第29話 封印の地
全員が武装をし、
スレイプニルの馬車で王都のはずれにある「封印の地」へ。
そこでトーマスが待っていた。
「レオノーラ様、これが王妃様の墓前からお借りしてきたものです。」
それは、金色に輝く石のブレスレットだった。
母様がお守りだからと、
邪竜と相対する時はつけていくように言われていたのだ。
「ありがとう、トーマス。これで百人力だわ。」
ここは広大な土地で、王家の許可がなければ入れない土地。
邪竜が出てもすぐには被害が出ないように、結界が張られている。
そうやって何代にもわたって今まで国を守ってきた。
さぁ、始めましょう。
二人を見て言った。
「エイミー、今まで本当にありがとう。
あなたが本当はノクスヴァルト公爵家の次期当主だって知ってたわ。
今まで侍女として支えてくれてありがとう。
この件が終わったら、私の友人になって欲しいの。」
「はい、はい。もちろんでございます。レオノーラ様。」
エイミーは涙が止まらないらしい。
「ヴェル、いや、ルシアン様、
あなたと一度、どこかに出掛けてみたかったわ。
美味しいパン屋さんとか。」
「お、おう、いつでも連れて行ってやるぞ。
あ、あと.....
お前と初めて会った時、
なぜか時間が止まった気がしたんだ。
そこからゆっくり時間が流れて.....
お前から目が離せなかった。」
レオノーラが息を呑んで目を見開く。
そして
「私もです。ルシアン様」
と微笑んで、くるりと祭壇の方に向かって行った。
ーーーーー
レオノーラは、
祭壇の石碑に手を置いた。
祝詞をあげる。
レオノーラの白銀の髪がふわりと浮き上がった。
全身が白く光り、
ピシリ、と何かが割れる音がした。
「封印が解かれた!」
ヴェルが叫ぶ。
「手を出さないで!」
レオノーラが叫ぶ。
黒い雲が立ち込め、
何かの叫び声がした。
大地を揺らすような大きな音と共に、
真っ黒で巨大な竜が現れた。実体を持たず、黒いモヤに包まれている。
赤い瞳をこちらに向けて、
「王家の者よ。我が依代となりて、我を世界に戻すがいい。」
レオノーラが竜の黒いモヤに包まれる。
「そうはさせないわ。」
レオノーラの白い光と黒いモヤの戦いになる。
そこに集中していると、
「やあやあ、有賀さん」
黒いフードの男が現れた。フワフワと宙に浮いている。
「お前!内藤!
陛下と第一王女をどこへやった?
なんてことしやがる。」
「いやいや、ご挨拶ですね。
ちゃんとご無事ですよ。
私が興味があるのは、有賀さん、あなただけですからね。」
「何が目的なんだよ。
オレに恨みがあるなら、オレだけに攻撃すればいいだろう?」
「そうかもしれませんね。
でも、それじゃああなたにとって何のダメージもないじゃないですか。
本当は邪竜なんてどうだっていいんです。
世界征服だって興味はないんですよ。
あのバカな王太子は、弟に負けない力が欲しいって、
ただそれだけで私の信者になったんですよ。
王族といえども人間は弱い。
いや、王族だからこそ弱いのかもしれませんね。
みんな、そう。
私に降ったあの国の馬鹿どもは、
ただ権力、美しさ、財力、望むもの、望むことを全て叶えてやろうと言ったら
すぐに私に降ったよ。
すべての魔力を奪われて廃人になるとも知らずにね。」
「エイミー、レオノーラをみていてくれ!」
「チッ、有賀さん、私の話を聞いていますか?
自分の立場をわかっているんですか?
余裕ですね、周りを気にするなんて。
そういうところですよ、頭にくるところは。」
「いいから、国王と王女殿下を解放してくれ。
あとは、邪竜に手を出すな。
世界征服に興味がないなら邪竜に手を出す必要なんてないだろう。
俺たちを放っておいてくれよ。」
「そうはいかないんですよ。
有賀さん、あなた、私に呪われてるっていう自覚がありますか?
呪いを解くには__
そうそう、ヒントをあげましょうか。
一つ、あなたが本当に絶望するか、
もしくは、私の望みが叶うか、
そのどちらかが満たされれば呪いは解けますよ。
あ、私に降った彼らは元に戻りませんがね。
呪いを強固するために彼らの魔力は使ってしまいましたから。
でも呪いが解ければ、あなたは人に戻るでしょう。
お嬢さんを助けられるかは別ですがね。」
「畜生!面倒な事しやがって。
なんでだよ、内藤。
オレは、オレはお前が1番の好敵手だと思っていたのに。
オレが唯一認めた研究者だったのに、
なんであんなバカなことしたんだよ。
あの時、お前の受賞が決まってたんだ。
オレが推薦した。
オレだけじゃない、
研究室の全員がお前を推薦したんだ。
なのに、データを持って姿を消すなんて。
オレは必死でお前を探したんだ。
わかってんのかよ!」
ぐにゃり、と黒いフードの男の顔が歪んだ気がした。
「そんな____
そんなこと、あるわけがない。
だったら、だったら何で私はあんなことを!」
頭を抱えて苦しみはじめ、なんだか様子がおかしい。
「おい、内藤!聞いているのか?」
「うわぁぁぁぁー!」
黒いフードの男が空中からドサリと地面に落ちた。
「なんで、いまさら、どうして____」
地面を転がりながら苦しんでいる。
ピシリ。
と何か音がした。
「頭が、頭が割れそうだ___」
ヴェルも地面に転がった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
あと4話で完結予定です。
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