第16話 覚悟
【お知らせ】
エイミーのスピンオフ短編に続き、
ヴェルのスピンオフ短編を公開しました。
宰相一家と呼ばれる彼の“家族”、
そして――彼が旅に出る前の物語です。
https://ncode.syosetu.com/n2644lx/
本編の裏側が少し見えるお話になっていますので、
気になる方はぜひご覧ください。
息を切らして、資料室に慌てて飛び込んだ。
ひんやりした部屋。誰もいない空間。
椅子に座り、テーブルに突っ伏した。
「ヴェルがルシアン様?
そんな...そんなことって。
いいえ、どっちみち、
どうにもならないことだってわかってたはずよ。
だったら...」
胸元のペンダントを握りしめる。
母様、母様、私はどうしたらいい?
思わずペンダントのロケットを開いた。
頭がーーーー痛い。
頭が割れるような痛みと眩しい光の中、
そのまま私は意識を手放した。
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私は白い空間にいた。
そこには母様が微笑んで立っていた。
「母様、母様!
どうして私を置いていってしまったの?」
駆け寄った私を母様は黙ってぎゅっと抱きしめてくれた。
母に縋りつき、わんわん泣いた。
「母様、私、何か大事なことを忘れている気がするの。
何かが自分の中から欠けているような気がするの。」
しゃくりあげながら訴える。
「レオノーラ、よく聞いて、
あなたは、あなたの未来を選ぶことができるわ。
あなたが望む道を選んでいいのよ。
そして、あなたの記憶とあなたが知るべきこと、
これは誰かの記憶になるけれど、それらを返すわ。
その中には、知りたくないこともあるはずよ。
でも、もうあなたの準備はできたのだと、
母様は思うの。
あなたがどの道を選んでも、
決して楽な道ではないわ。
でも全てを避けて通ることもできないの。
そしてどうするかはあなたが決めていいの。
どんな選択をしても、私はあなたを見守っているわ.....」
「母様、母様!行かないで...」
温もりだけを残して、ふっと母の姿が消えた。
それからとめどなく大きな波のように記憶が大量に流れ込んできた。
私の記憶だけではない、
何代も前の王女たちの記憶、
そして母の記憶も。
私はどうすべき?
私はどうしたい?
その膨大な記憶の中で、
自分の思考の海の中にしばらく潜り続けていた。
深く、深く。
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意識が浮上した__
ふと目を開けると、ベッドの上だった。
気を失った私を運んでくれたのだろう。
今は夜中のようだ。
窓の外は暗く、
うっすらとランプの灯りがついている。
殿下に謝らないと。約束を破ってしまったわね。
エイミーがベッドの横の椅子に座り、
私の手を握ったまま突っ伏して眠っていた。
胸が痛い。
胸が張り裂けそうだ。
でも、私は決めた。
エイミーとヴェル、
この二人を守ると。
そしてその決意を決して悟られないと。
力と記憶を取り戻した今の私なら、それができるはずだ。
ベッドの上で、モゾモゾと動いたら、
エイミーが目を覚ました。
「あ!レオノーラ様!目が覚めたのですね?
気分はどうですか?
頭が痛いとかありますか?」
目が赤く目の下に隈もできている。
ほぼ寝ていないのだろう。
「エイミー、ごめんね。心配かけちゃって。
私、どのくらい眠っていたの?」
「丸二日間、眠っていらっしゃいました。」
「あら、レストランに行けなくなってしまったのね。ごめんね。」
「そんなこと.....
そんなこと、気になさらないでください!
あの時、資料室で意識を失っているのをヴェルが見つけたんです。
レオノーラ様が冷たくなっていて、声をかけても返事がなくて、
本当にどうしようかと思いました。」
「そう、ヴェルにもお礼を言わなくちゃね。
エイミー、お水をもらえるかしら。
そして、もう少し眠るわ。
みんなに大丈夫だって伝えてね。
エイミーも疲れたわよね。
下がってベッドで休んでちょうだい。
私はもう大丈夫よ。」
私は水を一口飲んで、
そのまま再び深い眠りについた。
ふと、柔らかい花の香りがした。
おそらくアドリアン殿下のお見舞いだろう。
それがなんだか嫌じゃなかった。
そう、私は決めたのだ。
もう迷わない。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
本日、ヴェルのスピンオフ短編も公開しています。
本編の裏側や、旅の始まりに繋がる物語ですので、
気になる方はぜひあわせてご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n2644lx/
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次回も、どうぞよろしくお願いいたします。




