第16話 テイラーとマルコ
「テイラー補佐官、あなた、生きてたのね!よかったわ。」
『馬鹿、行方不明という設定だったろう』
(ああ、しまった、そうだった)
「(もとい)、ルミナーラにいたのね!いったいどういうことなの?」
「テイラー?いえ、私はマルコといいますが。あなたさまは?」
「え、マルコさん...?テイラー補佐官ではなくて?」
エイミーもキースも目を見開いて驚いている。
それはそうだ、まったくの瓜二つなのだ。
「テイラー、俺のことは覚えているか?騎士団のキースだ。」
キースが肩を掴んで話しかける。
「どちらさま...でしょうか?騎士団?私が何かしたのでしょうか」
『ここはテイラーではない、ということで話を進めるのがよさそうだぞ』
(そうね)
「ごめんなさい。人違いだったみたい。
私たちは王都から来たのよ。
まずは怪我はない?立ち上がれるかしら」
「はい、大丈夫です。」
汚れた埃をパンパンと手ではらい、立ち上がる。
「何か揉めていたようだけど、大丈夫かしら?よかったら話を聞かせてくれないかしら?」
『そうやってすぐ首を突っ込む。でもお前は引きが強いな。
事件に知らずに突っ込んでいくタイプだな』
(そうよ、私は超絶運がいいのよ!)
『というか巻き込まれ系な気がするが』
「よかったら馬車でお家まで送るわよ。」
「いえ、そんな。みなさま、貴族の方ですよね?そんなご面倒をおかけするわけには...」
「じゃあ、この屋敷まで案内してもらえる?そのお礼としてお送りするわ。
さっきこの街に着いたばかりでよく道がわからないの。」
と門番が書いてくれた地図を見せる。
「ああ、このお屋敷ですか。カーサ・デッラ・ルーチェですね。
これなら勤めている店の近くです。私の家もそこからすぐなんで。ご案内できます。」
「よかったわ。じゃあ早速馬車に乗ってくださいな」
ガタゴトと石畳の上を馬車が進む。
「そこの大通りを右に。そのまましばらくまっすぐです」
「いやー、このワンちゃん、初めてみました。
かわいいですねぇ。なかなか見ない犬種ですよね。
この目の上の白い丸い眉毛がかわいいなぁ。ちょっとたぬきっぽいですよね」
「ヴェル、よかったわね、かわいいって!」
『ちっ、たぬきってどういうことだ。
かわいいと言われても嬉しくないぞ』
ふんっと鼻息で答える。
「そうそう、働いてる店はパン屋なんです」
ピクリ、とヴェルは顔を上げる。
『お前、いいやつかもしれん、マルコ。お前と俺は友達だ。』
めっちゃ尻尾ブンブンしてる。手のひら返しがすごい。
「ほら、見えてきました。あのお屋敷がカーサ・デッラ・ルーチェです。
その手前の角のパン屋がうちの店なんです。」
「あら、ロッシの窯!とても美味しいと評判と門番の人に聞いたわよ」
赤い看板に「ロッシの窯」と麦の絵が書いてある。
「ありがとうございます!親方のパンはそりゃぁ美味しいんですよ!
でも...この小麦の高騰で店が開けられないんです。値上げをしないって親方が。
なので店を開ければ赤字になってしまうんです。さっきも卸業者に頼みに行ったんですが、
値段は変えられないの一点張りで。」
「でも孤児院へ寄付しているパンも作るのが難しくなってきて、
今はオーツ麦で作ったパンを孤児院へ持って行った帰りだったんです。オーツ麦は価格は落ち着いてますから。さっきは卸売の担当に小麦を卸してもらえないか頼んでいたのです。やっぱり断られましたけどね。」
「よければちょっとお店に寄って親方に会ってもらえませんか?」
「ええ、少しこちらも聞きたいことがあるのよ。」
馬車を店の前で止めて、
「レオノーラ様、屋敷はすぐそこなんで私は馬車を置いてきます。
馬に水を飲ませなきゃなりませんので。そして屋敷内を確認しておきます」
「ありがとうトーマス。助かるわ。」
全員馬車を降りて、お店に向かう。
ヴェル、あなたもいくの?
『何か問題でも?マルコはオレの友達だからな。』
と私の影に入り込んだ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
テイラーと瓜二つのマルコ...
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