第13話 激重王子と毒舌フェンリル
結局ずっとアドリアンは私のそばに立ち続けた。
他の人の私へのダンスの誘いをささっとかわし、
話しかけてくる人を牽制し、
かいがいしく飲み物や軽食を準備する。
エイミーもちょっと引くくらいだ。
「お二人、仲がよろしいんですね」
「これは、ご婚約も間近、ということかしら」
という、声も周りから聞こえてくる。
まださっきのダンスの時の会話が頭の中を巡っている。
私の将来。
王族として?姉様のために?
そして私の居場所。
どうすればいい?
考えれば考えるほど答えが出ないような気がしてくる。
そして主催者、参加者との挨拶、歓談を終え、
夜会は閉会となった。
帰り際、
アドリアン王子が屋敷まで送ると言うので
断るわけにもいかず、
アドリアン王子の馬車に乗ることになった。
(ヴェル、トーマスとキースに先に戻っていいって連絡しておいて)
『人を便利な連絡網として使うなよ。
まあいい。またトーマスが出番がないって悲しむぞ。』
(悪いわね、トーマス。)
アドリアンのエスコートで馬車に乗り込む。
わー、馬車の座席、すっごいフカフカ。揺れないし。
さすが王族の馬車!って
私も王族だった...
と自分に突っ込んでいた。
エイミーもついてきてくれているので、
さっきのようなちょっと面倒な話にはならないだろう。
馬車が動き出して、窓に夜の風景が流れていく。
「ところで、レオノーラ。」
とすごく真面目な顔で話しかけてくる。
「は、はい」
「夜会の間、ずっと聞こうと思っていたのだが、
それはいったい何なのだ?
侍女殿の中に何かいるな。
先日の爆発の時、街の中でも感じた気配だ。」
(げ、バレてる)
さっき、人の本質とか魂の色とかを見てるって言ってたけど、
影に入ったヴェルも見える、と言うことかしら?
なかなか侮れない人だわ。
エイミーがちょっと心配そうに横に座る私を見た。
「エイミー、大丈夫よ。
ヴェル、出てきてちょうだい。」
黒いモヤが出て、
柴犬スタイルのヴェルが現れる。
赤い目の黒い犬。
「ほう、なるほど。興味深い。」
(やった、私にだけじゃなくて、ヴェルにも興味を持ったのかしら。私への関心が薄れるかも!)
「殿下!ということは、ヴェルにも興味を持たれた、ということなのですね?」
と嬉しそうに聞いてみた。
「レオノーラほどには興味はないが。
そもそも比べる方がおかしい。」
(ソウデスカー、ソウナンデスネー)
「おい、何か用か?」
「ヴェル、不敬よ。ちゃんと敬語を使って。」
「おお、話せるのか。だったら話が早くていいな。
して、お前は何者なのだ?」
「人に聞く前に自分が名乗れよ。」
「こーらー!ヴェル!」
「わかったよ。オレはヴェルだ。
今の姿は犬だが、フェンリルだ。以上。」
「ほう...しゃべるフェンリルか。面白い。
あの爆発の時、結界を張ったのもお前か?」
そもそも、なぜ、レオノーラと共にいるのだ?
まぁ敵意は感じないが。」
「さぁな、旅の途中で馬車がぬかるみにはまっていたのを助けただけだが?」
「では、なぜいまも一緒にいる?」
「さぁな。乗りかかった船、というか、俺の目的もあるんでね。」
アドリアン王子は顎に手を当てて少し考えるような仕草をしたあと、
ヴェルをまじまじと見つめた。瞳の色が少し変わっている。
(この人、いま何か異能を使っているわ)
「......お前、本当は人間だろう?」
エイミーがわずかに表情を変える。
え、エイミーってば、何か知ってるの?
「......だったらどうだっていうんだ?」
「レオノーラの近くに人間の男がいるのは許せん」
(げげ、そんな理由ー?)
「いや、いつもキースもトーマスもおりますよ、殿下!」
っていうか、ヴェル、あなた本当は人なの?
私、聞いてないわよ。」
「ちっ、そんなのどっちでもいいだろう。」
「お前、本当に口が悪いな。」
「はぁ、殿下、とやら。
あんたは本当にレオノーラに対して執着が強いな。
まじで激重。」
「激重、上等だ。否定はしない。」
「あの、もしかして、もしかすると、お二人は、気が合うんじゃ?」
というエイミーの一言に、
「「いや」」
ヴェルと殿下は嫌そうな顔でそっぽを向いた。
「ほら、息もぴったりです!」
と胸の前でパンッと手を合わせてにっこり笑うエイミー。
ひー、エイミーってたまに肝が座ってるって本当に思うわ。
馬車の中の空気の重さに押しつぶされそうなのは私だけなの?
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
激重王子と毒舌フェンリル、仲良くなれるでしょうか?
もしレオノーラと黒柴フェンリルの旅をもう少し見守ってもいいと思っていただけたなら、
ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。
次回も、どうぞよろしくお願いいたします。




