第4話 レオノーラ、化ける。
着替えてしまったからには、仕方がない。
もう大人しくするしかないのだ。(というか苦しくてあまり動けない)
お茶と軽食が出されていたけど、
久しぶりのコルセットのせいで、この小さな焼き菓子ですら入る気がしない。
でもお茶は少し飲んでおこう...
『晩餐の前に、そちらの部屋に集合してもいいか?』
とヴェルの念話。
(いいわよ、キースとトーマスも一緒かしら?)
『ああ』
「エイミー、みんなが一度こっちに来るって」
「はい、念話、聞こえてました」
ほどなく、ノックが聞こえた。
「キースです」
「はい、どうぞ」
ヴェルも犬の姿のままトコトコと入ってきた。
あら、屋敷をすでにウロウロしてるのかしら。
確かに周りの人にもヴェルがいることに慣れてもらったほうがいいわよね。
なんて考えてたら、
何か空気がおかしいことに気がついた。
男性陣は、レオノーラを見て、
目を見開いて
息を呑んで、
固まっていた...
「え、みんなどうしたの?」
そしてさらに無言。
「オーッホッホ、このエイミーの腕、
そしてレオノーラ様の底知れないポテンシャル、
いつもの姿との違いにみなさん驚いておいでなのですわ!」
「エイミー、なにその悪役令嬢みたいな高笑い...
ねぇ、みんなどうしたのよ?何か変?」
ハーフアップにしたプラチナブロンドに
深い青の瞳
うっすらとされた化粧
細い首、細いウエスト
繊細なレースをあしらった
レモンイエローのドレス。
そしてサファイアの髪飾り。
まさに、儚げな美少女といった姿だ。
彼らにとっては、
いつもと似ても似つかなかった。(らしい)
「お前、化けたな...」
「レオノーラ様、なんと言ったらいいか。
まるで、よ、妖精のようです。」
キースが顔を真っ赤にして
手で口元を覆っている。
「私は、このお姿も見慣れてますからな!」
とドヤ顔のトーマス。
「レオノーラ様の真のお姿は、本当はこんなものではないのですわ。
オーッホッホ!
歓迎会までにさらに磨きをかけますからね!」
「エイミー、だから悪役令嬢みたいだってば。
その口調はやめてよ。
もう、みんなもどうしちゃったのよ。
私は私よ。
だからドレスとか夜会は嫌いなのよ。」
レオノーラ、実はびっくりするくらい美人だったらしい。
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ドアのノックの音がした。
「レオノーラ様、晩餐の席にご案内いたします。」
執事が顔を上げた途端、
息を呑んだ。
動揺を見せないよう振る舞ったが、
かなり驚いているようだ。
(そんなに、さっきと変わったかしら)
コホン、と咳払いをして、
「レオノーラ様、
失礼いたしました。
先ほど主人より、
本日急遽ゲストがいらっしゃいまして、
レオノーラ様にご紹介したいと申しております。
その方との面会として3名で晩餐をご一緒したいと。
侍女のエイミー殿、レオノーラ様の給仕のお手伝いをいただけたら。」
やはり、来たわね。
わからないように小さなため息をついた。
「皆様の晩餐の席をこちらにご用意しております。メイドがご案内いたします。」
「エイミー、では行きましょうか」
「はい、レオノーラ様」
貴族らしくアルカイックスマイルを貼り付けて
気持ちが乗らない一歩を歩き出した。
そう、いつまでも逃げられないこともあるわ。
私は王族なのだから。
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