第15話 ルミナーラの街
2日目は街道の宿に泊まり、ようやく3日目にルミナーラへ到着した。
今回は野営も体験したし、これからの旅もどんとこいだ。
ルミナーラは「光の街」という意味で、
太陽が眩しく、少し乾燥した気候の街だ。
近隣では柑橘系の果物やオリーブなどが取れるらしい。
街の城壁が見えてきた。
馬車が城門へと入る。
ヴェルが念話で話しかけてきた。
『街についたら、まずは街1番のパン屋をみつけろ』
うわぁ、圧が強い...
キース以外には聞こえているらしい。
門番に、
「この街で一番人気のパン屋さんはどこかしら?」
と聞いてみた。
「そうですね。
貴族や裕福な方が行くのが『黄金の小麦』
庶民派で一番人気が『ロッシの窯』
ですかね。」
『よし、両方行くぞ』
ヴェルが張り切っている。
「ただ...
ロッシの窯はしばらく店を開けてないのです。
黄金の小麦はやってはいますが、
ものすごく値段が高いんです」
「どうしてなの?やはり小麦の高騰が原因?」
「ええ、黄金の小麦は材料を購入できるそうですが、
庶民向けのパン屋には手が出ない価格にまでなってしまって」
「じゃあ、街の皆さんはどうしてるの?」
「ロッソの窯は、値段を上げずに頑張ってたんですが、
そもそも小麦が手に入らなくなってしまったらしく...
みんな困っているんです。
保存食の乾燥パスタやそば粉でガレットにしたり、
皆、なんとかしのいでいます。」
「そうなのね、教えてくれてありがとう」
二つのお店の地図を書いてもらい、
滞在する屋敷の地図も書いてもらった。
確かに小麦の高騰は聞いていたけどここまでとは。
そして街そのものにも、
何か違和感を感じる。
カラッとした明るい雰囲気を期待していたのだが、
空気が重く、じめっとしている。
まだ明るい時間なのに陽が翳ったような暗さがある。
「これが光の街?」
「確かになんだか雰囲気がちょっと...暗い?」
「キースはこの街に来たことがあるのよね?」
「はい。レオノーラ様。以前来た時はもっとカラッとして陽気な雰囲気でしたが...
人通りももっと多かったですね。」
「そうなのね、季節的なものなのかしら。乾季と雨季とか。」
「とりあえず暗くなる前に屋敷に向かいましょう。
食材はアイテムボックスにあるので、今日はそれでなんとかしましょ。
料理人も屋敷にいるらしいので何か準備してくれていると思うわ。」
馬車からの景色は、陽が暮れかかっているのもあり、
もの悲しい雰囲気がした。
ヴェルはパン屋に行けなかったことに不貞腐れているのか、
丸くなって眠っている。
馬車で通りかかった街角で
大声で言い争う声がした。
「トーマス、馬車を止めて!」
馬車から出ようとした私をヴェルが止める。
『待て。今行くとお前の身分がバレても面倒だ。いざとなればキースに行かせろ。』
男たちは言い争っているようだ。
「お願いだ、小麦を卸してくれ。じゃないと店が開けられない。
親方のパンを待っている人たちがいるんだ!」
「だったらちゃんと金を払えばもちろん売ってやるぜ」
「こんな高い値段なんてあるかよ。
こんなんじゃみんな食べていけないだろう」
「俺が値段を決めてるわけじゃないんだよ。
文句があるならヴァレンティ紹介に言うんだな。」
追い縋る男をドンと突き飛ばし、
商人の男はその場を立ち去る。
地面に膝をついたまま、
一人の男が頭を抱えていた。
「あのー、大丈夫ですか?」
『レオノーラ、だからお前が行くなって言ってるだろ!
エイミーお前も来い!』
レオノーラはその男に近づいた。
頭を抱えていた手を離し、こちらを見る。
その顔を見て驚きに目を見開いた。
「テイラー?」
その男はテイラー補佐官と瓜二つだった。
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