第20話 襲撃と狂った女
「このペンダントが...何か意味があるってことなのね」
「おそらくな」
そしてヴェルの声が急に念話になった。
『そのまま普通に会話を続けろ。
エイミーは気づいていたようだが、今、天井に間者がいる。
気配を消しているが、結構な手練れだ。
気づかぬふりをしておけ。きっと今夜動くはずだ』
(本当に私、囮じゃないの...)
「まずは腹ごしらえといきましょう!」
と、何も気づいていないように振る舞う。
今日は、アイテムボックスの中の食材から、
具沢山のポトフと干し肉、そしてカリッとトーストしたサム特製のパン。
疲れた時はこういう優しい料理が沁みる...
水はエイミーの水魔法で出してくれるから安心だ。
食材は明日全部入れ替えなくちゃ。
「温かいものでお腹が満たされると、ちょっとホッとするわね。
エイミー、ポトフ、すごく美味しかったわ。薬湯もありがとう。」
トーマスも起き上がれるようになっていた。
みんなで食事を終えて、
再びヴェルの念話。
『素知らぬふりで聞け。レオノーラの部屋にはエイミーが同室だ。
オレは影に入り込んでおく。
キースとトーマスは隣の部屋に』
(((了解。)))
キースだけ、影に入るってなんだ?という感じの顔をしているが、
頭は硬いかもしれないけど、
いざとなったらいちばん頼りになるはずだ。
騎士団長、頼んだわよ。
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夜、ランプの灯りを落とし、ベッドに潜り込む。
はぁ、なんだってこんなことになるのかしら。
屋敷の中に間者がいるっていう前提で寝るってどうなのかしら。
囮、囮なのよね、私。
じゃあ、しっかり囮として役に立って見せようじゃない!
『あまり、力むなよ』
(そう言ったって。)
『大丈夫だ。オレが守る』
ハッと息を吸い込んだ。うまく返事ができない。
ええ...なんかちょっとドキドキする。
今まで姉様とエイミー以外で私を守ろうとしてくれる存在はなかった。
『来たぞ!エイミー、気づいてるな』
(ええ、いつでも来いって感じよ)
(ええ?もう?)
天井がスッと開いた。そこから女が降りてくる。動きが蜘蛛みたいな女だ。
『まだだ、二人とも動くな』
女は短剣を思い切り振り上げ、ベッドのレオノーラを突き刺した。
その瞬間、エイミーが飛び出し女を蹴り飛ばす。
ヴェルはフェンリル化し、
女の腕に噛みつき引きずり倒し、前足で体をダンッと踏みつけた。
一瞬の出来事。
そして短剣はレオノーラに刺さったままだ。
血が布団の上に染み出している。
「アハハハ、ザマアミロ!ザマアミロ!
短剣には毒が塗ってある。
お前がいなければ、この世界は彼の方のものだ!」
狂ったように叫ぶ女。
月明かりに浮かぶその白い顔は狂気に満ちている。
暗闇の中で、キィッと何か音がした。
クローゼットの扉が開いて、そこからレオノーラがひょっこり出てきた。
腕組みをして仁王立ちだ。
「あなた、誰なの?彼の方って誰?」
スローモーションのように、目を見開いた女が、
慌ててレオノーラとベッドを交互に見る。
エイミーが布団をひっぺがし、
「残念ね、こんな簡単な手に引っかかるなんて。」
血糊とアイテムボックスに入れておいた塩漬け肉を並べた塊がそこにあった。
ああ、塩漬け肉...
毒の刃にかかってしまったからもう食べられないかしら。
(レオノーラ様、あなたそういうところが危機感がないって言われちゃうんですよ。)
エイミーが灯りをつけた。
なんと、女は先ほど倉庫で捕まっていたメイドだった。
そして、ドアをノックする音が。
『誰だ』
(キースだ)
キースがもう一人、男を縛り上げて部屋に入ってきた。
「こいつはさっきの管理人だ。外で屋敷の周りに油を撒こうとしていた。」
二人とも倉庫に捉えられていたのは自作自演だったらしい。
「畜生、畜生!うまくいくはずだったのに。」女が狂ったように叫ぶ。
「いいから、余計なことはしゃべるな!」男が叫ぶ。
今度は仲間割れか。
男の方が冷静そうだ。話を聞くならこちらだろうか。
ため息をついて、
「さあ、詳しく話してもらうわよ。」
そう言った途端、二人から、ガリッと何かを噛む音がした。
『チッ、しまった!毒だ』
「アハハハ!彼の方が全てだ。あのお方に栄光あれ!」
「栄光あれ!」
二人はそのままガクリと息絶えた。
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