第25話 ナイトフォールという存在
一気に最後26話まで更新します。
眩しい光の中から舞台俳優のような芝居がかった声がした。
「ようこそ、レオノーラ様、そして有賀さん?」
黒いフードの男だ。
『キース、入り口から進んで階段下まで降りてこい。隠れていろ』と指示をだす。
「あなた、いったい誰なの?
今、テイラーが入ってきたでしょう?
あなたがテイラー?それとも『彼の方』なの?」
「テイラー?知らないなぁ。
ハハハ、『彼の方』ね。あいつもオレの思うがままさ。」
「ところで、お姫様、
この犬の正体を、あんたは知ってるのかい?
そしてその侍女の正体も。」
「どういうこと?」
「あー、そういえば、有賀さん、
今はヴェルだったかな。
あなたが他人に興味を持つなんて本当に珍しいじゃないですか?
オレのことは全く眼中にないって感じだったのにね。」
男はバサっとフードを外してニヤリと笑った。
ヴェルは息を呑んだ。
「内藤!お前、内藤なのか?
あれからどこへ消えていたんだ。」
「へぇ、覚えていてくれたんだ。
光栄だね。天才研究者の有賀さん。
完全無欠、冷徹な合理主義者。
その分野のありとあらゆる賞を受賞。
一方で、研究データを持ち出して追放された元同僚のことなんて、
とっくに忘れたかと思ってたけど。」
すると、今度はテイラーの顔に変化した。
「ああ、お気になさらず。
私はどんな姿にでもなれるのですから。」
「さぁ。知ってますか?
王に疎まれて追放されたお姫様、
そしてそこの侍女さん。
そして有賀さん。
あなたたちはこの世界の生贄になる運命なのですよ。」
「ねぇ、有賀さん、
あなた、それをぜーんぶ知ってて、
そこのお姫様と一緒にいるんですか?」
「内藤、黙れ。適当なことを言うな。」
「えぇ?侍女さん、あなたもご存知ですよね?」
チッと舌打ちが聞こえる。
「なに?何を話しているの二人とも」
「レオノーラ、気にするな。」
「そうです、レオノーラ様、耳を貸してはいけません。」
「あぁ、あと一つ、せっかくだから教えて差し上げましょう。
有賀さん、あなたが犬の姿になったのは、私の力ですよ。フフフ。
だってあなた、都合の悪いことを
ぜーんぶ忘れていたでしょう。
なんか憎らしくって。
だから思い出させてやろうと思いましてね。
ちょっと細工というか呪いというか?」
「くっ、お前だったのか!」
「どんなにすごんでも、怖くないですよ。
今のあなたの力では私を倒すことはできません。」
「内藤!」
「ハハ、今は違う名前ですよ。あなただってそうでしょう?
私は、ナイトフォール、”世界に闇をもたらす者”と言えばわかるだろうか。」
「「ナイトフォール...」」
ヴェルとエイミーの言葉が被った。
「さぁ、レオノーラ様、大人しくペンダントを渡してください。
それがあると何かと面倒なんですよ。
渡してくれたら今のところは見逃して差し上げます。」
「ダメよ、これは母様の形見なのだから」
「では仕方がないですね。力ずくでいただくほかないのでしょうね。
それか消えてもらうかのどちらかです。」
一気に威圧が強くなる。
『キース、レオノーラを連れてここから逃げろ!すぐだ』
キースが転がるように飛び込んでくる。
レオノーラを横抱きにしてドアの外側に退避する。
「ヴェル!、エイミー!」
「いいから行け!」
「お逃げください!」
その時、フードの男が、魔鉱石の塊を懐から出し、
真っ赤な閃光をヴェルとエイミーに向かって放った。
本能的にわかる。
あの威力を跳ね返せるほどの力が今の二人にはない。
ヴェルはフェンリル化し、瞬時に結界を貼った。
でもその結界もジリジリと破られそうになる。
「キース、いいから行け。すぐに結界が破られる!」
ヴェルの体が切れ、血が溢れ出す。
エイミーも口から血を流している。
「いやああああああ!」
本能的にペンダントを握りしめた。
そして思い切ってロケットを開けて叫ぶ。
「母様!二人を助けて!」
「カッ」と白い閃光が光る。
「ギャアアアアアアアー!」
フードの男が絶叫する。
「こんな、こんなはずでは!
この小娘にこんな力があるはずがない。」
フードの男の顔は、半分焼けただれている。
今にも膝からくずれ落ちそうだ。
白く眩しい光の中、時間が止まったような感覚、
ヴェルとエイミーの傷が塞がっていき、
ヴェルのフェンリル化が溶けかかっている。
「え、人?ヴェルなの?」
光の中にエイミー以外の人影を見たような気がした。
黒い髪の、赤い目の...男の人。
どこかで会ったことがあるような...
そこで私は意識を手放した。
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