第17話 カッフィとビスコッティ
店に案内されたら、奥の方から声がした。
「マルコ、帰ったのか?」
恰幅のいい、粉だらけのエプロンをした大男が厨房から顔を出した。
「親方、今戻りました」
「おう、マルコ。あれ?お客さんかい?」
「はい、商会とちょっと揉めてた時に助けてくださったんで」
「そうなのか、それはありがとうございます。」
と頭を下げた。
「あっしは、このパン屋の店主で、
ジュゼッペ。ジュゼッペ・ロッシといいます。
この度はマルコがお世話になりやした」
「いえ、私たちは何も。滞在する屋敷を案内してもらえて助かったわ」
「ああ、そこの通りのお屋敷に滞在するんで?」
「そうよ。あと、ちょっと話を聞きたくてお店に寄らせてもらったの」
「うちには、応接間なんて洒落たものはないんですが、
みなで賄いを食べる休憩所がありますので、よければそちらへどうぞ」
ヴェルはトーマスについて行った、という体で私の影の中にいる。
大きながっしりとした素朴なテーブルに丸椅子。
私の隣にエイミー、そしてキースが座る。
「どうぞ」
とマルコが黒いお茶を持ってきた。
これはもしやカッフィでは?一度飲んでみたかったのよね。
「これはカッフィですか?」
「はい、この辺りではよく飲まれます。豆が手に入りやすいんです」
「あとよければこちらもどうぞ。硬いのでカッフィに浸しながら食べるといいです」
ビスコッティというらしい。ナッツがぎっしり入ってる。
小麦がないので今日は米粉で作っているそうだ。
甘いもの!最高です!
「レオノーラ様、まずはお話を聞きましょう」
エイミー、ひどい。
そして珍しくヴェルが何も言ってこない。ビスコッティが硬いからか甘いからか...
まずはカッフィを一口。
苦くてむせる。
マルコさんがミルクとはちみつを持ってきてくれた。
キースとエイミーはそのまま飲んでいる...なぜ?
「ところで、お話とはなんでしょう?」
「ええ、小麦のことなの。小麦がとても高騰しているって聞いたわ。
そしてこの店も開けられないって。どうしてそんなことになっているのかしら?」
「小麦がある一定の場所で枯れ始めて、それが噂になって。
もしそれが広がったら今年の収穫が激減するんじゃないかって
さらに大手の商会で買い占めが起こってることでみんな動揺してるんです。
裕福な層向けのパン屋はその商会が運営してるんで、小麦が手に入るんですが、
俺たちみたいな普通のパン屋には買えるような値段じゃなくて」
「商業ギルドはどうしてるの?買い占めとか不当な値上げには対応してないのかしら?」
「あいつらは、ヴァレンティ商会のいいなりなんだ」
ドン!とマルコがテーブルを叩いた。
「あ、すみません、ついさっきのことを思い出してしまって」
「やっぱりダメだったか」
「はい...」
「あの、商業ギルドと小麦農家の人に会いたいんだけど伝手はあるかしら?」
「貴方たちはいったい?」
「ええ、ちょっと人を探しているのと、小麦のことはちょっと気になっていて。
調べにきたのよ。でもあまり表立って動きたくないから正面から行くのはちょっとね」
うーん、と親方が顎に手を当てて考えて、
「わかりやした。ちょっとあてがありますんで、
明日、お屋敷に連れて行きます。小麦農家についてはそいつに案内させますよ」
親方は残ったビスコッティを包んで持たせてくれた。
まずは屋敷に向かおう。
屋敷に着いて、扉をノックした。
トーマスが出てこない。
扉に手をかけたら鍵がかかっていないようだ。
嫌な予感がする。
ヴェルが念話で『気をつけろ、何か怪しい』
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
硬いビスコッティをコーヒーにひたして食べるのって美味しいですよね。
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