、あんたは可愛いよ」





女の人はニコッてして、私にそう言う。私は恥ずかしくなって、うつむいた。



笑った顔も素敵だなぁ。





「私は飛鳥(あすか)なつき、これからよろしくね」





飛鳥さんはそう言って私に右手を差し出した。私は顔を上げて、





「白咲加奈です。よろしくお願いします」





そう言うと、飛鳥さんの右手に自分の右手を重ねた。なんだか、恥ずかしい。




─────

───




入学式が終わると今日はもう解散らしい、終礼が終わるとまた男の人が……





「白咲さん!よかったらこのあと……ぐふぇ!」



「加奈ちゃーーん、一緒に帰らな……ぐわっ!」



「加奈さー……ぐぇ!」





飛鳥さんに一掃されていた。容赦ないな……

飛鳥さんは手をパシパシとはたきながら、





「これでよしっと。あんたたち、今日は無理だから、出直しな!」



「だったら飛鳥さんで「だまれ!」ぐはっ!」





あははは……





飛鳥さんのおかげで私は囲まれずに済んだけど、私はずっと苦笑いを浮かべていた。





「……ありがとう、飛鳥さん」



「うん、いいよ。これからは私が助けてあげる」





こうして私は友達兼ボディガード?が出来ました。





「加奈はもう帰るの?」



「うん、今日はとくにする事もないし」



「ほんと?じゃあさ、これから私について来てよ!」



「いいけど、どこにいくの?」



「ん〜〜、8組?」



「友達のところ?」



「友達って言うか……彼氏?」





え?彼氏!?いや、飛鳥さんならいそうだけど、同じ学校なんて羨ましい。どれくらいカッコいいんだろう。



飛鳥さんがニヤニヤしながら私を見ている。





「意外だった?それとも羨ましい?」



「え?いや、飛鳥さんなら彼氏ぐらい、いるだろうなって思ったよ」



「ありがと、加奈もいそうなんだけどね」



「私は……」



「やっぱり羨ましいんだ」





ぎくっ!



飛鳥さんは私をみてニシシと笑っている。





「なんで!?」


「顔に書いてるよ?『私も彼氏が欲しい〜〜〜♡』って」



「ハートなんて、書いてないよ」



「じゃあやっぱり思ってるんじゃん」





私は小さくコクリと頷いた。





「素直でよろしい!じゃあ行こっか?加奈のこと彼氏に紹介したいし」





飛鳥さんはニコッと笑うと私に背を向けて歩いて行く。私は急いで飛鳥さんの後を追った。



ちなみに私達は3組。



飛鳥さんは私の前を上体をまっすぐにして昂然と歩く。私はその後ろを影のように静かに歩いた。


飛鳥さん運動出来そう。



やっぱり飛鳥さんは目立つようで2人で歩いていると、周りからの視線をすごく感じる。


飛鳥さんはやっぱり綺麗だから目立つんだよね。


8組に近付くにつれてだんだん怒鳴り声?みたいな感じの大きな声が聞こえてくる。教室の周りにも人が集まっている。


何かあったのかな?



私は飛鳥さんの肩をトントンと叩いて、





「何だか騒がしいね」



「本当、何か馬鹿なことでもしてんじゃない」





8組に前に着く。飛鳥さんを見ると周りの人が羨望の眼差しを向けながら道が開いた。


飛鳥さんってモーセ?



飛鳥さんは頭を軽く下げると、堂々と道を歩く。

飛鳥さんって只者じゃない感じが……



教室を見るとやっぱりもめているみたいで、黒髪の人と金髪の人が怒鳴りあっていた。



金髪?一瞬、比呂かと思ったんだけど、全然違う人だった。すっごく怖そうな人。出来れば関わりたくない。



雪高は髪の毛、服装などが自由で校則がかなりゆるい。比呂がここを選んだのもそれが理由かもしれない。



横を見ると、飛鳥さんが頭を抑えてため息を吐いていた。


どうしたんだろう?



次の行動でその理由が分かった。





「こうすけーー!!!あんた何やってんの!!!」





飛鳥さんの怒号と同時に怒鳴りあっていた2人が止まり、私たちの方を見た。もちろん周りもみんな。



あ、飛鳥さん……?彼氏って金髪のお方じゃ、ないですよね……?





「なつき!?お前、な、何で、こ、ここに……?」





黒髪の人が飛鳥さんを指差して震えている。



よかった〜、金髪の人じゃなかった。



私はホッと肩を撫で下ろした。飛鳥さんは呆れたようにため息を吐いて、





「こうすけこそ、何やってんのよ?いきなり喧嘩?あんためっさ弱いのに?」





飛鳥さんの彼氏はかなり焦っているようで、顔から汗が噴き出している。





「なっ……!違う!俺はだな」



「おい、お前いい女連れてんじゃねえか」





金髪の人が2人の間に割って入り、





「俺にもヤらせろよ」





ニタニタと笑いながら、私たちの方へと近付いてくる。



え?こっちに来る……怖い……



男の不気味な笑いに私は全身から汗が吹き出る。





「お前!やめろ!」



「うるせェぞ!ゴラァァ!!」





黒髪が金髪の肩を掴んで止めようとするが、金髪が振りほどいて、黒髪を吹っ飛ばした。

周りからは悲鳴が上がった。





「こうすけ!ちょっと、あんた何やって……くっ!」





飛鳥さんが金髪の男に顔を掴まれてしまった。





「 あ、飛鳥さん!」





どうしよう、私はどうすれば……




金髪の男が舐め回すように飛鳥さんを見て、手を放すと、次は私に視線を移した。





「俺はお前よりもこっちだな」



「……げほっ!……加奈!」





私はその言葉と男の顔にあまりの恐怖で目をふさぐことも出来ない。


ヘビみたいに絡みつく視線、私は声を出すことも逃げ出すことも出来なくて、ただ震えている。



だんだんと男が私に迫ってくる。周りの人も完全に固まっている。




どうしよう……比呂!比呂たすけて……





「加奈っていうのか、俺の女になれよ」





男が私に手を伸ばしてくる。



イヤだよ。気持ち悪い……



私は男から視線を逸らし、教室を見た。



え?



私の目線の先には金色の彼が。私と目が合うと彼は私から目を逸らした。



比呂……そうだよね、私なんて比呂にとってはどうでもいい存在だもんね……


何だろう、急にバカらしくなってきた。比呂ならあのときみたいに私を助けてくれるって、勝手に思ってた私がバカみたい……





「おーい、もう帰っていいか?」





比呂?




私に向かってきていた男の手が止まった。そして、男が振り返りると、私は力が抜けて床に崩れ落ちた。



よかった……、比呂が、比呂が助けてくれた。





「はぁ?お前死にたいのか?」





金髪の男が比呂に向かって威嚇するように床をどすんどすんと踏み鳴らしながら、迫って行く。


その隙に中にいた生徒は逃げ出した。





「お前のナンパ見るだけなら俺帰ってもいいだろ?」



「俺は『金獅子』だぞ!お前逆らうのか?」





こちら側から顔は見えないけど声だけでも怒っているのがわかる。



え?でもそれって比呂のことじゃ……





「ほら加奈行くよ」



「え?でも」



「いいから、早く!」





飛鳥さんは小さい声で私に向けて言うと、私の手を取って走り出した。私もつられて走り出す。



比呂のことが気になる、ごめん、比呂。

ありがとう……



私の頬をすーっと涙が伝った。



─────

───



私たちは校門の外に出ていた。私と飛鳥さんの他に飛鳥さんの彼氏と一緒に走って逃げ出した。

3人とも膝に手をついて肩で息をしている。





「はぁ……はぁ……、ここまで来れば大丈夫だろ」





飛鳥さんの彼氏が言う。

私は呼吸が整うと、ブワッと急に涙が溢れ出した。





「……ぐっ……怖かった……ずっ……」



「加奈、ごめん。私が8組行こうなんて言ったからだ……」





飛鳥さんは私の背中をさすって言った。





「ううん、飛鳥さんは……ぐずっ……悪くないよ」





私たちはそのまま近くにある公園に行って、ベンチに座って休憩した。

私が落ち着くと、





「それで幸助(こうすけ)、何があったの?」



「それが……」





簡潔に言うと、あの金髪の男の人が終礼後に「俺は金獅子だ、お前らは俺の言うことを全部聞け!」って言ったのを飛鳥さんの彼氏が言い返したらしい。





「はぁ、あんたやっぱりバカね」



「でも!……っ!!!」





飛鳥さんが呆れて言うから、彼氏が言い返そうとすると、飛鳥さんは彼氏の唇に人差し指を当てて止めた。


飛鳥さんが優しく微笑むと、





「でも、私はそういう所に惚れたんだよ……」



「……なつき」





こういうとき私はどうしたらいいんでしょうか?




ニヤニヤする彼氏を飛鳥さんはデコピンで思いっきり弾いた。




──バチーンッ!!




いい音!うわぁ、痛そう。





「いだっ……!!!」



「なにニヤけてんの?キモい」





彼氏は飛鳥さんに一瞬で沈められた。



彼氏さん大変そう……



飛鳥さんは私の方を向くとニコッと笑って、





「こいつは私の彼氏の安達幸助(あだちこうすけ)、変態でキモくて、ケンカ弱くて、ダサいし、顔もパッとしないけど、優しいの。仲良くしてあげてね」





短所が多すぎる……でも、いい人なんだろうな。



確かにパッとしない人って思ったけどこれは心の中にしまっておく。



飛鳥さんは私に顔を近づけて、ちょっと怖い顔をして笑う。





──ゾクッ





あははは……怖い笑顔ってあるんだね。





「あ、飛鳥さん?」



「奪っちゃだめよ?」



「うん!と、奪らないよ!」





私は首を何度も縦に振ってこたえた。





「そ、良かった」





飛鳥さんは彼氏さんのことが本当に好きなんだね。



私は彼氏さんに自己紹介をした。すると、彼氏さんは満面の笑みを浮かべ、私に迫って、





「か、可愛い!よろしく!よかったら」





──スパーンッ!!





またいい音!それよりそのハリセンは一体どこから……?





「……ぐはっ」



「あんたさっき私が言ったこと聞いてた?あんたが迫ってどうすんのよ!」





彼氏さんは力つきて地面に倒れた。頭には大きなたんこぶが湯気を出している。


飛鳥さんは、はぁ、とため息を吐くと、





「まあ、こんなんだけど、これからよろしくね」



「うん、よろしく」



高校生始まりました!


ベタすぎる展開すいません

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