第31話 戦いの後
次回で完結予定です!
<エイミー視点>
それからは怒涛の展開だった。
アドリアン王子とキースの両国の騎士団が、
隣国の近衛騎士団を迎え討とうとした矢先、
先頭に立っていた王太子が、叫び声と共に黒いモヤとなって消えたのだ。
近衛騎士団の中でも同時に何人か黒いモヤになって消えて行った。
敵陣はパニックになり、
一気にこちらが攻め込み、相手はすぐさま降伏したのだった。
結果としては、お互いにほぼ被害はなし。
戦争は回避された。
助け出された国王と第一王女は、
衰弱していたが命に別状はなく、少しずつ回復している。
そして、レオノーラ様は目を覚まさない。
もう1週間になる。
治癒士によると、傷はもう癒えているので、問題ないらしいのだが。
前にも同じようなことがあったな。とエイミーは思った。
もしかすると、もう目を覚ます気が本人にないのでは、と少し不安になる。
戻りたい、と思う気持ちがどこかに行ってしまっているのではないかと。
アドリアン王子は、数日前レオノーラ様を見舞いに訪れた。
レオノーラ様が、あの短剣で自身の胸を突いたと聞いた時、
苦い顔をした。
まだ疲労の色が濃い。よほど今回のことはこたえたのだろう。
「あなたは、私の元に来ると言ったのにね。約束したじゃないか。
でも、あなたは成すべきことを果たしたのだな....
あなたは、その身を挺してまで守りたかったものを守れたのだろうな。」
とレオノーラの手をぎゅっと握りながら呟いて、
「どうか息災で」
と声をかけて国に戻って行った。
王も王太子もいなくなった今、国を建て直せるのは彼だけだ。
高位貴族もかなりの数が、黒いモヤとして消えてしまったらしい。
どれだけナイトフォールの影響が浸透していたかがわかる。
そして、黒いフードの男、
ナイトフォール?内藤さん?もあの場から消えていた。
邪竜は、ヴェル曰くレオノーラ様が浄化し切っていると言っていて、
重ねて封印もしたことだし、ヴェルの師匠である大賢者のヘンリック様曰く、
もう復活はしないらしい。
この王家、公爵家、宰相家の呪いのような歴史と連鎖は、今後起きることはなくなりました。
あなたのおかげなんです。レオノーラ様。
レオノーラ様、
はやく目を覚ましてください。
みんな待ってるんですよ。待ってるんです。
エイミーは毎日、レオノーラの看病を続けていた。
いつもベッドサイドで今日あったこと、笑ってしまったこと、なんでも話しかけた。
10日が過ぎ、ルドがレオノーラから片時も離れないエイミーを休ませるためにやってきて、
無理やり休むように睡眠魔法をかけた。
ルドがエイミーを横抱きにして隣の部屋に運ぶ。
エイミーの体力もすでに限界に近かった。
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レオノーラの部屋は、窓が開けられて、気持ちの良い風が流れてきていた。
花の香り、緑の香り、
窓辺のレースのカーテンが揺れ、外からは、騎士団の訓練の声や
小さな子がはしゃぐような声が聞こえている。
パキンとレオノーラの金色のブレスレットの石が割れた。
戦いの前につけた母親の形見だ。
「ん....」
レオノーラの意識が浮上した。
(ここは天国なのかしら。いま、母様の声が聞こえたような気がする。
それにしても気持ちいい風....)
レオノーラは、重い瞼をゆっくりと開けた。
そして、風が来る方向、窓辺にそっと目を向けた。
レースのカーテン越しにバルコニーに人影がある。
「え....?ルシアン様?」
ゆっくりとその人影が振り返る。
背の高い、黒髪で、赤い瞳の青年だった。
「ルシアン様....」
「おはよう、レオノーラ。気分はどうだ?」
「私、どうして?ここは天国なの?短剣は?私は死んだはずじゃ....」
「それについては、エイミーもオレもとっても腹を立てているんだよ。
きっちり話をきかせてもらうつもりだから覚悟しておけ。」
そう言って、レオノーラの上半身をそっと抱き起こして、
ふんわりと抱きしめた。
「まずは、オレとパン屋にいく約束を守ってもらわなくてはな。」
レオノーラは、真っ赤になって、
ぎゅっとルシアンのシャツを握りしめて、
「はははは、はい!」
と言った途端、きゅう、と目を回して気絶した。
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次回で完結予定です。
レオノーラと黒柴フェンリルの旅を
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