第44話「勝利の一手」
互いに地面を蹴る。
一瞬で間合いが消えた。
ギィィン!!
魔力剣同士が激しくぶつかる。
火花が散る。
森本はそのまま力任せに押し込んだ。
「っ!」
透は受け流す。
真正面から競り合えば押し負ける。
それくらいは分かっていた。
だから受けない。
流す。
逸らす。
隙を探す。
「いい判断だ」
森本が笑う。
「でも、それだけじゃ勝てないぞ」
次の瞬間。
森本の左手が動く。
小型の盾。
それを利用して透の剣を弾き上げた。
「しまっ……!」
体勢が崩れる。
森本は迷わない。
一歩。
懐へ踏み込む。
魔力剣が一直線に迫る。
透は咄嗟に盾を展開した。
ガァン!!
重い衝撃。
足が地面を滑る。
観客席から歓声が上がった。
「押されてる!」
「森本優勢だ!」
透は歯を食いしばる。
強い。
一回戦の藤堂とは違う。
力だけじゃない。
技術もある。
焦れば負ける。
『周りを見ろ』
相沢の声が頭に浮かぶ。
『相手だけを見るな』
視線を広げる。
森本の剣。
左手の盾。
足運び。
呼吸。
全部を見る。
すると。
ほんの僅かだった。
森本は攻撃へ移る瞬間。
必ず左足へ重心を乗せる。
「見つけた」
透が小さく呟く。
「ん?」
森本が眉を動かした。
次の瞬間。
森本が再び踏み込む。
左足。
やっぱりだ。
透はあえて一歩下がる。
森本も前へ出る。
その瞬間。
透は盾を低く構えた。
ガンッ!!
森本の左足へ。
盾をぶつける。
「っ!」
重心が崩れた。
ほんの一瞬。
それだけで十分だった。
透はすぐに魔力剣を握り直す。
一歩。
二歩。
一気に懐へ飛び込む。
森本も剣を戻そうとする。
だが。
間に合わない。
「はぁぁぁっ!」
透の剣が森本の胸部防具へ叩き込まれた。
轟音。
森本の身体が大きく吹き飛ぶ。
そのまま競技場の外へ転がった。
場外。
静寂。
森本は起き上がろうとした。
しかし。
競技場へ戻ることはできない。
桐生が静かに右手を上げる。
「場外」
一拍置いて。
「勝者、神代透」
歓声が響いた。
「神代がまた勝った!」
「Aクラス相手に連勝か!」
「思ったより強いぞ!」
透は肩で息をしていた。
苦しかった。
ギリギリだった。
だが。
勝った。
それだけで十分だった。
競技場を降りる。
そこへ桐山が歩いてくる。
「やるじゃねぇか」
「危なかったけどな」
「それでいい」
桐山は笑った。
「勝つ奴ってのはな」
一拍置く。
「毎回圧勝する奴じゃねぇ」
透は顔を上げる。
「ギリギリでも最後に立ってる奴だ」
その言葉を聞いて。
透は少しだけ笑った。
「しゃーないか」
そう呟きながら。
再び大型モニターへ視線を向ける。
残る出場者は、さらに数を減らしていく。
ランキング戦。
ここから先は。
誰が相手でも、一瞬の油断が命取りだった。




