第21話 黒いモヤ再び
「チッ、猿ぐつわをすべきだったか」
キースがつぶやいた。
その時、二人の体から黒いモヤが出てきた。
これは、あれだ。
テイラーの時と同じだ。
「何?何がどうなっている!」
慌てて叫ぶキースと
無言で立ちすくむ私たち。
そして、黒いモヤはそのまま二人の死体と共に
跡形もなく消えてしまった。
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ヴェルが沈黙を破るように、
「エイミー、強い酒はアイテムボックスに入っているか?」
「ええ、ブランデーが。かなり強いやつが。」
リビングに移動し、
それぞれがソファに座る。
そして大きなため息をついた。
エイミーが男性陣にはブランデーを。
え?ヴェルも飲むの?魔獣は平気なの?
レオノーラにはブランデー入りの紅茶が目の前に置かれた。
そして甘いチョコレートも。
(ちなみにエイミーはブランデーをストレートで飲んでいた)
「キース、このことは他言無用よ。」
「......」
キースは言葉にならないらしい。
そしておずおずとこう切り出した。
「もしかして、テイラーも同じなんですか?
本当は彼はすでに消えてしまっているのですか?」
「察しの通りよ。テイラーは私とエイミー、
そしてヴェルの目の前で黒い霧になって消えてしまったの。
そう言ったって誰も信じないでしょう?姿も遺体もないのよ。
だからあなたが騎士団経由で捜索をすると言った時、
止めることはできなかったわ。
あなたがテイラーを本当に心配していたことも知っていたし。」
「そんな...
でもこの街でテイラーの目撃情報があったじゃないですか!
あ、でもそれはマルコのことなのか?
でも瓜二つだなんてそんなことがあるんでしょうか。」
「それは私たちもおかしいとは思っているわ。
ルミナーラでの消えたはずのテイラーの目撃情報。
瓜二つのマルコ。
同じように黒い霧になって消えた二人。」
「ああ、そして黒幕が必ずいるはずだ。それもかなりの大物。
おそらく商業ギルドも、例の商会も巻き込んで何かを仕掛けているにちがいない。」
「彼の方、と言っていましたね」
「でも私のペンダントを奪うのが目的だったのではないの?
さっきの様子だと私が『彼の方』の邪魔、みたいな言い方だったわ。」
「ペンダントを奪うか、レオノーラを消すか、
の2択だったっていうことかもしれないな。
それか両方か。」
「何よそれ、めっちゃ物騒じゃない。私は何も知らないわよ。彼の方なんて!」
「明日、ロッシの窯の親方が紹介してくれる
ギルド職員と小麦農家から何か聞き出せたらいいんだが。」
「今回の襲撃だって、証拠は何もないし、
あるとしても、あの短剣くらいかしら。」
「襲撃があったと捜査をこの街の騎士団に依頼することもできなくはないが...」
キースが考え込んでいる。
騎士団としてどう対応するか考えているのだろう。
エイミーがしっかりと毒を取り除いた短剣を布に包んで持ってきた。
「この短剣は隣国の細工ですね。
かなり良い、高価なものです。
ただすぐに身元がわかるようなものはありませんね。
調べればどこの工房が作ったか、くらいはわかるかもしれませんが。
毒は、おそらく一瞬で死に至る特別なものでした。
闇ルートでもなかなか手に入れられるものではありません。」
「単に不正監査、調査では済まなくなってきたな」
「そうね、私は勘が良くて運が強い超絶敏腕な監査官なはずなんだけどな。」
「いや、超絶厄介ごとに巻き込まれやすい体質、の間違いじゃないか?」
相変わらずのヴェルの毒舌に、
さっき、「ちょっといいやつかも」
と思ったのは帳消しで!なしで!
と心の中で叫んだ。
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