第7話「合格発表」
ホールの照明が少し落とされた。
巨大スクリーンに校章が映し出される。
ざわついていた受験生たちも自然と静かになった。
透は無意識に拳を握る。
緊張していた。
実技試験は全力を出した。
だが、それで受かる保証はどこにもない。
「大丈夫だって」
隼人が気楽な口調で言う。
「根拠は?」
「勘」
「帰れ」
透は即答した。
すると隣で美月が小さく笑う。
どうやら聞こえていたらしい。
その時、スクリーンに文字が表示された。
【合格者一覧】
会場の空気が一変する。
次々と受験番号が映し出されていく。
透は慌てて自分の番号を探した。
上。
中央。
右。
そして――。
「あった」
思わず声が漏れる。
確かにあった。
神代透。
受験番号10287。
間違いない。
合格だ。
全身から力が抜ける。
気付けば大きく息を吐いていた。
「受かったか?」
隼人が聞く。
「ああ」
「俺も」
隼人は親指を立てた。
美月も頷いている。
「合格していました」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
その時だった。
「ん……?」
後ろから声が聞こえる。
振り返ると迅が目を擦っていた。
「発表終わった?」
「お前寝てたのかよ」
「寝てた」
「結果見ろ」
迅はスクリーンを見る。
数秒後。
「あった」
それだけだった。
喜びも驚きもない。
「もっと反応しろよ」
「受かると思ってたし」
隼人と同じタイプだった。
透は少しだけイラッとした。
そんなやり取りをしていると、スクリーンが切り替わる。
今度はクラス分けだった。
【Sクラス】
【Aクラス】
【Bクラス】
複数のクラス名が表示される。
「Sクラス?」
透が呟く。
「成績上位者だな」
隼人が答えた。
「毎年ある」
スクリーンに名前が表示されていく。
まず最初に出たのは。
【九条玲司】
会場が少しざわついた。
誰も異論はない。
圧倒的だった。
続いて。
【橘美月】
こちらも納得だった。
試験を見ていた受験生たちが頷いている。
さらに。
【黒瀬迅】
「おー」
迅が気の抜けた声を出す。
「やっぱりか」
隼人が言った。
そして。
【朝霧隼人】
「よし」
隼人が笑う。
透は目を丸くした。
「お前もSなのか」
「だから言っただろ」
余裕そうだった理由が分かった。
どうやら本当に強いらしい。
しかし。
どれだけ待っても透の名前は出ない。
少しだけ肩を落とす。
仕方ない。
玲司たちと比べれば自分は明らかに劣っていた。
やがてAクラスの発表が始まる。
そして。
【神代透】
「あ」
今度は見つけた。
Aクラス。
上から二番目。
十分すぎる結果だった。
「おめでとうございます」
美月が言う。
「ありがとう」
透は自然と笑っていた。
嬉しかった。
本当に。
妹に報告できる。
約束を守れた。
その時だった。
ホール正面の扉が開く。
一人の男が入ってくる。
背が高い。
黒髪。
三十代前半くらいだろうか。
教師にしては少し荒っぽい雰囲気があった。
男は壇上へ上がる。
そしてマイクを掴んだ。
「静かにしろ」
一言。
それだけで会場が静まり返った。
妙な威圧感があった。
「俺は桐生誠司」
男が言う。
「今日からお前らの担任になる」
受験生たちが顔を見合わせる。
担任。
つまり。
ここから本当に学校生活が始まるのだ。
桐生は会場を見渡した。
その目は鋭い。
まるで受験生全員を値踏みしているようだった。
「先に言っておく」
そして。
静かな声で続ける。
「ここは仲良しごっこをする場所じゃない」
空気が張り詰める。
「能力犯罪者と戦う人間を育てる場所だ」
透は自然と背筋を伸ばした。
桐生の言葉には重みがあった。
「落ちこぼれは置いていく」
誰も喋らない。
「死にたくなければ強くなれ」
それだけ言うと、桐生はマイクを置いた。
静寂が広がる。
そして透は思う。
合格した。
だが。
本当の戦いはここからなのかもしれないと。




