第6話「終わりだ」
入学試験が終わった。
受験生たちは結果発表を待つため、校内の大ホールへ集められている。
「緊張するな……」
透は椅子にもたれながら呟いた。
「今さら?」
隼人が笑う。
「いや緊張するだろ」
「俺は受かるから」
「自信満々だな」
「事実だし」
透は呆れた。
その隣では美月が静かに本を読んでいる。
迅は椅子に座ったまま寝ていた。
本当に自由な奴だ。
そして玲司は少し離れた場所で一人立っている。
誰とも話していない。
だが誰も近付かない。
独特の空気があった。
その時だった。
ホールの入口付近で騒ぎが起きる。
「離せ!」
怒鳴り声。
全員がそちらを向いた。
警備員に取り押さえられている受験生がいた。
「もう一回だ!」
「もう一回やらせろ!」
「落ちるわけねぇだろ!」
顔を真っ赤にして暴れている。
周囲がざわつく。
「毎年いるんだよな」
隼人が呟いた。
「こういう奴」
透は何も言えなかった。
気持ちは分かる。
ここへ来るまで努力したのだろう。
人生を懸けていたのかもしれない。
だが。
「落ち着いてください」
警備員が言う。
「結果はまだ――」
「うるせぇ!!」
その瞬間だった。
男の身体から魔力が溢れ出す。
空気が震える。
「危ない!」
誰かが叫んだ。
男の能力が発動する。
床が盛り上がる。
岩だ。
巨大な岩塊が形成される。
受験生たちが悲鳴を上げた。
「下がれ!」
警備員たちが動く。
だが間に合わない。
岩塊が飛んだ。
一直線に。
受験生たちへ向かって。
透は反射的に立ち上がる。
「っ!」
盾を出そうとした。
だが距離が遠い。
間に合わない。
次の瞬間だった。
バチッ。
青白い雷が走る。
轟音。
岩塊が空中で砕け散った。
全員が目を見開く。
玲司だった。
右手から雷が消えていく。
彼は何事もなかったかのように立っていた。
「……え」
透が呟く。
速すぎた。
見えなかった。
男も固まっている。
玲司は静かに男を見る。
「終わりだ」
それだけだった。
声を荒げることもない。
脅すこともない。
だが男は動けなくなった。
完全に心を折られていた。
その後すぐに警備員たちが男を連行していく。
ホールは静まり返っていた。
「すげぇ……」
透が思わず呟く。
隼人も苦笑する。
「だから言ったろ」
美月も本を閉じた。
迅だけは寝ている。
「こいつ起きろよ」
透がツッコむ。
「結果発表始まるぞ」
その時。
ホール正面の巨大スクリーンが点灯した。
試験官たちが並ぶ。
いよいよだった。
魔力特務育成校。
合格発表が始まる。




